2015年7月20日月曜日

SUGAR BABE『SONGS』のバージョン違い


SUGAR BABEの『SONGS』がリリースされて40周年なのだそうです。正直、40周年記念盤が出ると聞いた時はその後のことが頭をよぎり思わず意識が朦朧としてしまいましたが、それはさておきこのタイミングなので、個人的にとても思い入れのあるこの作品のバージョン違いをまとめることで『SONGS』への敬意を表したいと思います。
「やっぱり最初の笛吹銅次ミックスが一番」とおっしゃっていた山下達郎さんですが、4月末か5月初頭、30周年の際の新春放談での大瀧詠一さんのコメントが甦り、当初予定の内容から急遽リミックスへと内容変更となりました。今回のミックスはどなたが担当されたのでしょうか?40周年版についてはリリースされたら追記することにします(→追記しました)。



●SHOW

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
TATSURO FROM NIAGARA 2009
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 2015

Version B … 吉田保による、ヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Version D … 1974年4月ニッポン放送第一スタジオで録られた通称“LFデモ”
DAWN IN NIAGARA in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version E … 94年版SONGS収録のLFデモ、エコーがかなり強い
SONGS 1994

Version F … 05年版SONGS収録のLFデモ、エコーが一番少ない
SONGS 2005

Track … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス(Version C)のカラオケ
SONGS 2015 CD


●DOWN TOWN

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
TATSURO FROM NIAGARA 2009
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜
SONGS 2015

Version B … シングル用の別ミックス、Version Aに比べ各パートの定位がセンター寄りでフェイドアウトも早い
DOWN TOWN(Single)1975

Version C … 1981年に作られた、シンプルながらVersion Aより定位が整頓され、奥行きのあるミックス
MORE MORE NIAGARA FALL STARS in NIAGARA VOX
NIAGARA FALL STARS '81 REMIX SPECIAL in NIAGARA CD BOOK II

Version D … エコーが深めの1982年のシングル用バージョン(Version Aの2ミックス・マスターにエコーをかけている?
DOWN TOWN(Single)1982

Version E … クラヴィネットが別テイクの、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めの奥行きのあるミックス
SONGS 1986 
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version F … 1994年の山下達郎シングル「パレード」に収録された“オリジナル・シングル・バージョン”。Version Bの再現を狙い新たにミックスされたが、Version Bよりフェイドアウトは長い
パレード(Single)1994

Version G … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Version H … 1975年7月17日文化放送「ハロー・パーティー」でのライブ・テイク
SONGS 2015 CD

Version I … 1976年1月28日仙台電力ホールでのライブ・テイク
SONGS 2015 CD

Track A … 2005年盤『SONGS』用に新たにミックス、クラヴィネットはVersion Eと同じもの
SONGS 2005

Track B … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス(Version G)のカラオケ
SONGS 2015 CD



●蜃気楼の街

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS
 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 2015

Version B … 吉田保による、ヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Track … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス(Version C)のカラオケ
SONGS 2015 CD


●風の世界

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS
 2015

Version B … イントロのギター・カッティングが半拍ずれており、Version A終盤のブレスもオミットされた、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

◆Version D … 1975年9月12日中野公会堂でのライブ・テイク
SONGS 2015 CD


●ためいきばかり

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS
 2015

Version B … ブラスがある程度大きい、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Version D … ブラスがかなり大きくフィーチャーされた、未採用となった1975年のミックス
SONGS
 2005


いつも通り

Version A
SONGS 1975
DOWN TOWN(Single)1975
SONGS 1976
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
LIBRARY 〜Anthology 1973-2003〜
SONGS 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS
 2015

Version B … ヴォーカルがダブルで大きめ・エコー深めの、吉田保による1981年のミックス
NIAGARA FALL STARS
NIAGARA FALL STARS in NIAGARA VOX
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA FALL STARS REMIX SPECIAL in NIAGARA CD BOOK 2

Version C … 吉田保による、ヴォーカル(Version Aと別テイク/Version Bで小さめに使われている方)大きめ・エコーさらに深めで奥行きのある1986年のミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986
The Very Best Of 大貫妙子
NEW BEST 大貫妙子

Version D … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Version E … 1974年4月16日池袋シアターグリーンでのライブ・テイク
SONGS 1994

Track … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス(Version D)のカラオケ
SONGS 2015 CD



●すてきなメロディ

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS
 2015

Version B … フェイドアウトが長い、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのある1981年のミックス
NIAGARA FALL STARS
NIAGARA FALL STARS in NIAGARA VOX
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA FALL STARS REMIX SPECIAL in NIAGARA CD BOOK 2

Version C … 間奏頭のピアノが一台少なく、カズーが入り、フェイドアウトが長い吉田保によるヴォーカル大きめ・エコーさらに深めで奥行きのある1986年のミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version D … Version C作成後、笛吹銅次が誤ってマルチから消してしまったカズーをVersion Aにペーストしたバージョン
TATSURO FROM NIAGARA 2009

Version E … デモ・ミックスからのカズーをマルチに入れ込み作成された中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Version F … 1976年3月31日荻窪ロフトでのライブ・テイク
SONGS 1994


今日はなんだか

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
TATSURO FROM NIAGARA 2009
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 2015

Version B … 吉田保による、ヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きがありピアノは初期テイクを使っているミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Version D … Version Bと同じピアノをフィーチャーした、中村辰也・山下達郎によるミックスの“Original Piano Version”
SONGS 2015 CD

Version E … 1976年4月1日荻窪ロフトでのライブ・テイク
SONGS 1994

◆Version F … 1976年1月28日仙台電力ホールでのライブ・テイク
SONGS 2015 CD



●雨は手のひらにいっぱい

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
音壁JAPAN
TATSURO FROM NIAGARA 2009
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜
SONGS 2015

Version B … 冒頭カウント最後のハイハットが入る、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Version D … 1976年4月1日荻窪ロフトでのライブ・テイク
SONGS 2015 CD

◆Track … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス(Version C)のカラオケ
SONGS 2015 CD



●過ぎ去りし日々 “60's Dream”

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
TATSURO FROM NIAGARA 2009
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 2015

Version B … フェイドアウトの長い、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD


●SUGAR

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 2015

Version B … Version Aとは細部に違いのある、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … Version Aとは細部に若干違いのある、中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Version D  1975年の未採用となったミックス
SONGS 2005

◆Version E … 1975年のデモ・ミックス
TATSURO FROM NIAGARA 2009

2015年7月5日日曜日

サザンオールスターズ『さくら』


今回はサザン98年作、『さくら』についてつらつらと…。

90年代に入りバブルも崩壊すると、桑田さんの目指す場所もそれまでと変わりました。大瀧詠一さんや細野晴臣さん、私的にも仲良くなっていた山下達郎さんのような、レコーディングを極めるミュージシャンズ・ミュージシャン的な存在にならんとしていたかと思います(96年『Young Love』は外部のキーボード・プレイヤーやアレンジャーを起用せず、初めて桑田さん一人が中心となって作られたアルバムでした)。しかし国民的バンドの中心的存在にはあまりそういった目線は注がれません。そんなギャップに対するストレスを抱えたまま不惑の40代に突入、その頃から作曲もスムーズにいかなくなったとのことで、ネガティブな思いが強くなっていたのではないでしょうか。そこに続く不況や世紀末など、当時のあれこれに感じられた終末感が混じり合うことで、このアルバム独特の閉塞感が出来上がったのではないか…というのが私の霊感による妄想です。ProToolsの導入もこのアルバムからで、桑田さん仕切りのレコーディングもより箱庭的になりました(しかしメンバーがいつもの担当楽器以外でも携わっているなど、新たな試みもあります)。

収録曲を一つ一つ見ても、求められているサザンをいかに裏切るかということに注力しているのがわかります。一見いつものサザンらしい曲も、桑田さんとしては嫌味な仕掛けを施したようで、決して面と向かって表さないところが桑田さんらしいというか、さすが国民的バンドを仕切るだけの狡猾さがあります。

リリース後の評価はというと、サザンらしいサザンを期待していたリスナーからは「?」、そして桑田さんが期待するような新規リスナーが増えるわけでもなく、どっちつかずな結果となってしまいました。途方にくれていた桑田さんに届いた「Oh!クラウディア」をもう一度、という声に導かれ、恐る恐る桑田さんが出した曲には「TSUNAMI」というタイトルが付けられていたのでした。

M-1NO-NO-YEAH/GO-GO-YEAH」はいきなりLed Zeppelinもので、恐らくギターやベースはタッチから察するに桑田さんではないでしょうか。M-2YARLEN SHUFFLE」はLeon Russell風ヴォーカルをフィーチャーしたラテン風味の曲ですが、桑田さんっぽいギターとブラス以外は打ち込みメインでクールな手触りがします。M-3「マイ フェラ レディ」は4人の桑田さんと4本のトロンボーンが絡む、久々のエロジャズ歌謡です。八木正生さんと離れて以降、ストレートなジャズものは控えてきた桑田さんでしたが、96年に島健さんと組んでからはこういったアプローチが復活しました。M-4LOVE AFFAIR」はBeach Boysのコンサートを意図したそうで、頭と終わりに歓声が入れられています。ポップな曲なのに、(タイアップのドラマ内容を踏まえただけとはいえ)歌詞は不倫がテーマってのも、病んでる感じがなんとなくBrian Wilsonぽいですね。M-5「爆笑アイランド」は歪んだギターと打ち込みの組み合わせに病んだ世間のスケッチシリーズの歌詞で、ちょっと力み過ぎな感じがします。M-6BLUE HEAVEN」は桑田さんのドブロ・ギターをフィーチャーしたClaptonもので、曲自体はとてもシンプルな作りです。M-7CRY  CRY」は当時の桑田さんのアイドル、Radioheadを意識したそうで、ドラム以外は基本桑田さんの演奏のようです。M-8「唐人物語」は原さんヴォーカルコーナーで、Beatlesの開放弦のあの曲っぽく作り始めたら、全然違う和の香りのする曲になったということです。

M-9「湘南SEPTEMBER」はEagles系ワルツで、“あの頃を生きた街”湘南を回顧する歌詞になってます。M-10PARADISE」はソウル・ディスコ・ヒップホップ的な方向を向いていますが、ちょっとこれも肩に力が入り過ぎてるかなという印象を受けます。M-11「私の世紀末カルテ」は桑田さんソロ『孤独の太陽』の続編のようなアコギ弾き語りで延々病んでる風な中年男性の独白が歌われます。M-12SAUDADE」は小倉博和さんのガット・ギターをフィーチャーしたボッサ風AOR歌謡といったところでしょうか。抑えた桑田さんの歌含め、個人的にはこのアルバム中でも出色の出来だと思います。M-13GIMME SOME LOVIN’」はSMがテーマのGSもの。M-14SEA SIDE WOMAN BLUES」はマヒナスターズ風の和製コーラスもので、ガット・ギターとラップ・スティールは小倉さん、そして、左チャンネルのウクレレはクレジットはありませんが、先のサザン欠席中にウクレレ愛好家に変貌を遂げた関口さんによる演奏のようです。M-15(The Return of) 01MESSENGER」はシングル「01MESSENGER」のアルバム用リミックス(角谷仁宣さんと林憲一さんがクレジットされています)で、ドラムンベースに変貌しましたM-16「素敵な夢を叶えましょう」は『人気者で行こう』『Young Love』と同じく、桑田さんとオーケストラの組み合わせでの締めくくりです。どんな立場でも、“夢を叶える”ということは、なかなか難しいものです。




2015年7月4日土曜日

The Realistics「Someone Oughta Write A Song About You Baby」「The Magic You Do」「So Sad」and others [Ken Gold Songbook]

(2019/12 文末にReal Thingのバージョンについて取り急ぎの追記をしました)

Realisticsといえば「Puttin' It Down」で既出のヴォーカルグループですが、77年になりGoldがReal ThingやDelegationを手がけヒットを生む中で、再び楽曲提供とプロデュースを担当することになります。77年に英エピックから今回紹介のシングルが3枚、計5曲がリリースされますが、アルバムのリリースはありませんでした。

77年4月にリリースされたのが「Someone Oughta Write A Song About You Baby」c/w 「Unchain Me」です。両面ともバリトンのリードをフィーチャーし、A面がアップ・B面がスローの組み合わせです。この「Someone Oughta Write A Song About You Baby」、特筆すべきはリズム・パターンです。日本ではシカゴ・ソウル(にニューオーリンズ的なフレーバーを組み合わせた?)の影響でこのもう少し後から何曲か出現することになるのですが、影響元が同じかどうかはともかく、イギリスと日本で同時期に同じようなことにトライする似たような人がいたというのは非常に面白いものです。ブラス・ストリングスアレンジとしてLynton Naiffがクレジットされています。後にGoldはDelegationにもカバーさせ『The Promise Of Love』に収録したのは前述の通りですが、Delegationの方が若干演奏がタイトになっています。また、79年4月にはGoldプロデュースでSpookeyというマンチェスターのグループがシングル・リリースしています(「Someone Oughta' Write A Song About You Baby」c/w 「Times」、どちらもGold-Denne作品です)。このバージョンはドラムが四つ打ち、ブラスも賑やかで、また違ったポップな印象を受けます。

7月には「Love Vibrations」c/w「The Magic That You Do」がリリースされます。このB面扱いの「The Magic That You Do」、リードのファルセット、ギターのカッティング、シンベ、浮遊感のあるエコーなどの組み合わせの、洗練されたかなり好みな曲です。このシングルにはProduced by Ken Goldの記載しかありませんが、後述のシングルにはアレンジャーとしてLynton Naiffがクレジットされています。

10月に最後のシングルとしてリリースされたのが「So Sad」で、B面は前作同様「The Magic That You Do」が収録されています(時間・予算が無かった?)。「So Sad」は語りから始まるスウィート・ソウルもので、こちらもファルセットのリードが映えるメロウなGoldらいしい曲と言えるでしょう。アレンジはB面同様Lynton Naiff。Goldのスウィート・ソウルものでの最高傑作は翌年、Delegationのシングルとしてリリースされることになります。

残念ながらこの3枚のシングルを持ってGoldはRealisticsと離れてしまいますが、アルバムなども残していってほしかったですね。


(2019/12 追記)
「Someone Oughta Write A Song」は、もともとReal Thingが「Can't Get By Without You」の後にGold-Denne作品の第三弾として76年8月に録音していたものの、自作曲志向があったReal Thing側の意向でお蔵入りになってしまった楽曲だったようです(リズムトラックはRealsiticsのものとほぼ同じに聞こえます)。2017年にKen Goldがマスターのコピーを発掘し、この度、リリースの運びとなったとのこと。
こちらのオフィシャルサイトの記事に経緯があります。
http://therealthingofficial.com/missing-for-43-years-the-real-thing-release-a-new-single-from-1976/