2017年10月30日月曜日

Delegation「Building Our Love」「Stay A Little Longer」「What Have I Got To Do」and others [Ken Gold Songbook]

83年のシングル「It's Your Turn」以降のDelegationの動きはこちらの記事で書いた通りで、Ken Goldのもとを離れ、ダンス・ミュージックを扱うドイツのレーベル、ZYXからいくらかリリースを続けていました。80年代末は過去作のリメイクのリリースが多くなっていましたが、90年代に入るとRicky BaileyはKen Goldと再びタッグを組み、2人はEuro-Jam Productionsを設立します。93年には久々のシングルとして歌ものハウスに接近、Andy Williamsの作・プロデュースの「I Wanna Be The Winner」をリリースします。さらに2人は録音を続け、96年?にリリースされたアルバムが『Encore』でした。現時点でのDelegationのレイテスト・オリジナル・アルバムになります。


Euro-Jam Productions原盤のためか、曲ごとのプロデュースのクレジットとは別に、エグゼクティブ・プロデューサーとしてGoldとBaileyの2人がクレジットされています。アルバム全体としては主にハウスとニュージャックスウィング/R&Bネタの二本柱に支えられており、ニュージャックスウィング/R&B側の楽曲で作曲・プロデュースにGoldのクレジットがあります。Goldが作家としてクレジットされているのは全10曲中5曲です。

「Building Our Love」「Stay A Little Longer」「What Have I Got To Do」の3曲はGoldとKuk Harrell(Thaddis L. Harrell)の共作・共同プロデュースです。Harrellは2000年代以降、作家やプロデューサー、また「ヴォーカル・プロデューサー」として現在に至るまで数々の全米ヒット曲に関わることになりますが、当時はこんなところでKen Goldと共演していたのでした。「Building Our Love」「What Have I Got To Do」はGoldとしては93年のAnthony T. Gibsonに続いてのモロなニュージャックスウィングもので、Goldの中では90年代半ばでもブームが続いていたのがわかります。個人的にはスローなR&B「Stay A Little Longer」や、「What Have I Got To Do」のどこか切ない、メロウな雰囲気がとても気に入っています。

また、その他のR&Bものでは「Rumours」(意図的ではないかもしれませんが、Delegationの幻のグループ名ですね)がプロデュースはGold・Harrellコンビ、作曲はGold・Harrellに加えDamone Arnoldがクレジットされています。グラウンドビートの「I Won't Give Up」はHarrellは関わらず、GoldとDanny Canaanの共作、プロデュースはCanaanが単独でクレジットされています。

アルバムからは「I Wanna Be The Winner」以外にはAndy Williamsプロデュースのハウスものである「Call Me」、「Can't Let You Go」がそれぞれイタリア、ドイツで12インチと5インチCDでカットされています。

そもそもこの『Encore』がイギリスでリリースされているのかどうか不明で(私の手元にあるのはドイツ盤で、Discogsにもイタリア盤とインドネシア盤しか掲載がありません…)、同年?イタリアでは同じタイトルでベスト盤も出ているという混乱ぶりです。Delegation通史としても知名度はかなり低い作品ですが、これはこれで好きな作品です。今年はState〜Ariola〜CBS期の通史としてベスト盤が組まれていますが、この時期の作品も加えてもらえる日が来ることを、ひっそり祈っています。