2018年5月29日火曜日

Cliff Richard「I Can't Ask For Anymore Than You」「You've Got To Give Me All Your Lovin'」[Ken Gold Songbook]

この曲達を取り上げそびれていましたので、今回はまた時系列を遡って1976年に…。

70年代に入り、英国のスターCliff Richardはリリースのペースも徐々に落ち着き、それでもシングルではスマッシュ・ヒットを放っていました。一方、74年に久々にリリースされたオリジナル・アルバム『The 31st of February Street』はチャート圏外となり、そんな中で心機一転、新たな方向性を導きだそうとしていたのが50年代末〜60年代RichardをバックアップしてきたShadowsのギタリスト、Bruce Welchでした。

Bruce Welchは新作を制作するにあたり、Tony Riversにコーラス並びにコーラス・アレンジを打診します。そのきっかけとなったのがKen GoldとRiversの共作である「You Are The Song」(75年、River名義のリメイク・バージョン)をWelchが耳にしたことでした。メロウなソウル風味の楽曲に纏わり付くTony RiversとJohn Perryの厚いコーラスに魅せられたWelchからのオーダーで、RiversはCliff Richardの新作に参加することとなります。そんな流れでRiverの2人(Tony Rivers・John Perry)に加えKen Goldもコーラス隊としてレコーディングに参加したようです(ただし、2001年盤CDによるとアビーロードスタジオの記録ではGoldでなくA. Hardingと記載があるようです。RiversのインタビューではGoldが参加し、Cliff Richardと4人でノイマンU87を囲んで録音したと話していますが、果たして…)。さらには作家として売り出し中だったKen Gold & Michael Denneコンビによる楽曲も、Bruce Welchの選で取り上げられることになりました。LPは米国への売り込みも兼ね『I'm Nearly Famous』と皮肉の効いたタイトルで、EMIからリリースされました。LPは英国では65年以来の10位以内(5位)を記録、米国でも初めてビルボードにチャート・イン(76位)するヒット作となりました。


さて、Ken Gold & Michael Denneコンビの楽曲は先行してシングル用に録られ、LP冒頭を飾ることにもなったポップでファンキーな「I Can't Ask For Anymore Than You」です。もともとMichael Denneが歌ったデモテープをBruce Welchが気に入り、Cliff Richardの新しい魅力を引き出そうと、そのままのキーで歌わせたのであの驚きのファルセットでのヴォーカルが生まれたようです。Riversによると、ギターもデモテープでMichael Denneが弾いたフレーズをBruce Welchが忠実になぞっているそうで、というのもMichael Denneはユニオンに入っておらず、本チャンの録音に参加できなかったからだとかなんとか…。LPリリース後、LPから3枚目のシングルとしてリリースされ、チャート17位まで上昇しています。
さらにLP用にもう1曲取り上げられたのが、跳ねる感覚がこれまた魅力の「You've Got To Give Me All Your Lovin'」です。2曲ともGold・Denneコンビのお気に入りだったのか、78年の『Denne & Gold』でセルフカバーしています。

ちょうどAreatha FranklinやJackie Wilsonに楽曲が取り上げられた後のタイミングでこのLPがリリース、直後、いよいよGold-DenneコンビとReal Thingが出会い、プロデューサー・Ken Goldもデビューすることになります。ちょうどシングル「I Can't Ask For Anymore Than You」は、Real Thing「You To Me Are Everything」と同じ、76年5月のリリースとなりました。