2016年12月23日金曜日

Anniversary「To Hurt A Friend」[Ken Gold Songbook]


The Sugarbeats解散後、どうなってどうなったか1971年に後のKen GoldことChristian Goldは“あの”Screen Gems-Columbia Musicと契約します。翌72年4月、英Parlophoneから謎のグループ?Anniversaryのシングル「Jo-Jo」c/w「To Hurt A Friend」がリリースされましたが、このAnniversary、どうもGoldのソロ・プロジェクトのようです。両面ともChristian Gold作、アレンジャーはDon Gouldとありますが、これは別にGoldの変名ではなく、元Applejacksのキーボードで、解散後アレンジャーに転じていたDon Gouldでありましょう。

なにしろ売れなかったようでプロモ盤しか見かけないのですが、これを見るとEMI/Parlophoneはあくまで配給で、Screen Gems-Columbia Music原盤であることが記されています。ドイツでもリリースされたようですが、こちらは後にDelegation(GoldのKego Production)が配給契約することになるAriolaからリリースされています。

そして何と、7月には日本でもリリースされていました。設立2年目にしておそらく経営が混乱していたキャニオン・レコードから、しっかり写真の入ったジャケット、八木誠さんのライナー付き、“Christian Gold & Anniversary / クリスチャン・ゴールド”名義でのリリースです。


このジャケットに犬とともに写った男性は、長髪ですが確かに『Denne And Gold』ジャケットのKen Goldと同一人物のように見え、

また日本語表記は完全にソロ名義ですので、やはり実態はGoldのソロと言っていいのでしょう。しかし特に本国から情報は無かったようで、八木誠さんのライナーは半分以上が一般論の前置きで(ご本人も「前置きが長くなってしまった」と書かれていますが)、「噂によるとこのレコードのプロデューサーはあのニュー・シーカーズを育てた人と同じらしい。その真意ははっきりしないのだけれども」なんてあやふやな話しかありません(New Seekers云々は単純に「Jo-Jo」の雰囲気が前年の彼等のDelaney & Bonnieのカバー・ヒットに似ている、というか元ネタなだけなんじゃないかという気が…日キャニオンが目をつけたのもそういう理由かもしれませんね)。


さてそんな「Jo-Jo」のB面に入ったのはサラッとした、同時期の男性シンガーソングライター風な香りもする小品「To Hurt A Friend」です。軽めですが切ないメロディが繰り広げられる、個人的にはA面よりお気に入りの一曲です。A・B面とも後のGoldからするとあまり想像がつかない路線ですが、ソウル路線に舵を切る前に、いろいろやっていたんですね。同年、ニュージーランドのシンガー、Nash ChaseもシングルのB面で取り上げています。

結局Anniversaryの2枚目は無かったようですが、この後、作家として、Sugarbeats元メンバー〜Tony Rivers周辺の仕事が増えていきます。




2016年11月30日水曜日

高樹澪「恋の女のストーリー」「MIO-SUN」[桑田佳祐 Songbook]

1981年、アミューズが映画制作部門アミューズ・シネマ・シティを設立します。小学生の頃から映画狂で、もともとは映画の世界に進もうとしていた大里洋吉さんですから、アミューズ設立後も、虎視眈々と映画界への参入を狙っていたかと思います。第一弾作品として制作・6月に公開されたのが「モーニング・ムーンは粗雑に」でした。桑田佳祐さんが音楽監督のみならず企画としてクレジット(ホントかどうかわかりませんが…そもそも制作前段階では主演という書き方をされた記事もありましたので、事務所の意向はそうだったのかもしれません)され、サザンの新曲が多く使われることになりました。配給はスーパーハリウッドという、大きく出た名の謎の組織ですが、これも大里さんが率いています。映画新規参入者という自身の立場を逆手に既存の配給ルートは使わず、既にアミューズで培ったコンサートのノウハウを流用し、全国の小ホール等で上映するという、ひと味違ったインディーな手法で展開されました。

映画の出来は現在気軽に見ることの出来るWeb上のレビューでも散々なものばかりなので多くは触れませんが、81年7月リリースの『ステレオ太陽族』収録のサザンの楽曲が映画用モノ・ミックスで、また未完成バージョン(「ステレオ太陽族」「栞のテーマ」)やリリースされていない楽曲(ディスコのシーンでのインスト、また「I'm just a cherry boy 夢見るだけの〜」から始まるハチロクの曲)も聴けるという点で美味しい映画と言えます。

映画の主演はアミューズでなく成プロ所属で「モーニング・ムーンは粗雑に」がデビュー作である高樹澪さんです。彼女が劇中で歌い、デビュー曲として8月にキャニオンからリリースされたシングルが「恋の女のストーリー」と「MIO-SUN」のカップリングでした(両A面、と言っていいのかどうかはっきりしませんが…)。両面ともに桑田さん作・八木正生さんの編曲です。


「恋の女のストーリー」は、高樹さんによると歌唱指導に現れた桑田さんが目の前で数分で書きあげた曲だったということで、桑田さん自身もメロディは15分ぐらいで書いたと語っています。Beatlesの某曲冒頭のコード進行をベースに、Billy Holidayっぽいものやりたいと思いながら書いたそうです。高樹さんのバージョンは、気だるくちょっと背伸びした感じの歌唱が味わい深いです。劇中の(マイム)演奏でHARABOSEの方々が登場してますが、レコードのバージョンもこれと同じベーシックトラックを使っているように聴こえますので、実際の演奏も同じ方々なのでしょうか?82年6月リリースのファースト・アルバム『NADA』に収録された「恋の女のストーリィー」はチト河内さん編曲の他の曲にあわせた、ジャズ歌謡風の完全別バージョンです。こちらも八木さんが編曲にクレジットされておりますが、むしろシングルはどこまで八木さんが関わっているのか不明ですね(劇中の演奏にアコギとサックス、ストリングスが加えられていますが…)。


さて、もう一方の「MIO-SUN」(何というヒネリの無さ)、どうも雰囲気的には70年代の女性SSW、というかCarole Kingあたりを意識したんでしょうか?爽やかで、少し切ないメロディを高樹さんの味のある歌唱と八木正生さんがクレジットされた編曲の演奏が彩ります。これもHARABOSEの皆さんのリズムでしょうか。斎藤誠さんかもしれないクリアトーンのギター、とても聴かせます。「恋の女のストーリー」も劇中では作曲者夫妻のハモりが聴こえていましたし、「MIO-SUN」でも、サビのオクターブ下の男声コーラスはやっぱり作曲者の方でしょうか。こちらは『NADA』の収録は漏れましたが、83年8月リリースの12インチ『TO SING AGAIN』に収録されました。



2016年10月25日火曜日

大滝詠一『GO! GO! NIAGARA』のバージョン違い


大滝詠一さんの『GO! GO! NIAGARA』リリースから40年となりましたので恒例の収録曲バージョン違いをまとめました。私はこのアルバムは96年の「'76 ORIGINAL MASTER」とシールが貼られ、ライナーに「76年発売時のオリジナル・マスターを(中略)丁寧にリマスタリングしたもので、100%オリジナルのままです」と書かれたCDで初めて聴いたのですが、その後LPを買って聴くと、全体に乾いた音で、特に「Cobra Twist」なんて冒頭のバランスから違うのに、「CDとLPで同じマスターでもここまで違うのか、うむうむ」などと思っていたものです。さらにその後、06年の30周年盤で「96年版に関しては、敢えて“リミックス”であることを公式には謳いませんでした」とネタ明かしをされたときは衝撃でしたね。その際にも大瀧さんは「(96年ミックスは)フェイドアウトが違うとか、ヒントはあった」とかおっしゃってましたが、30周年盤に入っている96年ミックスはフェイドアウトがオリジナル並みに長いものもありまして。ほんとうに、大瀧さんという方はつかみどころの無い方でした…。


●GO! GO! Niagaraのテーマ 〜 Dr. Kaplan's Office

◆Version A
GO! GO! NIAGARA 1976
GO! GO! NIAGARA 1981
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA VOX
GO! GO! NIAGARA 2006
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 2011

◆Version B … 歓声のSEが入らず、エコーが深い、(笛吹銅次のクレジットだが、30周年盤ライナーによると)吉田保の86年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1986
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 1986

◆Version C … Version Aと同じようにミックスした96年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1996
GO! GO! NIAGARA 2006


●趣味趣味音楽

◆Version A
GO! GO! NIAGARA 1976
GO! GO! NIAGARA 1981
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA VOX
GO! GO! NIAGARA 2006
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 2011

◆Version B … エコーが深い、(笛吹銅次のクレジットだが、30周年盤ライナーによると)吉田保の86年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1986
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 1986

◆Version C … Version Aと同じようにミックスした96年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1996
GO! GO! NIAGARA 2006

◆Version D … 77年6月20日渋谷公会堂でのライブ・テイク
DEBUT 1978
DEBUT in  NIAGARA BLACK VOX
DEBUT in  NIAGARA CD BOOK 2011


●あの娘に御用心

◆Version A
GO! GO! NIAGARA 1976
GO! GO! NIAGARA 1981
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA VOX
GO! GO! NIAGARA 30th Aniv.
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 2011

◆Version B … エコーが深く、最後までフェイドアウトしない、(笛吹銅次のクレジットだが、30周年盤ライナーによると)吉田保の86年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1986
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 1986

◆Version C … Version Aと同じようにミックスした96年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1996
GO! GO! NIAGARA 2006

◆Version D … 78年にリレコーディングされた「あの娘に御用心 '78」
DEBUT 1978
DEBUT in  NIAGARA CD BOOK 2011

◆Version E … Version Dと同じだが、かなり早くフェイドアウトする
GO! GO! NIAGARA 1996

◆Version F … 76年2月20日に『NIAGARA TRIANGLE VOL.1』プロモーション用に制作された映像用のスタジオ・ライブ
MORE MORE NIAGARA FALL STARS in NIAGARA VOX
NIAGARA FALL STARS '81 REMIX SPECIAL in NIAGARA CD BOOK II 2016

◆Version G … Version Fと同じテイクだが、エコーの少ないタイトな別ミックス
NIAGARA MOON 1995


●ジングル:ベースボール

◆Version A
GO! GO! NIAGARA 1976
GO! GO! NIAGARA 1981
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA VOX
GO! GO! NIAGARA 2006
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 2011

◆Version B … エコーが深く、フェイドアウトするまでが長い、(笛吹銅次のクレジットだが、30周年盤ライナーによると)吉田保の86年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1986
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 1986

◆Version C … Version Aと同じようにミックスした96年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1996
GO! GO! NIAGARA 2006


●こいの滝渡り

◆Version A
GO! GO! NIAGARA 1976
GO! GO! NIAGARA 1981
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA VOX
GO! GO! NIAGARA 2006
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 2011

◆Version B … エコーが深く、滝のSEから始まり、間奏でナイアガラ・ムーンが登場する、(笛吹銅次のクレジットだが、30周年盤ライナーによると)吉田保の86年ミックス、締めの一言は入っていない
GO! GO! NIAGARA 1986
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 1986

◆Version C … Version Aと同じようにミックスした96年ミックスだが、締めの一言の前にカットアウトする
GO! GO! NIAGARA 1996

◆Version D … Version Cと同じだが、Version A同様締めの一言まで入っている
GO! GO! NIAGARA 2006


●こんな時、あの娘がいてくれたらナァ

◆Version A
GO! GO! NIAGARA 1976
GO! GO! NIAGARA 1981
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA VOX
GO! GO! NIAGARA 2006
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 2011

◆Version B … エコーが深くヴォーカルが大きい、(笛吹銅次のクレジットだが、30周年盤ライナーによると)吉田保の86年ミックス、楽曲が終了して13秒後のつぶやきは無し
GO! GO! NIAGARA 1986
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 1986

◆Version C … Version Aと同じようにミックスした96年ミックス、楽曲が終了して13秒後のつぶやきは無し
GO! GO! NIAGARA 1996
GO! GO! NIAGARA 2006


●ジングル:月曜の夜の恋人に

◆Version A
GO! GO! NIAGARA 1976
GO! GO! NIAGARA 1981
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA VOX
GO! GO! NIAGARA 2006
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 2011

◆Version B … エコーが深く、DJが登場する前にカットアウトする、(笛吹銅次のクレジットだが、30周年盤ライナーによると)吉田保の86年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1986
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 1986

◆Version C … Version Aと同じようにミックスした96年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1996
GO! GO! NIAGARA 2006


●針切り男

◆Version A
GO! GO! NIAGARA 1976
GO! GO! NIAGARA 1981
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA VOX
GO! GO! NIAGARA 2006
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 2011

◆Version B … エコーが深く、ヴォーカルが大きめで、フェイドアウトまでがかなり長い、(笛吹銅次のクレジットだが、30周年盤ライナーによると)吉田保の86年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1986
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 1986

◆Version C … Version Aと同じように(若干派手?)ミックスしているが、フェイドアウトがVersion Aより早い96年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1996
GO! GO! NIAGARA 2006


●ニコニコ笑って

◆Version A
GO! GO! NIAGARA 1976
GO! GO! NIAGARA 1981
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA VOX
GO! GO! NIAGARA 2006
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 2011
BEST ALWAYS

◆Version B … エコーが深い、(笛吹銅次のクレジットだが、30周年盤ライナーによると)吉田保の86年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1986
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 1986

◆Version C … Version Aと同じようにミックスした96年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1996
GO! GO! NIAGARA 2006

◆Version D … 新たにヴァースが加えられた、77年6月20日渋谷公会堂でのライブ・テイク
DEBUT 1978
DEBUT in  NIAGARA BLACK VOX
DEBUT in  NIAGARA CD BOOK 2011

◆Version E … Version Dと同じだが、最後の観客の一声がカットされている
GO! GO! NIAGARA 1996


●ジングル:ナイアガラ・マーチ

◆Version A
GO! GO! NIAGARA 1976
GO! GO! NIAGARA 1981
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA VOX
GO! GO! NIAGARA 2006
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 2011

◆Version B … 楽器が全てオミットされアカペラで、エコーが深く、ロックンロール・マーチのコーラスが入った、(笛吹銅次のクレジットだが、30周年盤ライナーによると)吉田保の86年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1986
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 1986

◆Version C … Version Aと同じようにミックスした96年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1996
GO! GO! NIAGARA 2006


●Cobra Twist

◆Version A
GO! GO! NIAGARA 1976
GO! GO! NIAGARA 1981
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA VOX
GO! GO! NIAGARA 2006
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 2011

◆Version B … ドラム、ベース、シンセを追加ダビングした(←「大滝詠一レコーディング・ダイアリーVol.1」によると、ダビングしたにもかかわらずこのミックスでは使われていませんでした…)シングル用のモノ・ミックス
青空のように(Single)
青空のように in NIAGARA 45RPM VOX
NIAGARA 45RPM VOX CD Edition in NIAGARA 45RPM VOX

◆Version C … Version B作成時点でダビングしていたパートを含め作られた81年のステレオ・ミックスで、終盤にはシンセのコブラ笛も登場し、フェイドアウトせず完奏する
MORE MORE NIAGARA FALL STARS in NIAGARA VOX
NIAGARA FALL STARS '81 REMIX SPECIAL in NIAGARA CD BOOK II 2016

◆Version D … Version Cの編成で、エコーが深い、(笛吹銅次のクレジットだが、30周年盤ライナーによると)吉田保の86年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1986
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 1986

◆Version E … Version Aの編成で、Version Aと同じように(若干派手?)ミックスした96年ミックスだが、フェイドアウトが早い
GO! GO! NIAGARA 1996

◆Version F … Version Cと同じだが、完奏せずフェイドアウトする。フェイドアウトの後、つぶやきあり
GO! GO! NIAGARA 1996

◆Version G … Version Eと同じだが、フェイドアウトのタイミングはVersion Aと同じ
GO! GO! NIAGARA  2006


●今宵こそ

◆Version A
GO! GO! NIAGARA 1976
GO! GO! NIAGARA 1981
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA VOX
GO! GO! NIAGARA 2006
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 2011

◆Version B … エコーが深く、ヴォーカルが大きめで、大幅にコーラスがカットされた、(笛吹銅次のクレジットだが、30周年盤ライナーによると)吉田保の86年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1986
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 1986

◆Version C … Version Aと同じようにミックスした96年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1996
GO! GO! NIAGARA 2006


●再びGO! GO! Niagaraのテーマ

◆Version A
GO! GO! NIAGARA 1976
GO! GO! NIAGARA 1981
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA VOX
GO! GO! NIAGARA 2006
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 2011

◆Version B … エコーが深く、Version Aよりフェイドアウトが早い、(笛吹銅次のクレジットだが、30周年盤ライナーによると)吉田保の86年ミックス。楽曲が終了して13秒後につぶやきあり
GO! GO! NIAGARA 1986
GO! GO! NIAGARA in NIAGARA CD BOOK 1986

◆Version C … Version Aと同じようにミックスしているが、フェイドアウトがかなり早い96年ミックス
GO! GO! NIAGARA 1996
GO! GO! NIAGARA 2006

2016年9月29日木曜日

The Sugarbeats「Sunny Day Girl」[Ken Gold Songbook]

唐突に話が60年代まで遡って申し訳ありませんが、「You Are The Song」以前のKen Goldの作品のいくつかがなんとなくわかってきましたので、不確定なところもありますがせっかくなのでそのまま綴っていくことにします。



60年代半ば、イギリスでSugarba、いえSugarbeatsというバンドが2枚のシングルをPolydorに残しています。Sugarbeatsとは"Music sweet with a beat"なサウンド・コンセプトを表しているそうで、なかなか素敵なコンセプトですね。このバンドのメンバーは、Martin Shaer、John Perry、Geoff Swettenham、Pete Swettenham、そしておそらく、後のKen GoldことChristian Goldが在籍していたようです。

2枚のシングルですが、66年5月に「I Just Stand Here」c/w「The Ballad Of Ole Betsy」、同年10月に「Alice Designs」c/w「Sunny Day Girl」とリリースされました。いずれもプロデュースはRichard Hill、アレンジはJack Dorsey(2枚目はRichard Hillと連名)によるものです。

「I Just Stand Here」は1964年にアメリカの作家コンビStephen SchlaksとCharlie Weissによって書かれ、Robert Loye Jr.(Bob Loye)に歌われたホワイト・ドゥーワップものを、ビート・グループらしい演奏とファルセットが印象的な厚いコーラスで聴かせます。そしてB面、「The Ballad Of Ole Betsy」はおなじみBeach Boys 63年の『Little Deuce Coupe』収録のBrian Wilson & Roger Christian作の名三連バラードですが、特にヒネることなく、オリジナルに忠実なカバーです。

「Alice Designs」はTandyn Almer作で、“LSD Signs”とのダブル・ミーニングなタイトルからいかにもなサイケ・ポップで、1枚目と比べるとちょっと印象が変わります。
しかしB面「Sunny Day Girl」、これは1枚目、特にB面の路線をさらに強化させた1曲です。この曲の作者クレジットがGold-Swettenhamでして、唯一のメンバー作によるオリジナル?で、たぶん、このGoldがChristian Goldであると思われます。この曲、見事なまでの“1965年のBeach Boys”イミテーションになっています。とにかく、聴いていただければわかりますが、これは笑います。イギリスでのBeach Boysはシングルこそアメリカの数ヶ月遅れでリリースされていましたが、アルバムになるとシングルが大ヒットしない限りリリースが見送られていたようで(そして出たアルバムもほとんどチャート・インしなかったようで)、『Pet Sounds』まではてんでバラバラにリリースされていたようです。その結果、66年は前半だけで『Party』『Today』『Summer Days』『Pet Sounds』と駆け込みで怒濤のリリースでしたから、SugarbeatsのメンバーもBeach Boys熱に浮かされているのが推測されます。この頃から、憑依芸といいますか、Goldの、敬愛する先達への高レベルな愛情表現の萌芽が見て取れます(しかし、原点がBeach Boysとは…)。

Sugarbeatsは2枚のシングルリリース後、ハイレベルなBeach Boysへの愛(再現性?)を買われてか、67年にTony Rivers & The CastawaysにMartin Shaer、John Perry、Geoff Swettenham、Pete Swettenhamnの4人が引き抜かれ、解散となります。同年、PerryとSwettenham兄弟は速攻でグループを抜け、George AlexanderとGrapefruitを結成することになります。

さて、残されたGold以外にSugarbeatsにメンバーがいたのかどうか不明ですが、Goldはこの後71年にScreen Gems-Columbia Musicと作家契約をします。それまでの間の動きはわかりませんでした。とはいえ、こういった経緯があったというのを踏まえると、70年代初頭〜半ばまではTony Riversや元バンドメンバー絡みの仕事が多かった、というのも何となく繋がりますね。

2016年8月11日木曜日

タモリ「狂い咲きフライデイ・ナイト」「スタンダード・ウイスキー・ボンボン」[桑田佳祐 Songbook]

タモリさんのCBSソニー移籍第一弾であるサード・アルバム、録音順では4作目となる『ラジカル・ヒステリー・ツアー』(81年5月リリース)には、桑田さん書き下ろしの2曲が収録されています。

70年代後半、タモリさんは密室芸人としてその名を轟かせカルトな人気を獲得していました。サザンのデビュー後にも「ザ・ベストテン」で中州産業大学芸術学部音楽理論のタモリ教授として講義、桑田さんを押しのけてサザンの演奏をバックに「勝手にシンドバッド」をオリジナルの歌詞でブルマ姿で絶唱、といった共演もありました。

その批評性とエンターテインメント性の高さで伝説となっている『タモリ』『タモリ2』、そしてレコード会社やその他の圧力で一定数しかリリースされなかった『タモリ3 戦後日本歌謡史』をアルファレコードに残したタモリさんですが、CBSソニー移籍後の本作は、基本的に普通の歌もの作品です(それぞれ曲間にはタモリさんの一人複数役のコントが入っていますが…)。タイミング的には前年秋から主婦向けのラジオ番組や日曜お昼の番組を開始する等、タモリさんが徐々にカルトな密室芸人から路線を変更し始めた頃で、レコードの路線もそういった流れの影響があるのかもしれません。そんな中での桑田さんへのオーダーだったと思われます。

モダンジャズのイメージがあるタモリさんですが、本作の演奏は70年代からのトレンドであるフュージョン風味でそれもそのはず、ザ・プレイヤーズかザ・スクェアが作曲家ごとにそれぞれ演奏を受け持っています。桑田さん提供の2曲はいずれも鈴木宏昌さんの編曲で、プレイヤーズ(鈴木さん・松木恒秀さん・岡沢章さん・渡嘉敷裕一さん)が担当しています。プレイヤーズの中心、鈴木さんはアルファ時代のタモリさん作品のサウンド方面の要で、今回も引き続きタモリさんをサウンド面で支えています。ちょうど本作リリース直前に始まった日本テレビ「今夜は最高!」でもプレイヤーズは演奏で出演していました。次作『HOW ABOUT THIS』(これはビクターのインビテーションから出ていますね)でも引き続き鈴木さんと松木さんがタモリさんを支えています。

「狂い咲きフライデイ・ナイト」はほぼ同時期の「I LOVE YOUはひとりごと」に続く桑田さん印のジャズ歌謡です。アルバム中いかにもなジャズ歌謡風の楽曲はこれだけなので、若干浮いてますが、プレイヤーズに数原晋さんのトランペットを加えたタイトな演奏が素晴らしいです。タイトであるが故に桑田さん関連曲らしからぬ雰囲気ですが、やはりメロディやタモリさんの歌唱は桑田さんらしさが出ているかと思います。

「スタンダード・ウイスキー・ボンボン」は一転してアーバンでライトメロウなボサノヴァ風の一曲で、プレイヤーズの演奏がとても良く合っています。特に間奏、松木さんのギターや鈴木さんのエレピ、薄く入ったソリーナがたまりません。コーラスはクレープとクレジットがありますが、詳細不明です。

桑田さん提供の2曲は、アルバムリリースの翌月、タモリさんのファースト・シングルとしてカットされています。

2016年7月18日月曜日

Randy Crawford「Wrap-U-Up」 Smokey Robinson「(It's The) Same Old Love」 Teddy Pendergrass「It's Over」 Carl Anderson「The Closest Thing To Heaven」[Ken Gold Songbook]

80年代半ば以降、徐々に世に出す作品が少なくなっていったKen Goldですが、80年代末〜90年代冒頭にかけ、大物シンガーにバラードものを次から次へと提供しています。


まずはRandy Crawford、1989年のアルバム『Rich And Poor』に収録されました「Wrap-U-Up」です。Goldとイギリスのシンガー・ソングライターMaggie Ryderとの共作で、プロデュース&アレンジはRobin Millar。89年の映画主題歌となったBob DylanのカバーかつEric Clapton・David Sanbornとの共演である「Knocking On Heaven's Door」に続く、アルバムからのセカンド・シングルとしてリリースされ、全米R&B15位を記録しました。必要以上に仰々しくならないメロディのセンスはさすがといったところです。


Smokey Robinsonの、長年在籍したモータウンでのラスト・アルバム、90年作『Love, Smokey』に収録されている「(It's The) Same Old Love」。こちらはGoldとBrenda Madisonとの共作で、プロデュース&アレンジはKeith AndesとLarry Hatcher。こちらもアルバムからのセカンド・シングルとしてリリースされ、全米R&B68位・全米アダルトコンテンポラリー32位を記録しました。若干80年代後半を引きずったような雰囲気ではありますが、そういう意味でも個人的にはこの4曲の中で一番好みかもしれません。


Teddy Pendergrassの90年作『Truly Blessed』収録の「It's Over」はGoldとアメリカの作曲家Sue Shifrinとの共作で、アレンジはハワイ出身のDerek Nakamotoが担当、プロデュースはDerek NakamotoとエンジニアのCrag Burbidgeがクレジットされています。この4曲の中では珍しい、マイナー・メロディの渋めな1曲に仕上がっています。


少し間が空きますがCarl Andersonの92年作、『Fantasy Hotel』収録の「The Closest Thing To Heaven」はGoldとイギリスのシンガー・ソングライターAndy Caineの共作で、プロデュース&アレンジは元RufusのドラマーAndre Fischer。バラード4連発の締めにふさわしい、壮大な楽曲でアルバムの中でもハイライトと言えるでしょう。

これら4曲、どれもアダルトでコンテンポラリーなバラードに仕上がっていまして、曲の良さと歌の巧さの組み合わせが絶妙です。このような断続的な楽曲提供の時期を経て、翌93年、Goldは久々にアルバム1枚全編の制作に関わることになります。

2016年6月5日日曜日

ベティ「I Love Youはひとりごと」[桑田佳祐 Songbook]

桑田さんの新曲A面、たまたま聴きましたが、久々、20年近くぶりに、ニヤッとしてしまいました…。

さて、原由子さんのソロ・デビュー・シングルにして放送禁止指定を受けたということで有名な「I Love Youはひとりごと」ですが、これは原さんのソロ用に用意されていたのか、当時アミューズに所属していたタレントのベティさんに書き下ろされた作品なのかはっきりしませんので、このシリーズでも取り上げることにします。

南雲海人さんのブログによると、80年頃、大阪のオカマバーで働いていたベティさんは南雲さんを介し当時のアミューズ大里社長と知り合い、アミューズに所属することになったようです。ベティさんの著書によれば、原さん用に用意されていた「I Love Youはひとりごと」にオカマトークを入れるにあたり、大里社長がスカウトした、という流れになっています。しかし、結局原さんのバージョン、ベティさんのバージョン共に、オカマ役は作者がハーモナイザーをかけて担当しています。
(ちなみに、このアミューズ所属時にベティさんに用意された肩書きが「ニューハーフ」で、ベティさんと桑田さんの会話をベースに桑田さんが造った言葉、ということになりました。後年、桑田さんがラジオで自ら造ったことを否(略)
「ニューハーフ」は数ヶ月後には松原留美子さん等も使うようになり、早々にアミューズの枠を離れ、一般名詞となったのはご存知の通りです)

桑田さんはこの曲でジャズ風味の歌謡曲に挑戦しています。そもそも60年代ナベプロ系歌謡をラテン風ディスコ・ビートで、というのがサザンのデビュー曲のコンセプトでしたが(そういう意味で大里さんとの出会いはまさに運命ですね)、『タイニイ・バブルス』収録の「私はピアノ」でまたまた60年代前半のナベプロ歌謡の世界に挑戦、これが高田みづえさんのカバーでヒットします。そんな流れで、当時のサザンでは敢えて積極的に手を出さない、いわゆる歌謡曲路線制作の機会・また“日本のThelonious Monk”こと八木正生さんとのコラボの機会という点で、この楽曲提供は絶好のタイミングだったのかもしれません(81年、桑田さんは原由子さんのソロ作やサザンの『ステレオ太陽族』と、ことレコーディングに関しては八木正生さんとのコラボばかりになります)。ベティさんバージョンは梅田(堂山町?)が舞台の男と「女」の妖艶な世界が描かれており、男色のジャズ風エロ歌謡という、あまり類の無いパターンの楽曲に仕上がりました。


81年4月21日、ベティさんバージョンはCBSソニー、原さんバージョンはインビテーション(ビクター)からそれぞれリリースされました。原さんバージョンはHARABOSEによるリズム・アレンジで、管弦のみ八木正生さんのスコアです。女性バージョンなので舞台は渋谷(円山町?)になっていますが、前述の通りオカマトークはしっかり入っています。原さんバージョンだけ聴いてると、このトークの意味が全く分かりませんよね(原さん用に書かれた曲だとすると、なぜオカマトークを入れることになったのか経緯がわからないのですが…)。

リリース後は民放連による要注意歌謡曲Aランク指定、いわゆる放送禁止指定を受けたわけですが、なにぶん理由が一切明らかにされないものなので、はっきりした原因はよくわかりません。ベティさんの方が先に引っかかって原さんの方も一緒に指定されたという説もありますが、男色の過激な歌詞というのがまずかったのでしょうか?これを受けてアミューズでは、ジューシィ・フルーツ「これがそうなのね仔猫ちゃん」のリリース・プロモーションをかねて5月10日、原宿で抗議ゲリラライブを開催します。サザン・ベティ・ジューシィや近田春夫さんらが勢ぞろいし、男性は全員女装でライブを行ないました。

なお、ベティさんのシングルのB面はカラオケが収録されており、演奏はA面と同じですが薄くガイドメロのブラスが入っており、これはこれで味わい深いトラックです。

2016年6月4日土曜日

Katie Kissoon「I Need A Man In My Life」[Ken Gold Songbook]


Katie Kissoonはトリニダード出身、60年代にイギリスで、当初はPeanutの名前でレコード・デビューしており(Beach Boys「I'm Waiting For The Day」のカバーなどありました)、70年代になると同じく活動していた兄のMacとKissoon兄妹のデュオとして活動していました。イギリス初めヨーロッパのチャートにいくつかのヒットを送り込みますが、80年代になるとそれぞれまたソロ活動に戻り、Katieは裏方として、コーラスの仕事を増やしていく一方、いくつかシングルをリリースしていました。83年からJIVEと契約し、84年にリリースされたシングル「I Need A Man In Life」がGold-Denne作品で、プロデュースはKen GoldとPete Q. Harrisがクレジットされています。

前年の「You're The One」などは黒っぽいエレクトロ・ファンクといった感じでしたが、「I Need A Man In Life」はKatieとしても、そしてGold作品にしても珍しい、明るく楽しいアッパーなハイエナジー路線の楽曲です。Goldらしいベタでポップなメロディにいかにもハイエナジーらしい打ち込みシンセサウンドで、Goldとしても新たな挑戦の一曲だったのかもしれません(結局この一曲しかこの路線は無かったようですが…)。Pete Q. Harrisは同時期に同じJIVEからリリースされているBilly Oceanの大ヒット・アルバム『Suddenly』にフェアライトのプログラマーとして参加しており(Katieもコーラスで参加しています)、この楽曲でも打ち込みを担当しているのでしょう。B面はAcappella Mix、また12インチではExtended Club MixやDub Mix等別ミックスが収録されました。


そしてこの曲がGold-Denneコンビとしては最後の作品のようです。約10年作曲活動を共同で続けていた二人がコンビ解消した理由は全く分かりませんが、コンビ解消後も、Goldはペースは落ちるものの引き続き作曲家・プロデューサーとしての活動を続けていきます。1985年にJIVEからリリースされたイギリスのキッズ・ソウルもの、Warren Mills『Warren Mills』収録の「Flame In The Fire」はBilly OceanとGold、さらにPete Q. Harrisのトリオ作・プロデュースで、「It's Particular」はOcean-Gold作、Ocean-Harrisプロデュースのクレジットがあります。前者は同時代的なシンセ・ファンク、後者はオールディーな60年代シャッフルものをシンセ・サウンドで彩った、いずれも当時のBilly Oceanの色が強めな雰囲気でしょうか。

そしてこれ以降80年代後半、Goldの作曲家としての活動は把握できておらず新曲も私の知る限りあまり見当たらなくなるのですが、89年からの数年、突如大物たちへの楽曲提供が続きます。


2016年5月7日土曜日

中村雅俊「マーマレードの朝(from Five Rock Show)」[桑田佳祐 Songbook]

1980年10月公開の角川映画「野獣死すべし」の併映作品「ニッポン警視庁の恥といわれた二人組 刑事珍道中」は中村雅俊さん・勝野洋さん主演のコメディ作品でした。

この作品の主題歌となったのが中村雅俊さん自らが歌う「マーマレードの朝」で、作詞作曲が桑田さんによるものでした。どういう流れで桑田さんのところにこの依頼があったのかはっきりはわかりません(とは言うものの、「刑事珍道中」の映画音楽は近田春夫さんが担当で、それは当時近田さんがアミューズ内に自身の事務所を設立し、さらには中村さんと同じコロムビアに移籍したばかりというのもあり、その辺の絡みもあるのかもしれません)。映画公開に先駆け80年9月にBlow Up(日本コロムビア)からシングル・リリースされています。


サブタイトルに「from Five Rock Show」とある通り、同年7月リリースのサザンのシングル「わすれじのレイド・バック」のB面に収録されていた「Five Rock Show」の一部を発展させ一曲に仕上げています。そもそも80年2月以降シングルを毎月1枚、合計5枚リリースするというサザンの企画タイトルが「Five Rock Show」で、最後5枚目のB面に同タイトルで複数の細かい楽曲のメドレー(これはたぶんBeatlesやソロ/WingsになってからのPaul McCartneyあたりがヒントなんだと思いますが)を男性陣で歌い繋いでいくという、遊び心に満ちた一曲でした。この曲の冒頭と、ラスト手前の計2回登場する英詞のヴァースを元に拡張させたのが「マーマレードの朝」でした。サザン版での歌詞(英詞)も基本的にそのまま使われていますが、文法的に・内容的にアレなところが微妙に変わっています。

編曲はこれまた「新田一郎(スペクトラム)」さんでして(ということは演奏も?)、コーダのトランペットとか、どことなく既聴感がありますね。他にも当時の桑田さんの要素がいろんなところで聴こえますが、なにぶんこの頃のサザンといえば趣味趣味音楽全開の頃で、ヒットには至らなかったようです。

2016年4月29日金曜日

Delegation「It's Your Turn」[Ken Gold Songbook]

『Deuces High』のチャート成績も芳しくなく、Arioraとの契約も終了したDelegationは新メンバーに最初で最後の女性メンバーであるKathy Bryantを迎え、3人組となります。


82年初頭の『Deuces High』以降、しばらくレコードのリリースもありませんでしたが、3人が83年の10月に英CBSから単発でリリースしたシングルが「It's Your Turn」c/w「Can We Get It Back」でした。両面Gold-Denneコンビ作、Ken Goldプロデュースといういつもの布陣で制作されており、A面は『Deuces High』の延長で、シンベとRobert Ahwaiと思しきカッティングが炸裂するアーバン・メロウ・ファンク路線です。7インチだけでなく12インチも作られており、12インチ収録のExtended Versionは別ミックスの長尺版が収録されています。ここでは7インチ・ミックスには入っていないギター・ソロを聴くことが出来ます。B面はKathy Bryantがリードを取ったDelegationでは珍しい、オールド・スタイルでアッパーな1曲ですが、これは最初からリードをBryantに取らせることを想定して書かれたのでしょう。

さて、この1枚のみでBryantはDelegationを脱退し、またまたRicky BaileyとRay Pattersonのコンビに戻るのですが、さらにDelegationに転機が訪れます。事情はわかりませんが、専属プロデューサー兼作家のKen Goldとも離れてしまうのでした。これ以降、活動拠点を評価の高かったドイツに移したようで、85年にドイツのHigh FasionというレーベルからHans HahnプロデュースでBailey-Patterson作の「Thanks To You」をリリース。しかし、その後Pattersonもグループを離れ、遂にDelegationはBaileyのソロ・プロジェクトとなってしまいます。1人になったDelegationは87年に独ZYXからGold-Denneコンビの往年の名作「Where's The Love (We Used To Know)」をHans Hahnプロデュースでリメイク。89年には『The Promise Of Love』『Eau de Vie』からの選曲に87年の「Where's The Love」、また「Thanks To You」の88年ミックスを加えたベスト盤『The Best Of Delegation』が独ZYXからリリースされ、新録のメドレー「The Mix」もDelegation featuring Ricky Bailey名義でシングル・リリースされました。このメドレーも往年のGold-Denne作品ばかりで構成されており、今ひとつ過去作品から新たな一歩が踏み出せないような活動状況でした。

Ken GoldがDelegationと再びタッグを組むのは、もう少し先の、90年代半ばのことでした。




2016年3月17日木曜日

山下達郎・伊藤銀次・大滝詠一『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』のバージョン違い


大滝詠一さんの32年ぶりのニュー・アルバム(???)、『DEBUT AGAIN』がリリースされます(しかし相変わらず細かいクレジットがありませんね…記録魔っぽいイメージのある大瀧さんですが全然残してないんでしょうか…)が、それはそれとして、発売から40年が経とうとしている『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』収録曲のバージョン違いでもまとめてみたいと思います。40周年盤は去年の分で打ち止めなんでしょうか?と思って去年の『SONGS』『MOON』をよく見たら“ナイアガラ・レーベル設立40周年”を記念していたんですね…。


●ドリーミング・デイ

◆Version A
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1981
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA VOX
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1995
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 2006
TATSURO FROM NIAGARA 2009
NIAGARA TRIANGLE Vol.1  in NIAGARA CD BOOK I 2011 

◆Version B … シングル用モノ・ミックス
幸せにさよなら/ドリーミング・デイ(Single)

◆Version C … 吉田保による、ヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1986
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA CD BOOK I 1986

◆Version D … Version Cの冒頭ギターをカットしたバージョン
NIAGARA FALL STARS 2nd Issue 1986
NIAGARA FALL STARS 2nd Issue in NIAGARA CD BOOK I 1986

◆Version E … Version Bと同じミックスと思われるが、フェイドアウトのタイミングがVersion Bよりかなり遅い
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1995
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 2006
TATSURO FROM NIAGARA 2009
幸せにさよなら/ドリーミング・デイ(Single) in NIAGARA 45RPM VOX
NIAGARA 45RPM VOX CD Edition in NIAGARA 45RPM VOX


●パレード

◆Version A
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1981
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA VOX
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1995
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 2006
NIAGARA TRIANGLE Vol.1  in NIAGARA CD BOOK I 2011 

◆Version B … エコーが深めで終盤の“お祭りSE”に入る前にフェイドアウトする、1982年シングル用バージョン(Version Aの2ミックス・マスターにエコーをかけている?)
Down Town(Single 1982)

◆Version C … 吉田保による、ヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1986
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA CD BOOK I 1986

◆Version D … “'82リミックス・ヴァージョン”、エンジニア・笛吹銅次のクレジットがあるものの、実際はVersion Cの冒頭ピアノと終盤“お祭りSE”をカットしたバージョン
パレード(Single)
ポンキッキーズ・メロディ

◆Version E … 笛吹銅次により新たに作られた、冒頭ピアノと終盤“お祭りSE”が入っていない95年ミックス
TREASURES
TATSURO FROM NIAGARA 2009
OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜

◆Version F … 1974年4月ニッポン放送第一スタジオで録られた通称“LFデモ”、簡素なモノ・ミックス
NIAGARA FALL STARS 1981

◆Version G … LFデモ、86年のステレオ・ミックス
DAWN IN NIAGARA in NIAGARA CD BOOK I 1986

◆Version H … 94年版SONGS収録のLFデモ、エコーがかなり強い
SONGS 1994

◆Version I … 05年版SONGS収録のLFデモ、エコーが一番少ない
SONGS 2005

◆Track … 02年山下達郎『RARITIES』初回限定盤のボーナス・ディスク用に用意されたカラオケ
ORIGINAL KARAOKE COLLECTION in RARITIES


●遅すぎた別れ

◆Version A
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1981
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA VOX
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1995
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 2006
TATSURO FROM NIAGARA 2009
NIAGARA TRIANGLE Vol.1  in NIAGARA CD BOOK I 2011 

◆Version B  … 吉田保による、ヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1986
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA CD BOOK I 1986


●日射病

◆Version A
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1976
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1981
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA VOX
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1995
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 2006
NIAGARA TRIANGLE Vol.1  in NIAGARA CD BOOK I 2011 

◆Version B  … おそらくVersion Aの2ミックス・マスターにエコーをかけたバージョン
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1986
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA CD BOOK I 1986


●ココナツ・ホリデイ'76

◆Version A
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1976
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1981
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA VOX
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 2006
NIAGARA TRIANGLE Vol.1  in NIAGARA CD BOOK I 2011 

◆Version B  … おそらくVersion Aの2ミックス・マスターにエコーをかけ、冒頭SEをカットし、フェイドアウトを早めたバージョン
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1986
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA CD BOOK I 1986

◆Version C … Version Aと同じミックスだが、フェイドアウトがVersion Bよりも早い
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1995

◆Version D … ダビング風景を収めた“ココナツ・ホリデイ3日目”
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 2006


●幸せにさよなら

◆Version A
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1976
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1981
NIAGARA FALL STARS 1981
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA VOX
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1995
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 2006
NIAGARA TRIANGLE Vol.1  in NIAGARA CD BOOK I 2011
GOLDEN☆BEST 伊藤銀次 〜40th Anniversary Edition〜
NIAGARA FALL STARS '81 REMIX SPECIAL in NIAGARA CD BOOK II 

◆Version B … ドラムとベースを全面的に差し替え、山下達郎・伊藤銀次・大滝詠一の3名がヴォーカルを取ったシングル用モノ・ミックス
幸せにさよなら/ドリーミング・デイ(Single)

◆Version C … Version Bと同じミックスと思われるが、フェイドアウトのタイミングがVersion Bよりかなり遅い
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1995
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 2006
幸せにさよなら/ドリーミング・デイ(Single) in NIAGARA 45RPM VOX
NIAGARA 45RPM VOX CD Edition in NIAGARA 45RPM VOX

◆Version D … おそらくVersion Aの2ミックス・マスターにエコーをかけたバージョン
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1986
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA CD BOOK I 1986

◆Version E … Version Bのドラムとベースを使用(以降全て同様)、一部未発表のギターフレーズも追加され、間奏のハーモニカ・ソロも途中からVersion A〜Dとテイクが違う、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
NIAGARA FALL STARS 2nd Issue 1986
NIAGARA FALL STARS 2nd Issue in NIAGARA CD BOOK I 1986
"CHANGES" - History Of GINJI -

◆Version F … ”山下ヴォーカル・バージョン”、山下達郎(録音が存在しないパートは伊藤銀次)のヴォーカルのみで構成され、ハーモニカもイントロと間奏(Version Eと同じ)のみ登場、終盤で未発表のギターが登場するステレオ・ミックス
TATSURO FROM NIAGARA 2009

◆Version G … 大滝詠一→山下達郎→伊藤銀次の順で歌い回され、間奏のハーモニカ・ソロがVersion A→Version E→Version Aのものに編集されており、終盤でVersion Fと同じギターが登場するステレオ・ミックス
BEST ALWAYS

◆Track … 基本的にはVersion Gと同じように作っているが、イントロ前に一声入り、間奏のハーモニカはVersion Eと同じで、フェイドアウトもVersion Gより20秒近く長いカラオケ
BEST ALWAYS TRACKS


●新無頼横町

◆Version A
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1976
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1981
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA VOX
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1995
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 2006
NIAGARA TRIANGLE Vol.1  in NIAGARA CD BOOK I 2011 

◆Version B  … 吉田保による、ヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1986
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA CD BOOK I 1986


●フライング・キッド

◆Version A
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1981
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA VOX
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1995
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 2006
TATSURO FROM NIAGARA 2009
NIAGARA TRIANGLE Vol.1  in NIAGARA CD BOOK I 2011 

◆Version B  … 吉田保による、ヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1986
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA CD BOOK I 1986


●FUSSA STRUT Part-Ⅰ

◆Version A
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1976
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1981
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA VOX
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1986
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1995
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 2006
NIAGARA TRIANGLE Vol.1  in NIAGARA CD BOOK I 2011 


●夜明け前の浜辺

◆Version A
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1976
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1981
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA VOX
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1995
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 2006
NIAGARA TRIANGLE Vol.1  in NIAGARA CD BOOK I 2011
WHEN MY NIAGARA MOON TURNS TO GOLD AGAIN(Single) in NIAGARA x SHIPS COLLAVOX 

◆Version B  … おそらくVersion Aの2ミックス・マスターにエコーをかけたバージョン
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1986
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA CD BOOK I 1986

◆Version C … Version Aの冒頭と終盤の波のSEのみの部分がほとんどカットされたバージョン
BEST ALWAYS

◆Version D … 「夜の散歩道」、『NIAGARA MOON』セッションの一曲として、1995年にミックスされたバックトラック
NIAGARA MOON 2005

◆Version E …  「夜の散歩道」、『NIAGARA MOON』制作時の、ヴォーカルの入っていないデモ・ミックス
NIAGARA MOON 2015 CD


●ナイアガラ音頭 

◆Version A
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1976
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1981
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA VOX
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1995
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 2006
NIAGARA TRIANGLE Vol.1  in NIAGARA CD BOOK I 2011 

◆Version B … ピッチを上げクラヴィネットやコーラスをダビング、ヴォーカルも録り直したシングル用モノ・ミックス
ナイアガラ音頭(Single)
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1995
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 2006
ナイアガラ音頭(Single) in NIAGARA 45RPM VOX
NIAGARA 45RPM VOX CD Edition in NIAGARA 45RPM VOX

◆Version C … Version Bの録音を元に、ステレオで邦楽セクションと洋楽セクションを一方ずつのチャンネルに振った”東西文化・交流バージョン”
NIAGARA FALL STARS 1981
LET'S ONDO AGAIN SPECIAL 1987

◆Version D … おそらくVersion Aの2ミックス・マスターにエコーをかけたバージョン
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 1986
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 in NIAGARA CD BOOK I 1986

◆Version E … 「あなたが唄うナイアガラ音頭 Ondo dé Hustle」同様Version Bのイントロ前にリズム・ボックス〜ドラムのブレイクが加えられた、PAPILAPOPA大野によるステレオ・ミックス
NIAGARA FALL STARS 2nd Issue 1986
NIAGARA FALL STARS 2nd Issue in NIAGARA CD BOOK I 1986

◆Version F … Tokyo Fm系山下達郎サンデーソングブック」96年の新春放談用に、95年12月に作成されたステレオ・ミックス、イントロはVersion EをさらにExtendしている
NIAGARA ONDO BOOK in NIAGARA NOVELTY SONG BOOK

◆Track … 「あなたが唄うナイアガラ音頭 Ondo dé Hustle」、Version Bのイントロ前にリズム・ボックス〜ドラムのブレイクが加えられたカラオケ(モノ・ミックス)
ナイアガラ音頭(Single)
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 2006
ナイアガラ音頭 in NIAGARA 45RPM VOX
NIAGARA 45RPM VOX CD Edition in NIAGARA 45RPM VOX

2016年3月12日土曜日

The Jodelles「My Boy」「Girls Fall In Love」[Ken Gold Songbook]

The JodellesはJo Kesterと双子のAnne Peters・Annis Petersから成る3人組ヴォーカル・グループです。Peters姉妹はBilly Ocean等のコーラスをやっていたこともあるそうです。3人組がどういった経緯で結成されレコードを出すことになったのかはよくわかりませんが、1983年7月に英Ariolaからリリースされたシングルが「My Boy」c/w「The Choo Choo」でした。両面ともにGold-Denne作品で、Goldによるプロデュースです。Goldは、Delegation等で聴かせるアップ・トゥ・デイトなブラックミュージックと並行し、Tight Fit「Back To The 60's」のプロデュース等、60年代志向の作品を少しずつ出していましたが、その極めつけとも言える作品がこの「My Boy」と言えるでしょう。



いきなりのWizzard「See My Baby Jive」風の決め、3連譜の複数台と思しきピアノ達が鳴り始まるシャッフル・ビート。めくるめく60年代前半の、Phil Spector風ガール・グループ・サウンドが展開されています。アクセントのタム回しがシンドラなのが時代ですね。ブラス・ストリングスアレンジはいつもの通りLynton Naiffがクレジットされています。

Wizzard風の決めや間奏のギターの雰囲気など、まるでこの2年前・81年の大滝詠一さん作品『A LONG VACATION』を意識したかのような音世界ですが、Goldに当時聴く機会があったのか、はたまたたまたまアウトプットが似てしまったのか、真相は本人に聞いてみないと分かりませんね(これ聴いて思いましたが、80年代のナイアガラ・サウンドって音の厚み付けにブラス隊を使うことってあんまりありませんでしたね)。ちなみにB面の「The Choo-Choo」もタイトルからしていかにもオールディーな感じですが、こちらはSpectorものではなく、Martha & The Vandellas風のソウルフルなナンバーです。



そしてそのわずか1ヶ月後、第2弾にしてラスト?シングル、「Girls Fall In Love」がリリースされます。B面が「My Boy」で、ジャケットもシングル「My Boy」の「STEREO 45RPM」の部分に「Girls Fall In Love」と上から貼っただけと、手抜き感が凄いですが…。さてこの「Girls Fall In Love」、Gold-Denne作・Goldプロデュースというところは変わらずでして、やはり素敵な60年代アメリカン・ポップスものでした。フェイドアウト前に登場するドラムの三連とか、思わずニヤッとする要素が満載です。なんというかDavid Jones風の香りもどうしても感じられますが、Goldは82年の佐野元春さん・杉真理さん・大滝詠一さんによる『NIAGARA TRIANGLE VOL.2』を当時聴く機会があったのか、是非、是非、本人に聞いてみたいところですね。


2016年2月27日土曜日

西 慎嗣アンド・ ロード・ロード・ローディ・ミス・クローディ・グループ「すてきなトランスポーテイション」「シュールなる渚1963」[桑田佳祐 Songbook]

桑田佳祐さんがめでたく還暦を迎えられたそうですので、そんなタイミングで新しいシリーズを始めてみたいと思います。作曲家・桑田佳祐さんに焦点を当て、桑田さんが他者に提供しレコード化された楽曲で、サザンのメンバーのソロ作品を除くものを年代順にご紹介するという、ニッチで需要もなさそうなテーマでお送りしようかと…(なにしろあんまり数が無いので、すぐ終わってしまいそうですが…)。

第一回目は桑田さんが初めて他者へ提供した楽曲2曲となります(ちょうど、サザンで「私はピアノ」「松田の子守唄」と、ご自身以外のヴォーカル曲を作曲・リリースした直後になります)。これらは桑田さんの初プロデュース作品(“桑田佳祐の初プロデュース!”と帯に記載されています)でもある、スペクトラムのギタリスト、西慎嗣さんの1980年8月リリースのソロ・アルバム『NISHI』に収められています(ちなみに、同年3月リリースのスペクトラム『OPTICAL SUNRISE』収録の「MOTION」は、作詞家・桑田佳祐初の提供作品となります)。

おそらく桑田さんが西さんのアルバムをプロデュースすることになったのは、同じ事務所、さらには同じレコード会社所属だったからというのは言うまでもありませんが、やはり桑田さんと西さんの趣味の一致(Eric Claptonやスワンプ方面)があったのかと思います。結果、スペクトラムのサウンドから大きく離れ、当時のサザン(まさに『タイニイ・バブルス』〜『ステレオ太陽族』の間といった感じです)の雰囲気を持ったアルバムに仕上がっております。原由子さん(メインのキーボードは奥慶一さんですが)や松田ヒロシ(シングル「勝手にシンドバッド」以来のカナ表記でした)さんの参加もそういった雰囲気への影響が大きいですね。

「すてきなトランスポーテイション」は70年代後半あたりのClaptonの雰囲気が出た、いかにもこの頃の桑田さんらしい、すてきな一曲に仕上がっています。クラリオンのCMタイアップが付き、80年12月に斎藤誠さん作「Don't Worry Mama」(こちらもClapton風レゲエものでした)と両A面でシングル・カットされますが、この曲はシングル用のミックスが新たに作られました。シングル・ミックスの方はヴォーカルがよりこなれた感じで、ダブルで録り直されています。

「シュールなる渚1963」はタモリ作詞・桑田さん作曲という異色の組み合わせのサーフ系三連コーラスもので、ドゥーワップっぽくないですがコーラスはシャネルズの皆さんが担当しています。正直西さんのキーからするとかなり低めの設定ですが、これはこれで妙な魅力があります。個人的にはソリーナもポイントが高いです。

『NISHI』はこの2曲に関わらず、当時の桑田さん・サザンの影響が大きく(西さんのヴォーカルも桑田さん風ですし)、またその後の桑田さん・サザンにも影響を与えている、サザン史上も重要な位置にある作品です。是非気になる方はチェックしてみてください。

2016年1月31日日曜日

Delegation「What Took You So Long」「I Figure I'm Out Of Your Life」「Tell Her」「No Words To Say」[Ken Gold Songbook]

3作目『Delegation』リリース後、Delegationのメンバーの一人、Bruce Dunbarがグループを脱退します。Ricky BaileyとRay PattersonのデュオとなってしまったDelegationですが、さらにはAriora移籍後、ヨーロッパやアメリカでのチャート成績とは裏腹に、イギリスで一度もチャート・インできていませんでした(Baileyはレーベルのプロモーションが原因と話していますが…)。レーベルからのプレッシャーも重くなる中、新作に向けてプロデューサーKen Goldは、ややマンネリ気味だった前作よりもアップ・トゥ・デイトなサウンドを二人に用意することとしたようです。アルバムは82年3月頃、『Deuces High』のタイトルでリリースされました。

前2作に比べると、日本盤CDのライナーで金澤寿和さんが書いていらっしゃる通りクールな仕上がりとなっています。Robert Ahwaiのキレのあるギターは相変わらず健在ですが、Lynton Naiffがシンセサイザーを多用するようになり、「What Took You So Long」ではエレキ・ベースでなくシンセ・ベースが使われています。英盤CDライナーでSteven E. Flemming Jr.が書いていますが、この辺はアメリカの同時代的なサウンドからSolarものやKashifのサウンドをチョイスして参考にしているのかもしれません。イギリスでも、当時はCentral Line、Imagination、Linx、ShakatakやLevel 42など、新世代のソウル、ファンク・グループが次々と登場していました。

また、特筆すべきは、アルバム全編に渡るリン・ドラムの使用です。おそらくLM-1を使用しているかと思いますが、この時点でこの手のサウンドの作品に全編でLM-1を使用するというのは比較的早かったのではないでしょうか。LM-1のポップスにおける利用を見てみると、Herbie Hancock『Mr. Hands』(「Texture」)が80年9月のリリースで、81年になるとニューウェーブ方面の方々がLM-1を作中で使い始めます。やはりイギリスのミュージシャンの割合が多かったようですが、そんな中Princeが81年10月リリースの『Controversy』(「Private Joy」)でLM-1を使用、同月George Bensonがリリースしたシングル「Turn Your Love Around」でもLM-1が使われ、82年初頭にかけ大ヒットします。ブラックミュージック界にもドラムのマシン化の波が発生した、まさにそんな時流を見極めての使用だったのではないでしょうか。霊感ですがMarvin Gayeが82年10月リリースの『Midnight Love』においてTR-808を全編に渡り使った理由のような、後ろ向きな理由ではないような気がします(808に比べLM-1は高かったし…)。とは言うものの、GoldはあくまでLM-1にシンプルな、ライブで違和感無く人間が再現できるような演奏を行なわせており、Marvinのように独創的なプログラミングを行ったわけではないというのも面白いですね。

A-1 What Took You So Long
A-2 I Figure I'm Out Of Your Life
A-3 If You Were A Song [*Bailey-Patterson]
A-4 Gonna' Bring The House Down [*Bailey-Patterson]
A-5 Tell Her
B-1 Dance Like Fred Astaire [*Bailey-Patterson]
B-2 No Words To Say
B-3 Would You Like To Start A Thang With Me [*Bailey-Patterson]
B-4 Dance-time U.S.A. [*Denne-Hansen]

Gold-Denneコンビ作は4曲と少なめですが、どれも粒ぞろいです。「What Took You So Long」はLM-1とRobert Ahwaiのギターの組み合わせでスタートする哀愁アーバンもの。「Gonna' Bring The House Down」との組み合わせで12インチと7インチでシングル・リリースされていますが、LP・12インチ・7インチで長さがそれぞれ異なる別バージョンが収められています。印象的なベース、アーバンなサックス・ソロが魅力の「I Figure I'm Out Of Your Life」は翌83年にArnie's Loveが「I'm Out Of Your Life」のタイトルでカバーし、UK67位を記録しています。メロウなミディアム・スロー「Tell Her」、そして「No Words To Say」も軽めですが印象に残る泣きのメロディ、個人的な趣味ではどれも甲乙つけがたい出来です。


また、どのタイミングでリリースされたのか不明ですが、メンバー2人による渾身のバラード「If You Were A Song」(B面は「No Words To Say」)がDude Recordsという謎のレーベルからシングル・リリースされています(“この”Dudeはこれ1枚しかリリースが無いようです。また、2013年秋にDelegationは配信のみで現時点での最新シングル「I Surrender」をリリースしていますが、これにDude Recordsのクレジットがあります。ということは、Delegationの個人レーベルでしょうか?)。A面はLPと別ミックスで、ドラムは生、ベースはシンセに差し替え、さらに賑やかしのシンセがダビングされています。このシングル・ミックスは95年のDelegationのベスト盤『The Classics Collection』でCD化されました。

結局このアルバムは、アメリカではリリースを見送られてしまいました。イギリスでもアルバム、シングル「Gonna' Bring The House Down」・「If You Were A Song」はいずれもチャート・インせず、この作品を最後にDelegationはAriolaを去ることになります。DelegationのAriolaとの契約終了、またGoldの作家としての移籍もあってか、これ以降、Gold作品発表の場は減少していきます。