2022年5月3日火曜日

番外編 :その後の「ケースケランド」

「ケースケランド」は、1981年より集英社「Playboy日本版(月刊プレイボーイ)」の音楽コーナーに連載された、桑田によるレコード評コラム。毎月、基本的に新譜中心の洋楽アルバム一枚についてが下ネタを交えた桑田のユニークな文体で綴られる、という内容であった。初回のお題はJohn Lennon & Yoko Ono『Double Fantasy』。

1984年11月号(Beatles『The Beatles』)までの分が84年12月に単行本化され、85年12月号(Stevie Wonder『In Square Circle』)までの分を追加した文庫版が86年2月に、いずれも集英社から出版された。しかし実際はこの後も87年まで連載は続いており、それらは2022年現在まとめて出版されていない。今回はそれらのお題を並べながら、桑田をとりまく時代の雰囲気というものを眺めてみたい。

87年からは音楽コラムコーナーから独立し、2〜3ページのエッセイの連載として「日々あれこれケースケランド」に改題。タイトル通りアルバム評に拘らず、単なるエッセイ的な回も登場するようになっている。


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1986:  ケースケランド
1986年1月号 「今月はJ.レノンの新譜だぜ」 John Lennon『Live In New York City』
1986年2月号 「今月の新譜はR.ストーンズ」 Rolling Stones『Dirty Work
1986年3月号 「今月はコステロだぜ」 Elvis Costello『King Of America
1986年4月号 「俺だってボレロを聴きながら、殺してみたい。」 L'Orchestre De La Suisse Romande couducted by Ernest Ansermet『Ansermet Conducts Ravel』
1986年5月号 「麗しのマドンナとのSM同日選挙ながらシンディは頑張った」 Cyndi Rauper『True Colours
1986年6月号 「「長い夜」のシカゴの新譜をふたりの音楽人が鑑評する」 Chicago『Chicago 18※w/河内淳一
1986年7月号 「'80年代の筋金ロック“ZZトップ”を聴く」 ZZ Top『Afterburner
1986年8月号 「今月はトム・ウェイツだぜ」 Tom Waits『Rain Dogs※代筆:大森隆志
1986年9月号 「今月はG.ジョーンズだぜ」 Grace Jones『Slave To The Rhythm
1986年10月号 「初夏ならばスイカ食わんとふたりでドライブ…P・ベイリー」 Philip Bailey『Inside Out
1986年11月号 「80年代ロックの正解 フィルの“ジェネシス”」 Genesis『Invisible Touch
1986年12月号 「男のロックって何だ!正しいロックを知れ!」 John Eddie『John Eddie

1987:  日々あれこれケースケランド
1987年1月号 「不倫の街に、ジョン・レノンを聴く。」 John Lennon『Menlove Ave.』
1987年2月号 「ちょっと売れてしまったオレの、10大ニュース。」 (アルバムなし:86年の活動の振り返り)
1987年3月号 「観てくれた?オレの初のプロデュースTV番組 今回はそのウラ話からスタートしよう。」 (アルバムなし:TV番組「Merry Xmas Show」について)
1987年4月号 「全国コンサート・ツアーも一段落。頭の柔軟体操にはレゲエが一番…」Taxi Gang Featuring Sly & Robbie『Taxi Connection - Live In London』
1987年5月号 「ウらやましいほど、マとを得ていて、イき、それがロバート・クレイの“音楽”だ。」 Robert Cray『Strong Persuader
1987年6月号 「「テレビ大学」番外編 私がテレビと仲よくなれる日。これはテレビに出る人のマニュアルです。」 (アルバムなし:当時「ニッポンTV大学」でいとうせいこうと共にパーソナリティを務めていた関口のエッセイ)※代筆:関口和之
1987年7月号 「H, O & K。どんな化学反応がおきるかな?」 (アルバムなし:Daryl Hall、John OatesとのNYレコーディングについて)


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87年7月号のNYレコーディング報告では、どこにも連載終了とは謳われていないが、翌8月号以降、「ケースケランド」は掲載されることはなかった。Hall & Oatesとの共演をもって、長年続いた桑田の洋楽レコード評は幕を閉じたのであった。



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(2023.5.4. 追記)
87年のHall & Oatesとの共演を最後に、桑田の洋楽コラム・エッセイは幕を閉じ、新たな局面に進むのだった…といった流れでうまく話が次の記事に繋がったと思っていたところ、なんと実際は連載が89年まで継続していたことを確認。エッセイ編が終わった2ヶ月後の87年9月号よりまた音楽コラムコーナーで再開、しかも周囲の他コラムと異なり無署名(!)という謎のスタイルで89年7月に最終回を迎えている。初回記事公開から1年後となってしまったが、お詫びと訂正を兼ねて、その後の情報をさらに追記したい。


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1987-89:  ケースケランド コラム版 K-SUKE LAND
1987年9月号 「これぞH&Oとの友情ある出会いだった!」 (アルバムなし:Daryl Hall、John OatesとのNYレコーディングについて)
1987年10月号 (休載)
1987年11月号 「まいった!オレの「思い込み」を裏切ったグレートフル・デッドの新作。」Grateful Dead『In The Dark
1987年12月号 「政治家を目指すのは、まだまだやめてくれ、ブルース!」 Bruce Springsteen『Tunnel Of Love
1988年1月号 「"ビートルズみたいな人" VS "ビートルズらしい人"」Paul McCartney『Choba B CCCP』『All The Best!
1988年2月号 「先輩の蹴りとツェッペリンとオナニーを経由した後のザ・バンド」 Robbie Robertson『Robbie Robertson
1988年3月号 「黒人のチャック・ベリー坊さまがギターで読経にふけった三十年の迫力!」 Chuck Berry『Hail! Hail! Rock 'n' Roll
1988年4月号 「手に負えないと思いつつも、こんな女と付き合いたかった…。」 Nancy Sinatra『The Hit Years』
1988年5月号 「今の俺に欲しいのは爆走セックスのようなワイ雑さだ!筋肉丸出しの馬鹿野郎プロレス、万歳!」 Ted Nugent『If You Can't Lick 'Em... Lick 'Em
1988年6月号 「"火の玉小僧"吉村道明の等身大サウンドがロン・ウッドにオーバーラップする!」 Ron Wood & Bo Diddley『Live At The Ritz』
1988年7月号 「桑田クンも参加した、あのホール&オーツの新譜ついに完成!」Daryl Hall John Oates『Ooh Yeah!
1988年8月号 「桑田佳祐、サザン11年目への出発宣言。応援してくれよう!」サザンオールスターズ「みんなのうた
1988年9月号 「桑田無念のダウン!と、その瞬間ロード・マネージャー相馬がリングに大乱入!」 Huey Lewis And The News 『Small World』 ※代筆:相馬信之
1988年10月号 「雨の中でもSAS復活コンサートは快調に全国進撃中!来てくれたみんな、ありがとう。」The Gregg Allman Band『Just Before The Bullets Fly
1988年11月号 「ツアーにあけくれた夏も終わり、"マジメな秋"の再来をグレン・フライの新婦に感じる私です。」 Glenn Frey『Soul Searchin'
1988年12月号 「ストーンズのトラック・ダウンは、実はこの人が全部決めてた!? キースのソロを聴いてくれ。」  Keith Richards『Talk Is Cheap
1988年1月号 「自粛ムードの中、ささやかに行われたハズのホール&オーツとの即興セッションの真相とは!?」Tommy Conwell And The Young Rumblers『Rumble
1989年2月号 「なにを言っても嘘っぽくなってしまったこの時代にあのCSN&Yが再編成……」Crosby, Stills, Nash & Young『American Dream
1989年3月号 「とにかく許せないCMが多い!人のフンドシで相撲をとるな!」 アトランティック・ソウルCDコレクション
1989年4月号 「この人の死にさいし、もう一度ロックという念仏を唱えたいクワタです」 Roy Orbison『Mystery Girl
1989年5月号 「サザンの新曲『女神達への情歌』、クワタ監督の映画!平成元年もフルスロットルでいくぞ〜」Bruce Springsteen『Video Anthology 1978-88』
1989年6月号 「前田日明が"デカさ"を暴露したジョージ高野戦の真相を、ワタシ桑田が教えよう!」Cheb Kader『Rai』
1989年7月号 「9年間ご愛読ありがとう!桑田も、ケースケランドを卒業します!」Richard Marx『Repeat Offender