2015年5月4日月曜日

「enoshima - Southern All Stars Golden Hits Medley」Produced by Z.DAN

サザン関連、今回は93年に突如リリースされたサザンのメガ・ミックス「江ノ島 〜 Southern All Stars Golden Hits Medley」です。

元々93年というのは、ミュージシャン側としても特に何も予定がなかったものの、何せデビュー15周年の年ですから、何もしない訳にもいかず、「エロティカ・セブン」「素敵なバーディー」という、83年以降禁じ手としていたバタ臭いラテン・ディスコ歌謡/ブルージーな三連ものを10年ぶりに解禁しました。しかし、アルバムを出すほどのモチベーションも無く、何とか会社側の企画で絞り出されたのが本作かと推察しますが、安易にベスト盤に行くこと無く、意欲的な企画が飛び出します。

どんな企画かというと、過去の録音をメドレー形式でフロア向け風にリミックスするというものでした。何しろこの作品、公式でも未だに全く制作体制が公になっておらず、謎のままです。リリース時の設定は「謎の集団Z団がサザンのマルチ・マスターを盗難しリミックス、(架空の・というかこの作品のためのレーベルである)『江ノ島レコード』からリリースする」というものでした。しかし、少なくとも福富幸宏さん・斎藤誠さんが後にそれぞれ公式サイトで参加作品として掲載されていたことがあり、小西康陽さんも福富さんが当作品に携わっていることをサイトに書かれていたこともあるため、このお二人は参加しているのが確定と見ていいでしょう。当作品が好評となり、翌年福富さんへブルーハーツのリミックス企画『KING OF MIX』プロデュースの依頼が来ることになります(その際アルバムの名義は「盗賊団」でした)。今でこそサザン関連に欠かせない存在の斎藤さんもこの時点ではサザン関連のレコーディングから離れて久しく(原由子さんの84年『Miss YOKOHAMADULT』の後は92年の同じく原さん「友達でいようね」の編曲とアニメ「眠れぬ夜の小さなお話」の音楽を担当した程度でした)、この作品も過去とは違う文脈で声がかかったのかもしれません。さらにさらに、今野多久郎さんもaxelleのプロフィールに本作プロデュースの記載があります。今野さんも桑田さん絡みでは90年代半ばまで様々共演があり、人脈の供給元としても重要な方です。

のっけから、八木グランドオーケストラによる「Dear John」のイントロのループに突き刺さるビート、桑田さんのライブの定番「スタンド、アリーナ、カーモーン」の叫び、そして始まる「勝手にシンドバッド」…と、最初からなかなか凝った作りです。マルチ・マスターからのミックスで、単純にドラム・ベース等を差し替えて繋ぐだけでなく、例えば「勝手にシンドバッド」で「そんなヒロシに騙されて」のギターや「My Foreplay Music」のピアノが登場したり、「マチルダBABY」のシンベに「ボディ・スペシャルII」、同じく「マチルダBABY」のサックスに乗せて「私はピアノ」のヴォーカルが展開されたりと、マッシュアップが93年の歌謡界で堂々と繰り広げられておりました。17分に渡って、最新曲「エロティカ・セブン」を含むサザンのヒット曲・人気曲が次から次へと登場します。


また、当作品のリリースは手順も凝っていました。まずはラジオOAを行い、8月に12インチのみを先行で1万枚限定リリース。即日完売という煽り方で、「急遽9月にCD・カセットのレギュラー・リリースが決定!」という、珍しく手の込んだ演出でした。12インチはビクターのクレジットがジャケット上記載が無く(規格番号でわかるんですけど)、盤レーベル上に「MANUFACTURED BY VICTOR ENTERTAINMENT INC., TOKYO, JAPAN」があるのみでした。CD・カセットのジャケットは「MANUFACTURED BY V. E. INC., TOKYO, JAPAN」と、それでも頑張った痕跡が見えます。CDのセカンド・プレスからは、帯が付き普通のビクターのCDっぽくなりました。


ちなみに、ジャケットのデザインはTYCOON GRAPHICSが担当しています(公式インタビューではCDのジャケットを手がけたのはこの後94年頃の作品と語られているようですが…)。

2015年5月2日土曜日

Delegation「The Promise Of Love」「Where Is The Love (We Used To Know)」and others [Ken Gold Songbook]

Ken Goldのシリーズ、いよいよGoldが長きに渡ってかかわることになるヴォーカル・グループ、Delegationの登場です。

76年、Real ThingのシングルをヒットさせたKen GoldとMicky Denneは自身の曲を歌わせる黒人ヴォーカルグループを探し、「Melody Maker」誌に広告を掲載しました。これを見たバーミンガム出身のLen Coleyが友人と申し込みに行ったのですが、「まともなリードヴォーカルを連れてこい」と門前払い、Coleyが改めて連れて行ったのが別の友人Ricky Baileyでした。ここでGoldがプロデュースを快諾、という流れのようです。Ricky Bailey・Len Coley・Roddy Harrisの3人グループはRumoursと名乗り、Goldは英Stateと契約します。

そしてGold-Denneコンビ作・Goldプロデュースで7月にリリースされたファースト・シングルが「The Promise Of Love」です。ストリングスがフィーチャーされたフィリー・ソウル風の、軽快で爽やかで、そして少し切ない仕上がりになっています。B面はGold-Denneクラシック「It Only Happens」をGold自らのプロデュースで取り上げていますが、非常に簡素な仕上がりで、ヴォーカル・グループのファースト・シングルなのにRicky Bailey1人しか登場しないというのはどういうことなのでしょうか(関連するかどうか不明ですが、「The Promise Of Love」のシングルは77年10月に再発され、B面が「Back Door Love」に差し代わっています)。このシングルは出来の良さとは裏腹に、チャート・インしませんでした。さらに、リリースの1ヶ月後、グループはDelegationに改名します。

翌77年2月にはセカンド・シングル「Where Is The Love (We Used To Know) / Back Door Love」がリリースされます。前作同様両面共にGold-Denneコンビ作ですが、プロデュースのクレジットもKen Gold/Mickey Denneと連名となりました。「Where Is The Love (We Used To Know)」はUKチャート22位まで上昇した名曲で、これまたフィリー風のストリングスと爽やかなリズム・セクションに乗せ、切ないメロディが繰り広げられます。Ricky Baileyもお気に入りだったのか、Delegationがソロ・プロジェクトとなりGoldの元を離れて以降の87年に再演しシングル・リリースしています。B面「Back Door Love」もフィリーもので、この頃はGold達はフィリー路線でこのグループを売り出したかったようですね。

7月リリースの3枚目のシングル「You've Been Doing Me Wrong / Baby You're My Mystery」もGold-Denneコンビ作で、プロデュースはGoldの単独表記に戻りました。また、ブラス/ストリングス・アレンジャーとしてLynton Naiffも両面にクレジットされています。こちらはチャート最高49位を記録しました。このシングルも前2作の系譜にある出来です。そしてこの前後で、Roddy Harrisがグループを離れ、Ray Pattersonが加入しています。

上記3枚のシングルを経て、11月にファースト・アルバム『The Promise Of Love』がリリースされました。

A-1 The Promise Of Love
A-2 You've Been Doing Me Wrong
A-3 We Can Make It [*Denne-Feeney]
A-4 Heaven Is By Your Side
A-5 Back Door Love
B-1 Where Is The Love (We Used To Know)
B-2 Soul Trippin'
B-3 You And Your Love
B-4 Someone Oughta Write A Song (About You Baby)
B-5 Steppin' Out Of Line

全編Goldのプロデュースで、1曲(A-3)を除き全てGold-Denneコンビ作のナンバーということで、既にキャリアのあったReal Thingとは違いトータルでGoldがバックアップしています。基本的にはシングル曲同様にフィリー風のサウンド中心ですが、終盤になると少しフィリーから離れます。特にB-4(76年8月にReal Thingが録音したもののお蔵入り、翌77年にRealisticsのシングルとしてリリースされた曲で、アレンジの方向性は一緒ですがDelegationの方が歌のせいか少し軽めで、若干洗練されている印象です)のドラムとベースのリズム・パターンなど、この後のGold関連作品につながる流れです

なお、このオリジナルUK盤『The Promise Of Love』は、一度もCD化されることはありませんでした(後述するUS盤の曲目に2曲加えたものが米Collectablesの96年CD『Golden Classics Edition』です)が、2015/5現在、iTunesでは上記UK盤の内容のみ(謎のボーナストラック付で)取り扱われており、さらに、State時代のシングルも取り揃えられています。
追記:2017年、遂に英bbrから40周年記念盤がCDでリリースされました。英盤の内容に米盤収録曲やシングル曲等を加えた、充実の内容です。








(こちらが謎のボーナス付配信版です)