2015年12月30日水曜日

大滝詠一『NIAGARA MOON』のバージョン違い


大瀧詠一さんの命日ということで、今年40周年盤が出ました『NIAGARA MOON』収録曲のバージョン違いをまとめてみました。そもそもこのアルバムはバックトラック以外の別ミックスというのがアルバム単位では大瀧さん存命中はリリースされませんでしたので、バージョン違いも他の作品に比べると少なく、この手の記事を書いてもあまり面白くなかったのです。が、95年3月作業(95年リマスター盤リリースの前後でこんなことやってたんですね!ということは元々出すつもりが無かったということでしょうか?)のリミックス・マスターが今年40周年盤として世に出ました。95年5月にbayfmで全曲未発表のリミックス・バージョンが流れた、という記録がありますが、このミックスでしょうか?結構意図的に色々変えてあり、ヴォーカルの強引な差し替えなど、全くの別物になっています。40周年盤には他にもデモ・ヴォーカルが入ったラフ・ミックスもかなり収録されています(この構成の40周年盤にはいろいろ思うところもありますが…)。個人的には『SONGS』同様、最初のミックスが一番しっくりきますが、そんな名盤『NIAGARA MOON』のバージョン違いです。


●ナイアガラ・ムーン NIAGARA MOON
  ナイアガラ・ムーンがまた輝けば WHEN MY NIAGARA MOON TURNS TO GOLD AGAIN

◆Version A … 「ナイアガラ・ムーン」アルバム冒頭のイントロダクション、滝の音入り
NIAGARA MOON 1975
NIAGARA MOON 1976
NIAGARA MOON 1981
NIAGARA MOON in NIAGARA VOX
NIAGARA MOON 1986
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA MOON 1995
NIAGARA MOON 2005
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 2011
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version B … 「ナイアガラ・ムーンがまた輝けば」アルバム最後のフル・バージョン、滝の音入り
NIAGARA MOON 1975
NIAGARA MOON 1976
NIAGARA MOON 1981
NIAGARA MOON in NIAGARA VOX
NIAGARA MOON 1986
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA MOON 1995
NIAGARA MOON 2005
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 2011
NIAGARA MOON 2015 LP
WHEN MY NIAGARA MOON TURNS TO GOLD AGAIN(Single) in NIAGARA x SHIPS COLLAVOX

◆Version C … Phillesのステレオ・ミックス定位を意識した1978年のリミックス
DEBUT
MORE NIAGARA FALL STARS in NIAGARA VOX
DEBUT in NIAGARA BLACK VOX
NIAGARA MOON 1995
DEBUT in NIAGARA CD BOOK I 2011

◆Version D … 1995年にミックスされたバックトラック、滝の音入り(最後に録音担当の声も)
NIAGARA MOON 2005

◆Version E … 2005年の映画「イン・ザ・プール」用に作られた、ドラムレスのリミックス
BEST ALWAYS

◆Version F … Version Eのカラオケ
BEST ALWAYS TRACKS

◆Version G … 1995年に作られたリミックス、定位等はVersion Dに近い
NIAGARA MOON 2015 CD
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version H … 1977年6月20日渋谷公会堂でのライブ・テイク
NIAGARA MOON 2015 CD

◆Version I … ストリングスのみのデモ・ミックス
NIAGARA MOON 2015 CD

◆Version J … ストリングスのみのデモ・ミックスで、Version Iと違いフェイド・アウトしない
NIAGARA MOON 2015 CD


●三文ソング

◆Version A
NIAGARA MOON 1975
NIAGARA MOON 1976
NIAGARA MOON 1981
NIAGARA MOON in NIAGARA VOX
NIAGARA MOON 1986
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA MOON 1995
NIAGARA MOON 2005
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 2011
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version B … 1995年にミックスされた、レコーディング当初に林立夫・細野晴臣・鈴木茂・佐藤博によって演奏されたトラック
NIAGARA MOON 2005

◆Version C … 1995年にミックスされた、Version Aのバックトラック
NIAGARA MOON 2005

◆Version D … 1995年に作られたリミックス、定位等はVersion Cに近く、終盤サッチモによる「三文」がダブルでなくシングル・ヴォーカル
NIAGARA MOON 2015 CD
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version E … 1977年6月20日渋谷公会堂でのライブ・テイク
NIAGARA MOON 2015 CD

◆Version F … 仮歌入りのデモ・ミックス
NIAGARA MOON 2015 CD


●論寒牛男 LONESOME COWBOY

◆Version A
NIAGARA MOON 1975
NIAGARA MOON 1976
NIAGARA MOON 1981
NIAGARA MOON in NIAGARA VOX
NIAGARA MOON 1986
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA MOON 1995
NIAGARA MOON 2005
論寒牛男(Single) in NIAGARA×WRANGLER TシャツBOX
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 2011
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version B … 1995年にミックスされた、コーダのギターの使用テイクが異なるバックトラック
NIAGARA MOON 2005

◆Version C … 1995年に作られたリミックス、定位等はVersion Bに近く、間奏のリード・ギターが別テイク、コーダのギターはVersion Bと同じ
NIAGARA MOON 2015 CD
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version D … 1977年6月20日渋谷公会堂でのライブ・テイク
NIAGARA MOON 2015 CD

◆Version E … 仮歌入りのデモ・ミックス
NIAGARA MOON 2015 CD


●ロックン・ロール・マーチ ROCK'N'ROLL MARCH

◆Version A
NIAGARA MOON 1975
NIAGARA MOON 1976
NIAGARA MOON 1981
NIAGARA MOON in NIAGARA VOX
NIAGARA MOON 1986
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA MOON 1995
NIAGARA MOON 2005
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 2011
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version B … 1995年にミックスされたバックトラック、Version Aと別の初期テイクが冒頭に入っている
NIAGARA MOON 2005

◆Version C … 1995年に作られたリミックス、定位等はVersion Dに近く、終盤でフェイドアウトせず一番最後に「ナイアガラ・マーチ」のヴォーカルが入る
NIAGARA MOON 2015 CD
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version D … 仮歌入りのデモ・ミックス
NIAGARA MOON 2015 CD


●ハンド・クラッピング・ルンバ HAND CLAPPING RHUMBA

◆Version A
NIAGARA MOON 1975
NIAGARA MOON 1976
NIAGARA MOON 1981
NIAGARA MOON in NIAGARA VOX
NIAGARA MOON 1986
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA MOON 1995
NIAGARA MOON 2005
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 2011
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version B … 1976年2月20日に『NIAGARA TRIANGLE VOL.1』プロモーション用に制作された映像用のスタジオ・ライブ
NIAGARA MOON 1995

◆Version C … 1995年にミックスされたバックトラック
NIAGARA MOON 2005

◆Version D … 1995年に作られたリミックス、定位等はVersion Cに近く、フェイドアウトせず終わる
NIAGARA MOON 2015 CD
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version E … 仮歌入りのデモ・ミックス
NIAGARA MOON 2015 CD


●恋はメレンゲ BLAME IT ON THE MERENGUES

◆Version A
NIAGARA MOON 1975
NIAGARA MOON 1976
NIAGARA MOON 1981
NIAGARA MOON in NIAGARA VOX
NIAGARA MOON 1986
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA MOON 1995
NIAGARA MOON 2005
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 2011
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version B … 1976年2月20日に『NIAGARA TRIANGLE VOL.1』プロモーション用に制作された映像用のスタジオ・ライブ
MORE MORE NIAGARA FALL STARS in NIAGARA VOX
NIAGARA FALL STARS '81 REMIX SPECIAL in NIAGARA CD BOOK II

◆Version C … エコーが少なくタイトな、Version Bの別ミックス
NIAGARA MOON 1995

◆Version D … 1995年にミックスされたバックトラック
NIAGARA MOON 2005

◆Version E … 1995年に作られたリミックス、定位等はVersion Dに近く、Version Aでカットアウトされた後の演奏も入っているのもVersion Dと同じ
NIAGARA MOON 2015 CD
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version F … 仮歌入りのデモ・ミックス
NIAGARA MOON 2015 CD



●福生ストラット(Part Ⅱ) FUSSA STRUT Part II

◆Version A
NIAGARA MOON 1975
NIAGARA MOON 1976
NIAGARA MOON 1981
NIAGARA MOON in NIAGARA VOX
NIAGARA MOON 1986
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA MOON 1995
NIAGARA MOON 2005
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 2011
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version B … 1978年のモノ・ミックス
DEBUT
DEBUT in NIAGARA BLACK VOX
DEBUT in NIAGARA CD BOOK I 2011

◆Version C … 1976年2月20日に『NIAGARA TRIANGLE VOL.1』プロモーション用に制作された映像用のスタジオ・ライブ
MORE MORE NIAGARA FALL STARS in NIAGARA VOX
NIAGARA FALL STARS '81 REMIX SPECIAL in NIAGARA CD BOOK II

◆Version D … エコーが少なくタイトな、Version Cの別ミックス
NIAGARA MOON 1995

◆Version E … 1995年にミックスされたバックトラック
NIAGARA MOON 2005

◆Version F … 1995年に作られたリミックス、定位等はVersion Cに近く、冒頭の笑い声のテープ回転ムラが無い
NIAGARA MOON 2015 CD
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version G … 1977年6月20日渋谷公会堂でのライブ・テイク
NIAGARA MOON 2015 CD

◆Version H … 仮歌入りのデモ・ミックス
NIAGARA MOON 2015 CD


●シャックリ・ママさん

◆Version A
NIAGARA MOON 1975
NIAGARA MOON 1976
NIAGARA MOON 1981
NIAGARA MOON in NIAGARA VOX
NIAGARA MOON 1986
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA MOON 1995
NIAGARA MOON 2005
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 2011
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version B … 1981年6月1日新宿厚生年金会館でのライブ・テイク、「Sheila」「Love's Made A Fool For You」とのメドレー
DEBUT SPECIAL
DEBUT SPECIAL in NIAGARA BLACK BOOK

◆Version C … 1995年にミックスされたバックトラック
NIAGARA MOON 2005

◆Version D … 1995年に作られたリミックス、定位等はVersion Cに近い
NIAGARA MOON 2015 CD
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version E … 1977年6月20日渋谷公会堂でのライブ・テイク
NIAGARA MOON 2015 CD

◆Version F … 仮歌入りのデモ・ミックス
NIAGARA MOON 2015 CD


●楽しい夜更し

◆Version A
NIAGARA MOON 1975
NIAGARA MOON 1976
NIAGARA MOON 1981
NIAGARA MOON in NIAGARA VOX
NIAGARA MOON 1986
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA MOON 1995
NIAGARA MOON 2005
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 2011
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version B … 1978年のモノ・ミックス
DEBUT
DEBUT in NIAGARA BLACK VOX
DEBUT in NIAGARA CD BOOK I 2011

◆Version C … 1976年2月20日に『NIAGARA TRIANGLE VOL.1』プロモーション用に制作された映像用のスタジオ・ライブ
NIAGARA MOON 1995

◆Version D … 1995年にミックスされたバックトラック
NIAGARA MOON 2005

◆Version E … 1995年に作られたリミックス、定位等はVersion Cに近く、数カ所ヴォーカルが歌詞の違う別テイクに差し代わっている
NIAGARA MOON 2015 CD
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version G … 1977年6月20日渋谷公会堂でのライブ・テイク
NIAGARA MOON 2015 CD

◆Version H … リズム・トラックのみのデモ・ミックス
NIAGARA MOON 2015 CD


●いつも夢中(君に夢中)

◆Version A
NIAGARA MOON 1975
NIAGARA MOON 1976
NIAGARA MOON 1981
NIAGARA MOON in NIAGARA VOX
NIAGARA MOON 1986
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA MOON 1995
NIAGARA MOON 2005
NIAGARA MOON in NIAGARA CD BOOK I 2011
NIAGARA MOON 2015 LP

◆Version B … 1995年にミックスされた録音風景
NIAGARA MOON 2005

◆Version C … 1995年に作られたリミックス、Version Aの一番最後に右から聴こえる「夢中」はカットされている
NIAGARA MOON 2015 CD
NIAGARA MOON 2015 LP


●CIDER '73 '74 '75
※こちらはややこしくなるのでCM SPECIALについて書くことがあればその際にでもまとめて…
→書きました。 『NIAGARA CM SPECIAL』のバージョン違い

2015年11月29日日曜日

1979年のサザンオールスターズ


スージー鈴木さん著「1979年の歌謡曲」を読みました。タイトルの通り1979年の歌謡曲とニューミュージックについて書かれた本で、あまりマニア向けに偏ることなく読み易い仕上がりになっており、一気に読み進めてしまいました。

スージーさんの一押しはゴダイゴで、これは非常に良くわかります。ミッキー吉野さんの垢抜けたサウンド、この辺りの日本コロムビアのサトリルものはどれも昔から非常に好みで…こういったサウンドやニューミュージックが歌謡曲と並列でチャートを上っていたのが79年でした。

そんな中、サザンも大きな扱いとなっています。ゴダイゴもテレビを効果的に使っていたと思いますが、サザンも事務所の方針で78年のデビューから戦略的に、というかとにかく存在を認知させるためにテレビに出まくっており、79年までの全てのシングルをヒットさせることに繋げています。

そこで、今回は完全に「1979年の歌謡曲」に便乗し、1979年のサザンについて、振り返ってみたいと思います。


●1979.1. TBS「ザ・ベストテン」出演。「気分しだいで責めないで」演奏の他、中州産業大学タモリ教授のバックで「勝手にシンドバッド」を演奏。

●1.21. 2ndアルバムのレコーディングスタート。テレビ出演や雑誌取材等を並行して行ないながら3月11日には終わるという、今のサザンからは考えられない強行スケジュールでした。

●2. 日清焼そばUFOのCMに出演。コマソンもサザンが担当しました。6人全員がスーパーマンのコスプレで出演という、当時の扱いがよくわかるCMでした。

●2. 「勝手にシンドブック」ベップ出版より発売。

●2.20. FM東京「音楽夜話」10周年記念公演(日本武道館)に出演、翌月リリースを控えた「いとしのエリー」初披露。既存路線の「思い過ごしも恋のうち」とどちらをシングルにするかでモメたようですが、メンバーの意向も尊重され「いとしのエリー」に決まりました。それまでのイメージを一新するスタイルの新曲に、観客は反応に戸惑い、サザンメンバーは落ち込むことになります。この後も暫くは披露の度に野次が飛び交ったそうですね。

●3.20. 全国ツアー「春五十番コンサート」スタート。6月6日まで全国50ヶ所のツアーでした。

●3.25. シングル「いとしのエリー」c/w「アブダ・カ・ダブラ(TYPE 3)」リリース。A面はビートルズ的なものがベースですが、全体の印象は桑田さんを始めとしたメンバーのブラック・ミュージック的な志向が滲み出る出来となっています。B面は日清焼そばUFOのコマソンを改作したものです。オリコン初登場43位と、地味な初動で、最高位の2位を獲得するのは6月のことでした。

●4.5. アルバム『10ナンバーズ・からっと』リリース。前述の通りほとんど時間が取れない制作状況で、入稿までに歌詞が間に合わず歌詞カードは一部草案が載ったり一曲まるまる記号で埋められたり、ジャケットの桑田さんは撮影現場でディレクターと喧嘩しふて腐れた顔で写っていたり、とにかく混乱の記憶しかなかったようです。80年代にはよく本作を桑田さん自身がこき下ろしていらっしゃいましたが、とは言えBoz Scaggs・Eric Clapton・Little Feat・Paul McCartney・John Lennonなどなど、当時のサザンの志向がはっきり出ていてこれはこれで一筆書きの魅力に溢れた作品かと思います。

●4. ニッポン放送「オールナイトニッポン」木曜第一部パーソナリティが桑田さんに。「勝手にシンドバッド」から出版はバーニングパブリシャーズとパシフィック音楽出版の共同出版でしたが、そういった流れからのスタートかもしれません。

●5. アルバム『ニュー・ミュージック・ベスト・ヒット』リリース。カセットのみの、invitationのレーベル・コンピレーションですが、冒頭「いとしのエリー」「気分しだいで責めないで」「勝手にシンドバッド」とサザンの3曲からスタートしています。サザン以外では伊東ゆかりさんや高橋真梨子さん、つのだ・ひろさんや元ルパンⅢの佐藤三樹夫さん、SHOGUNの前身のワン・ライン・バンド等、多彩な顔ぶれです。

●7.25. シングル「思い過ごしも恋のうち」c/w「ブルースへようこそ」リリース。「いとしのエリー」のヒット醒めやらぬうちに次のシングルを、ということでリリースされたと思われます。新曲を作る余裕はとても無かったようですが、その代わりA面は新田一郎先生のトランペットを追加しリミックスされ、アルバムと比べかなり華やかな印象に変わりました。B面はアルバムと同じバージョンです。オリコン最高7位を記録しました。

●7. アルバム『オリジナル・カラオケ ベスト・12』リリース。カセットのみのリリース第一弾ですが、なんとテレビ用に予備として作られていたカラオケを集めたものでした。ジャケットの桑田さんの仮面ライダーポーズや、燦然と輝く「プロ用メロナシ」の文字がたまりません。

●8.5. 江ノ島ヨットハーバーでの「JAPAN JAM I」に出演。廃人時代のBrian Wilson含めたBeach Boysも出演しておりましたが、この頃の桑田さんのBeach Boysへの認識はまだ数あるオールディーズバンドの一つ、という程度のものだったようです。

●8. 「ニューミュージック・マガジン」9月号に桑田佳祐本人のインタビューが掲載(「芸能界の中でロックし続けるサザンオールスターズ」)。

●9.22. 全国ツアー「Further Up On The Road」スタート。12月12日まで全国42ヶ所のツアーでした。

●10.25. シングル「C調言葉に御用心」c/w「I AM A PANTY (Yes, I am)」リリース。A面は内省的なミディアムで、新機軸でした。アレンジもバンドとして非常に良く練れています。松田さんのハモりも色気十分。B面はLittle Featサウンドに下ネタ歌詞の組み合わせです。オリコン最高2位を記録しました。

●11.25. アルバム『SOLD OUT!! ベスト・オブ・サザンオールスターズ』リリース。カセットのみではありますが、初のベスト盤となります。最新ヒット「C調言葉に御用心」や既存シングル4曲を含む、初期の傑作選です。写真提供:月刊明星のクレジットが泣けます。

●11. アルバム『ヒット・スタジオ No.1』リリース。invitationのコンピレーション・カセットです。こちらにも最新ヒット「C調言葉に御用心」をメインに「いとしのエリー」「思い過ごしも恋のうち」が、伊東ゆかりさん・高橋真梨子さん、新たに松崎しげるさん・岡林信康さんらの楽曲と並んで収録されました。

●12. ナビスコチップスターCMに出演。コマソンではなく「C調言葉に御用心」がタイアップで使われました。


上記に加え、とにかくこの当時は事務所の方針でテレビ仕事をかなり受けていたようです。年末に桑田さんが大里社長(当時)に直談判し、翌80年前半はテレビ出演やコンサートは控えることになるのですが…。とにかく仕事量に体がついていかず、メンバーは皆かなり消耗していたそうですね。

とは言うものの、事務所がアミューズでなかったらおそらくサザンは全く違う道を歩んでいたと思います。そもそもサザンはプロデューサーも事務所もなかなか決まらず、デビューまでの道のりが険しかったようです。プロデュースは某キーボード・プレイヤー(佐藤博さん?)に断られたということですが、結果的に特にプロデューサーを立てず、ほとんどセルフ・プロデュース状態でスタートしたのは大正解でした(ディレクターの高垣さんがプロデューサーとしてクレジットされました)。これがスージー鈴木さんの好きな初期サザンのサウンド・メイキング方針を決定づけるわけですから。また、事務所も宇崎竜童さんのところに断られ、途方に暮れていた高垣ディレクターがブラスのアレンジとダビングを依頼したのがアミューズ所属第一号のホーン・スペクトラムです。大里さんがレコーディングに立ち会ったのが運命を決定づけました。高垣さん側は「別れ話は最後に」をファースト・シングルにしようとしていたようですが、おそらく大里さんの意向で「勝手にシンドバッド」に決まったと思われます。「勝手にシンドバッド」に斉藤ノブさんを起用したり、ビクターとしてはやはりティン・パン〜ナイアガラ系を意識した雰囲気で売り出そうとしていたのでしょうか。

そして、話が戻りますが、1979年のサザンオールスターズという意味ではテレビでの演奏はかなり重要かと思います。「いとしのエリー」「思い過ごしも恋のうち」「C調言葉に御用心」はどれもこの年かなりテレビで演奏されています。特に注目は、出演回によってはストリングスやブラスがきちんと入っている「夜のヒットスタジオ」での演奏です。疲れたメンバーの荒い演奏のみならず、荒い上にバランスもレコードとは遥かに異なるコーラスがとにかく味わい深く、当時のバンドの記録としても評価に値します。「思い過ごしも恋のうち」はレコーディング後に何度も演奏するうちにサビのリズムパターンが変えられ、シングル・リリース時のテレビ出演でもレコードとは違うリズムパターンで演奏されましたが、こちらの方が疾走感があり好みです。こういったテレビ出演をまとめた映像作品が昨今はよくリリースされておりますが、サザンについては様々な事情から、難しいでしょうね…。それでも、何とかまとまった形で、見てみたいものです。

2015年11月28日土曜日

Pointer Sisters「Take My Heart, Take My Soul」[Ken Gold Songbook]


Pointer Sistersはカリフォルニアはオークランド出身の姉妹ヴォーカル・グループです。71年にAtlanticからレコード・デビューしていますので、81年の時点で既にデビュー10周年を迎えていたことになります。この10周年の年の6月にリリースされたアルバム『Black & White』に、Gold-Denne作品である「Take My Heart, Take My Soul」が収録されています。

60年代のファンキーなガール・グループ風の一曲で、アレンジもそれを意識しつつも同時代的に、ポップでアッパーな雰囲気でまとめています(プロデュースはRichard Perryでした)。Goldにしてはコンテンポラリーものから少し距離を置いた印象がありますが、同じく6月にGoldプロデュースでTight Fitというグループの「Back To The 60's」というシングルがリリースされています。これは81年春にアメリカで大ヒットしたStars On 45のイギリスでの便乗企画で、でっち上げグループであるTight Fit60年代のヒット曲をひたすらメドレーで繋いで歌うという内容でした(WikipediaによるとGoldが企画を思いついたことになっていますが、真相のほどはよくわかりません)。この作業と並行しての楽曲提供となったと思われ、このタイミングからGold60年代回帰シリーズが(短期間ですが)始まります。

ちなみに、「Back To The 60's」のB面はGold-Denne作の「Coco-Nite」というインストもので、この適当さがまた60年代前半に一時代を築いた某大物プロデューサーを想起させます。

また、このTake My Heart, Take My Soul」を最後にGold-Denneコンビは古巣のScreen Gems EMI Musicを離れたようです。Coco-Nite」はZomba Music Publishersがクレジットされ、これ以降、Gold-Denne作品は基本的にZomba Musicが出版権を保有することになったようです。


2015年11月1日日曜日

Delegation「In Love's Time」「In The Night」and others [Ken Gold Songbook]


『Eau De Vie』のリリース後,約1年の間を置いて80年12月にイギリスでリリースされたのがDelegationの3枚目のアルバム、『Delegation』です。

前作に引き続きプロデュースはKen Gold、ギターにRobert Ahwai、キーボードやストリングス/ブラス・アレンジにLynton Naiffを迎え、良くも悪くも『Eau De Vie』の続編といった感じに仕上がっています。また、Real Thingの『Step Into Our World』に参加し、この後Billy Ocean『Nights』をプロデュースすることになるNigel Matinezがドラムに起用されています。

A-1 Feels So Good (Loving You So Bad)
A-2 Dance, Prance, Boogie [*Bailey-Patterson-Dunbar]
A-3 In Love's Time
A-4 Singing
A-5 12th House [*Mansfield]
B-1 In The Night
B-2 Turn On To City Life [Gold-Denne-Naiff]
B-3 Free To Be Me [*Patterson]
B-4 I Wantcha Back
B-5 Gonna Keep My Eyes On You[*Bailey-Patterson]

今回もGold-Denneコンビ作の楽曲を軸に、メンバーの楽曲を数曲ちりばめた構成ですが、珍しく、そしてなぜかNew MusikのTony Mansfieldのペンによる曲が1曲収録されています。

「In Love's Time」はMaurice White風というか何と言うか、リードをとるBruce DunbarのファルセットはまるでPhilip Baileyのように聴こえてしまいますね。「In The Night」の他、「Feels So Good」「I Wantcha Back」なども前作から続く、Robert Ahwaiのカッティングが炸裂する、Delegationの定番と言える路線です。「Singing」はSide Effectのあの曲をカリプソ的な味付けで料理したら…というような意図でしょうか。「Turn On To City Life」は軽めですがブラスの映える、ポップな仕上がりです。
また、メンバー作の曲のうち、「Free To Be Me」はRay Pattersonの単独作、リードをとるのもPattersonですが、Delegationにしてはブルージーで、異色作です(この曲だけ浮いているとも…)。

アルバム・リリース後にシングルとして「12th House」/「Singing」が両A面の7インチ・12インチでリリースされていますが、アルバム・シングル共にイギリスではチャート・インしませんでした。7インチは両面ともシングル・エディット、「Singing」は12インチではロング・ミックスで収録されています。一方、アメリカでは当アルバムは『Delegation II』のタイトルでリリースされていますが、こちらもチャート入りを逃します。しかし、「In Love's Time」がシングル・カットされ、R&B54位を記録しています。


2015年10月18日日曜日

Billy Ocean 「Are You Ready」「Whatever Turns You On」「Taking Chances」「Another Day Won't Matter」and others [Ken Gold Songbook]

Billy Oceanは、トリニダード出身・ロンドン育ち、75年(本名Les Charles名義では71年デビューですが…)のデビュー以降、イギリスやヨーロッパ諸国で何曲ものシングル・ヒットを放っていたシンガーでした。76年の「Love Really Hurts Without You」は全米22位、「L. O. D. (Love On Deliverly)」は106位・R&B55位のヒットを記録しています。その後ややセールスが落ち着いてきたことで、それまでの60年代モータウン等の影響が濃厚な、当時としてもややオールド・ファッションな路線から、よりコンテンポラリーなものにシフトしたシングルが79年9月リリースの「American Hearts」c/w「My Love」でした(12インチも作られ、こちらはA面は別ミックスです)。両面ともプロデュースがKen Gold、ストリングス・ブラスアレンジをLynton Naiffが担当しています。この流れで11月にはGold-Oceanコンビ作の「Are You Ready」c/w「Maybe Tonight」が同じくGoldプロデュース、Lynton Naiffのストリングス・ブラスアレンジで7インチ・12インチ(A面別ミックス)の2種リリースされます。その流れで、80年初頭にリリースされたのがアルバム『City Limit』でした。


A-1 Stay The Night
A-2 What You Doing To Me
A-3 Who's Gonna Rock You
A-4 Maybe Tonight
A-5 City Limit [*Ocean-McKay]
B-1 Are You Ready
B-2 Whatever Turns You On
B-3 Taking Chances
B-4 American Hearts [*Bugatti-Musker]

2曲を除きOcean-Goldコンビ作(シングルと順番がひっくり返りました)、プロデュースはKen Gold(A-5のみDave McKay)、ストリングス・ブラスアレンジはLynton Naiffという布陣で制作されました。

「Stey The Night」もそうかもしれませんが、「Are You Ready」はあからさまにMichael Jackson(にKC & The Sunshine Band を合わせたような…)的なサウンドで、これらを後にMichael実姉のLa Toya Jacksonがカバーするのですから世の中わからないものです。「Whatever Turns You On」も軽めですがメロウなミディアムで、これこそいかにもKen Goldらしい一曲と言えるでしょう。「Taking Chances」は隙間多めの演奏にソウルフルなBillyのヴォーカルが光るバラードです。また、「Maybe Tonight」などはAOR風というか、あまり黒っぽくありませんがこれまたメロウなバラードです。「Who's Gonna Rock You」は後にカバーされヒットを記録することになりますが、さもありなんと言うべきポップな一曲です。

残念ながら『City Limit』はチャート・インを逃します。80年4月には「Stay The Night」c/w「What You Doing To Me」が7インチ・12インチ(A面は別ミックス)でシングル・カットされ、イギリスではチャート・インを逃しますが、フランスやドイツではヒットを記録しています。

その後、初夏には元Nolan SistersことNolansが「Who's Gonna Rock You」をEpic2作目のアルバム『Making Waves』でカバー、10月にはシングルとしてリリースし、イギリスで12位のヒットを記録します。また、同年6月にLa Toya Jacksonがファースト・ソロ『La Toya Jackson』で「Are You Ready」をカバー。9月にはイギリスで「Stay The Night」をシングル・リリース、81年3月リリースの『My Special Love』に収録されました。

81年4月、新たにリリースされたBilly Oceanのシングル「Nights (Feel Like Getting Down)」c/w「Everlasting Love」はプロデュースがNigel Martinezで、作曲もMartinez-Oceanコンビによるものです。Martinezは78年にStateからソロ・ファースト・アルバムをリリースする傍らReal Thing『Step Into Our World』でドラマーとして参加しており、81年にはDelegation『Delegation』にもドラムで参加する等、Goldとも関わりのある人物です。いわゆるアーベインでファンキーなこのシングルがOceanの作品としては久々にアメリカでリリースされると全米チャート103位・R&Bチャート7位まで上昇します。ここでGTO(の親会社のEpic)はすぐにアメリカ・マーケット向けのアルバムを出すよう要請、10日前後で急いでレコーディングされたのが『Nights(Feel Like Getting Down)』です。


A-1 Are You Ready
A-2 Don't Say Stop
A-3 Whatever Turns You On
A-4 Another Day Won't Matter
B-1 Nights(Feel Like Getting Down) [*Ocean-Martinez]
B-2 Who's Gonna Rock You
B-3 Stay The Night
B-4 Everlasting Love [*Ocean-Martinez-Linton]
B-5 Taking Chances

全曲プロデュースはNigel Martinez、ただし「Stay The Night」のみKen Goldのクレジットで、これは『City Limit』と同じテイク/ミックス(ただしフェイド・アウトが早い)を持ってきているからです(実は「Taking Chances」も『City Limit』と同じなんですがそれは…)。しかし、イギリスでの先行シングルとなった「Nights」(こちらはアルバム・エディット)・「Everlasting Love」以外は、リレコーディング3曲や再収録2曲のみならず純粋な新曲2曲もOcean-Gold作の楽曲で、結果的に作家Ken Goldの印象は強く残るアルバムとなっています。

「Are You Ready」「Whatever Turns You On」「Who's Gonna Rock You」はNigel Martinezのプロデュースで新たに録音し直され、よりシンプルでタイトな、いわゆるブラコン風スタイルに生まれ変わりました。新曲の「Don't Say Stop」「Another Day Won't Matter」などはどことなくRod TempertonミーツQuincy Jones的な雰囲気も感じられますが、全体としては『City Limit』ほど幕の内的な雰囲気ではなく、サウンドの統一感はこちらの方がとれているかと思います。『Nights』はイギリスではチャート・インしませんでしたが、アメリカでは152位、R&B27位を記録しました。「Another Day Won't Matter」はアメリカでショート・エディットでシングル・カットされ、R&B66位を記録しました。

同81年には「Whatever Turns You On」がDells(プロデュースはEugene Record)によってカバーされ、収録アルバムのタイトルも『Whatever Turns You On』としてリリースされました。さらには翌82年Ray, Goodman & Brownによって「Taking Chances」がカバーされ、アルバム『Open Up』に収録されます。このようにリアルタイムのカバー状況からも、『City Limits』『Nights』の楽曲がその手の筋にも評価されていたということがわかります。

なお、2015年に『City Limit』がFunkytowngroovesからCD化されておりますが、惜しいことになぜか本編の「Are You Ready」は『Nights』バージョンとなっており、『City Limit』バージョンはボーナストラックの中に7インチバージョンとして入ってますのでご注意を…。

(この『City Limit』はFunkytowngrooves盤のマスター使用のためM-6のバージョンが間違って収録されています)

2015年9月26日土曜日

Delegation「Heartache No.9」「Put A Little Love On Me」「One More Step To Take」and others [Ken Gold Songbook]

79年は、Delegationには節目の年になりました。「Oh Honey」の突然のアメリカでの大ヒット。そしてLen Coleyの脱退。新メンバーとして迎えられたのはアメリカ人のBruce Dunbarでした。さらにプロデューサーKen Goldは遂に自身のプロダクション、Kego Productions Limitedを立ち上げます。DelegationはStateとの契約を終了しKegoに所属。Kegoはさらに大きな成功を視野に、Delegationのリリース契約をイギリスはAriora・アメリカはMercuryと結びます。新レーベルからの第一弾として制作されたのが『Eau de Vie』(米題『Delegation』)でした。

A-1 Heartache No.9
A-2 Sho' Nuff Sold On You
A-3 One More Step To Take
A-4 Blue Girl
B-1 Darlin' (I Think About You) [Gold-Denne-Naiff]
B-2 You And I
B-3 Stand Up(Reach For The Sky) [*Bailey-Patterson]
B-4 Welcome To My World [*Bailey-Patterson-Dunbar]
B-5 Put A Little Love On Me

もちろんほとんどの楽曲はGold-Denneコンビのペンによるものですが、とにかくGoldの気合いが入りまくっており、プロデューサー・Ken Goldの手がけたアルバムの中でも最高水準のクオリティで、『The Promise Of Love』と並んで甲乙付け難い出来です。アルバムを通して象徴的なのがリズム・ギターやストリングス、コーラス等に見られるChic風サウンドで、「Heartache No.9」「Darlin'」(これのみLynton Naiffが作者としてもクレジット)「You And I」と、同じパターンの曲が何曲も入っています。また「Sho' Nuff Sold On You」はリズム・ボックスから始まるQuincy Jones風のサウンドにRick Jamesっぽいヴォーカルの組み合わせ、「One More Step To Take」はGoldおなじみのパターンというかReal Thingへの提供曲の流れで、一連のシリーズではこれがある意味完成形とも言えるでしょう。「Blue Girl」は「Oh Honey」の続編とでもいうような雰囲気のスウィートなスロー、「Put A Little Love On Me」はイギリスでは本アルバムからの第一弾シングルとしてリリースされ、本国ではヒットを逃しましたものの、欧州各国でチャートの上位に顔を出したアッパーなナンバーです。

また、メンバー作の2曲はGold-Denneコンビの作品に並んでもあまり違和感が無く、シンプルながらもメロウかつアッパーな「Stand Up」、シカゴの香りが濃厚なスロー「Welcome To My World」(珍しくリード・ヴォーカルはBruce Dunbarが担当)いずれも良作です。

サウンドを支えたミュージシャンも『The Promise Of Love』から一新され、特にこれ以降Delegationのサウンドを数年に渡って支えるのがギターのRobert AhwaiとキーボードのLynton Naiffです。AhwaiはReal Thingのファーストアルバムにも参加しており、その後HummingbirdやWham!/George Michael等の作品にも参加していきます。Real Thingのファーストの録音時すでにGoldとは面識があったのか、Ritz『Puttin' On The Ritz』でもNile Rodgersばりのカッティングを披露していましたが、このカッティング、まさにDelegationサウンドのトレードマークと言ってもいいでしょう。またLynton NaiffはGold作品では既におなじみの存在ですが、意外とDelegation関連でプレイヤーとしてクレジットされるのは本作が初めてとなります。



本アルバム並びにシングルとして切られた「Put A Little Love On Me c/w Welcome To My World」「You And I c/w Stand Up」「Heartache No.9 c/w  Stand Up」(「Welcome To My World」以外7インチ収録バージョンはショート・エディット、12インチ用には「You And I」を除くA面曲のみロング・ミックスが作られました)はいずれも残念ながら本国ではチャート・インしませんでした。アメリカではアルバムがR&Bチャート69位、「Welcome To My World」がR&B50位、「Heartache No.9」がR&B57位を記録しており、欧州各国でもヒットを記録。後の87年にはドイツで「You And I」、90年にイギリスで「Darlin'」が、さらにその後も本作の収録曲が幾度となくリミックスされシングル・リリースされています。またCD化やベスト盤への収録、90年代後半以降何度もDelegation自身により再録(これはいわゆる移籍先での全曲集に必要になったので、というアレなパターンですが、State時代の楽曲はほぼ全く再録されませんでした)される等、「Oh Honey」とはまた別に、Delegationにとって記念碑的な作品になっていると言ってよいでしょう。



2015年9月13日日曜日

Ritz「Dance Until You Drop」and others [Ken Gold Songbook]

Ritzは、女性1人・男性2人のトリオからなるヴォーカル・グループです。調べるとフランス出身のようで、78年にMidnightというグループ名でシングルを1枚リリース。79年にRitzに改名した後にも1枚シングルをリリース、その後英Epic/Park Laneと契約し、経緯は不明ですがKen Goldプロデュースで作られたアルバムが同じ79年リリースの『Puttin' On The Ritz』です。

A-1 Dance Until You Drop [Gold-Denne]
A-2 Wake Up Nights [Gold-Denne-Naiff]
A-3 Started Out Dancing, Ended Up Making Love [*O'Day]
A-4 Anyone Who Had A Heart [*Bacharach-David]
A-5 Soul Tripping [Gold-Denne]
B-1 Locomotion [*Goffin-King]
B-2 Ain't No Doubt About It [*Reilley-MacKillop]
B-3 Love Vibrations [Gold-Denne]
B-4 Lazy Love [*Child]

アルバムは全編Goldプロデュースですが、Goldが作曲にかかわった曲は9曲中4曲と少なく(うち2曲は既発曲ですし)、それ以外の曲も比較的バラエティに富んでいるというか、バラバラです。

カバーは不思議な選曲で、A-3は日本でも一部の方にはおなじみAlan O'dayのセカンド・アルバムからのカバーだったり、A-4のBacharach-David作品、そしてアルバムの先行シングルがB-1、なんとあのGoffin-King作「Locomotion」のディスコ・アレンジでした。ポップス界のクラシックとはいえアップ・トゥ・デイトな作りになっており、これが英米ではヒットに至りませんでしたが、オーストラリアやニュージーランド、フランスなどでは大ヒットとなります。また、B-2はスウェーデンからCado BelleのMaggie Reilly・Stuart MacKillopコンビ作、B-5はあのDesmond Child作で、彼の作品としてはかなり初期の作品でしょうか。

さてGoldのペンによる作品ですが、おそらくアルバムリリース前後に2枚目のシングルとしてカットされたのがA-1「Dance Until You Drop」です。これはもう、同時期のレコーディングと思われますDelegationのセカンド・アルバムでも顕著に影響が出ていますが、Chicのサウンド・メイキングを参考にしたファンキーな1曲に仕上がっています。

シングル・カットの際はパーカッション等が追加の上ミックスし直され、7インチと12インチでもそれぞれミックスが異なります。A-2は作者としてLynton Naiffもクレジットされていますが、Gold作品にしては珍しく欧風というかマイナー調の哀愁ディスコものです。A-5はDelegation、B-3はRealisticsのカバーです。

結局「Dance Until You Drop」もヒットせず、Ritzのその後の詳細もよくわかりませんでしたが、79年当時のGoldの志向が垣間見える1枚かと思います。



2015年9月5日土曜日

Delegation「Oh Honey」[Ken Gold Songbook]

ファースト・アルバム『The Promise Of Love』リリースの翌年78年、DelegationはGoldプロデュースで「Honey I'm Rich」c/w「Let Me Take You The Sun」をリリースします。A面はRaydioのファースト『Raydio』収録曲のカバーで、B面はDelegationのRay Pattersonのペンによるものです。残念ながらチャート・インはしませんでした。

その後、7月にシングル「Oh Honey」c/w「Love Is Like A Fire」がリリースされます。両面Goldプロデュース、A面はGold-Denne作、B面はDelegationのRicky BaileyとGrenville Hardingという方の共作です。「Oh Honey」は、まさに“浮遊”感溢れるといった言葉がしっくりくるスロー・ナンバーで、思わずキザな語りまで聞こえてきそうなスウィートな雰囲気満載です。ショート・エディットの7インチだけでなく、Delegation初めての12インチが限定で作られ、フル・バージョンはこちらに収録されました。しかし、これまたUKチャートに顔を出すことはありませんでした。

さて、Delegationは英国では77年にいくつかのヒットを記録していたものの、米国では「The Promise Of Love」のシングルが76年にMCAからリリースされたきりで、その後は特にリリースされていませんでした。ところがどこでどうなったのか、78年末にShady Brookというレーベルからシングルが2枚、「Someone Oughta Write A Song」/「Mr. Heartbreak」と「Oh Honey」c/w「Let Me Take You The Sun」がリリースされます(「Someone Oughta Write A Song」はショート・エディット、「Oh Honey」もUK7インチとは少し違うショート・エディットでした)。するとなんと「Oh Honey」がチャートを駆け上り、全米45位・R&B6位まで上昇する大ヒットになりました。

これを受けて米国でもアルバム『The Promise Of Love』がリリースされることになります。しかし、内容は英国盤とは異なり、もちろん大ヒットの「Oh Honey」を収録し、他にも数曲はGold-Denneコンビ作ではない、シングルB面曲等の新曲に差し替わっています。

A-1 The Promise Of Love
A-2 You've Been Doing Me Wrong
A-3 Mr.Heartbreak [*Harding]
A-4 Let Me Take You The Sun [*Patterson]
A-5 Back Door Love
B-1 Where Is The Love (We Used To Know)
B-2 Soul Trippin'
B-3 Oh Honey
B-4 Someone Oughta Write A Song (About You Baby)
B-5 Love Is Like A Fire [*Bailey-Harding]

アルバムは全米84位、R&B8位を記録するヒットとなりました。いよいよGoldも全米チャートにヒットを持つ作家・プロデューサーとなったのです。


The Real Thing 「Whenever You Want My Love」and others [Ken Gold Songbook]


76年の「You To Me Are Everything」「Can't Get By Without You」のヒットの後、77年のセルフ・プロデュース作『4 from 8』を経て、再度Real Thing側からKen Goldに声がかかったようです。まずは76年同様にシングルのA面のみの担当でしたが、78年1月にリリースされたのがGold-Denneコンビ作・Gold プロデュースによる「Whenever You Want My Love」です。おそらくは、“「You To Me Are Everything」「Can't Get By Without You」みたいなのお願いします!”という感じでのオファーだったかと思われる、同路線の爽快感溢れるポップな1曲になりました。チャート18位のスマッシュ・ヒットとなります。

このシングルのヒットを受けてかその後、78年は全編Goldプロデュースでアルバムを1枚作ることになったようです。おそらく78年後半、『Step Into Our World』のタイトルでリリースされました。

A-1 Whatcha Say, Whatcha Do [*C. Amoo-E. Amoo]
A-2 Lady, I Love You All The Time
A-3 Rainin' Through My Sunshine [*C. Amoo-E. Amoo]
A-4 Can You Feel The Force? [*C. Amoo-E. Amoo]
A-5 Give Me The Chance
B-1 (We Gotta Take It To The) Second Stage [*C. Amoo-E. Amoo]
B-2 Won't You Step Into My World? [*C. Amoo-E. Amoo]
B-3 Whenever You Want My Love
B-4 You Gotta Keep Holding On [*C. Amoo-E. Amoo]
B-5 Love Me Right

1作まるまるGold プロデュースとはいうものの、DelegationのようにGold-Denneコンビ作が多数を占めるわけではなく、10曲中4曲と控えめと言えば控えめです。おそらくこれはセルフ・プロデュース志向が強いAmoo兄弟の意向を受けてのことではないかと想像します。とはいうものの、ここでのAmoo兄弟の楽曲はどれもポップでメロウな、非常にGold-Denneコンビを意識した雰囲気ですが…。とはいうもののGoldの洗練された感覚と、根底に流れるReal Thingの泥臭いファンクネスのバランスが本作では絶妙だと思います。Lady, I Love You All The Time」「Love Me Right」「Give Me The Chance」のGold-Denneコンビ作品は安定したクオリティで、79年のDelegationなどにも繋がる流れです。


また、(当連載的にはズレますが)セッションの2ndシングルとして出たのがAmoo兄弟作のRainin' Through My Sunshine」です。日本でも一部では有名なこの曲、プロデューサーのGoldとAmoo兄弟の役割分担はよくわかりませんが、リズムパターン(Goldは77年Realistics「Someone Oughta Write A Song About You Baby」でもやってました)やタイトルをヴォーカルとコーラスで別に連呼するところなど、おそらく78年初頭に全米30位まで上昇したBill Withers「Lovely Day」へのGold・Amoo兄弟からの返答かと思います。歌詞も陽気なアメリカン・ソウルに対しての陰りのあるブリティッシュ・ソウルという感じがして、綺麗な対比になっているのが面白いですね。これはUKチャート40位という結果でした。

そしてAmoo兄弟作のアッパーでスペイシーな(映画「Star Wars」にインスパイアされたそうです)Can You Feel The Force?」が79年2月に3rdシングルとしてシングル・カットされるとUKチャート5位まで上昇します。このヒットを受け、本作は『Can You Feel The Force?』と改題され、Can You Feel The Force?」をニュー・ミックスのロング・バージョンに差し替えての再リリースが行われました(シングル・LPともにイエローのカラー・レコードでのリリースもありました)。そしてこのヒットを最後に、Real ThingはGoldの元を離れることとなります。







2015年8月30日日曜日

関口和之 & 砂山オールスターズ『World Hits!? of Southern All Stars』


サザン関連作品をご紹介するシリーズ、今回で一段落となります。サザンのベーシスト関口和之さんは、サザン初期に作曲を手がけた作品はどれもビートリーなものでしたが、83年『綺麗』ではアルバム・コンセプトに合わせたニューウェーブ路線にシフトし、その路線は86年のファースト・ソロ・アルバム『砂金』まで継続しました。その後いろいろあって、95年にサザンに復帰した頃はすっかりウクレレ愛好家の地位を不動のものとされておりました。その後のソロ作品は全てウクレレを核としたコンセプト・アルバムばかりで、ご本人はヴォーカリストやプレイヤーというよりはプロデューサーのポジションから作品を手がけているのが大きな特徴です。

さて今回の『World Hits!? of Southern All Stars』は01年、急遽サザンの活動が止まってしまってリリースもライブも出来なくなったタイミングで、なんとサザンの楽曲をウクレレ愛好家がワールドミュージック的な視点からカバーするという、異色作にして意欲作として飛び出した作品です。個人的にはプロデューサー・関口和之の現時点でのベスト作と思っています。

当初は当時すでにSoul Loversやケツメイシに関わっていたYANAGIMANこと柳満夫さん(97年の『UKULELE CALENDER』や『口笛とウクレレ』でもかなりご活躍でした)と作業を始め、さらにLittle CreaturesやDouble Famous(当時)の青柳拓次さんの演奏を見て声をかけたということで、主にこのお二方がサウンド作りの要となっています。そこに高野寛さんが一曲、鈴木惣一朗さん(『口笛とウクレレ』でも参加されていました)が在籍していた時期のNoahlewis' Mahlon Taitsが一曲を受け持っています。それまでの作品のようにウクレレ主体でサウンドを組み立てるのではなく、サウンドありきでウクレレを必ず入れる、といういつもとは逆の発想で作られていることで非常に表情豊かな作品になっています(ウクレレ愛好家としてはあくまで亜流なのかもしれませんが…)。さらに、サザンのメンバーによるカバーということで、オリジナルをなぞるような凡庸なカバーから遥か彼方に距離を置いたのがかなり吉と出ています。

M-1「涙のキッス(a cappella)」は特にどこの地方という観点で作られた訳ではなく、関口さんの前年作『口笛とウクレレ』で使ったオアフで録ったSEを使うことで前作の続きであることを示しているようです。M-2「ミス・ブランニュー・デイ」はジャマイカはキングストンということで、レゲエものに生まれ変わりました。柳さんのアレンジで、iwaoこと山口岩男さんと関口さんのウクレレがギターの代わりに裏打ちのビートを奏でており、オートチューンが使われたリードヴォーカルは関口さんご本人によるものです。ハワイ島のイメージで選ばれたのはM-3「Ya Ya」で、青柳さんアレンジでスラック・キー・ギター等のハワイ楽器も青柳さん、同じくDouble Famousの栗林慧さんも関口さんと共にウクレレを奏でています。キューバ・ハバナとして選ばれたのが前年のヒット曲M-4「HOTEL PACIFIC」で、オリジナルも桑田さんの「こういうのが好きなんでしょ?」という声が聞こえてきそうなどラテン歌謡でしたが、それをさらにやさぐれ歌謡の方向に持って行ったそうです。玲葉奈(現Leyona)さんをヴォーカルに迎え、青柳さん仕切りのソリッドなサウンドの「HOTEL PACIFIC」になりました。本作から12インチとしてシングル・カットされています。

M-5「愛の言霊」はコロンビアはサンタ・マルタで、関口さんの持つ「危険な場所」というイメージに沿った青柳さんのサウンドは、メレンゲやボンバなどとハウスを融合させたスタイルになっています。ブラジル・リオデジャネイロはM-6「涙のキッス」を柳さんによるループに青柳さんのギターをフィーチャーしたボサノヴァもの。関口さんがJoao GilBertoを聴いてるうちに思いついたそうです。M-7「みんなのうた」はアメリカはカリフォルニアということで、高野寛さんによるBeach Boysものに仕上がりました。ペティ・ブーカをヴォーカルに迎えた、とにかく楽しい雰囲気に仕上がっています。

M-8「希望の轍」は一応ミシシッピということですが、正直そこにそれほど強い意味は無いようで、Noahlewis' Mahlon Taitsと関口さんのウクレレによる3拍子のオールド・スタイルなアメリカン・ミュージックの世界。リードを取っているのはNoahlewisの森谷文哉さんによるノコギリです。本作は全て関口さんのNofofon Studioで録音が行われていますが、この曲のみ、本作リリース直後に下北沢でオープンすることとなるノアルイズ・レコード予定地にて、一発録りのアナログレコーディングということです。さてここでシングル曲でない、83年『綺麗』収録の関口さん作M-9「南たいへいよ音頭」が柳さんアレンジで、トリニダード・トバゴということでスティールパンを引っさげて唐突に登場です。そもそもこの曲は『綺麗』のコンセプトに合わせたファンカラティーナ等を意図して書かれ、その時は歌詞はバリを想定していたそうなのですが、これが某音楽誌の某中村編集長に絶賛され「南太平洋よりはスティールパンが合いそう」と誌面で助言されていたことへ18年ぶりの回答と思われます。M-10「Big Star Blues」は大胆にも沖縄ものになりました。柳さんのキーボードと打ち込み、関口さんの三線とウクレレで奏でられる、沖縄の音と自然を表現したという不思議な「Big Star Blues」です。次はカメルーンでM-11「真夏の果実」、柳さんによる打ち込みのクールなビートとカリンバ、そしてSoul LoversのMahyaさんによるコーラス等が素晴らしく、個人的には本作で1、2を争う好みの曲です(もう1曲は「南たいへいよ音頭」です)。そして北欧アイルランドはダブリンからケルトものになってやって来たM-12「クリスマス・ラブ」。青柳さんと関口さんによる演奏は、子供がトイピアノを弾いているクリスマスの家庭をイメージしたというユニークな音処理になっています。そしてイビザ島から宇宙へということでM-13「忘れられたBIG WAVE」は『口笛とウクレレ』での未発表のアイディア、口笛とループにラジオのチューニング音を合わせるというチルアウトになっています。

最後の最後にお土産ということで関口さんがサンディエゴのホテルのバルコニーで録ってきた前年の大ヒットM-14「TSUNAMI」、KAWAIKAのウクレレでOhta Sanのスタイルを意識しての演奏です。

関口さんは現在、ウクレレ布教活動を行いながらもハワイにウクレレ・ミュージアムを建設するという夢に向かって邁進中です。是非、叶えてほしいと思っています。


2015年8月11日火曜日

Denne And Gold 「Let's Put Our Love Back Together」「Don't Go Away (And Take Your Love Out Of Town)」and others [Ken Gold Songbook]

米国のソウル・シンガー達に作品が取り上げられ、Real ThingやDelegationで英国でもヒットを飛ばし始めた作家コンビMicky DenneとKen Goldは、77年暮れから彼等名義のアルバム制作に入ります。77年9月にシングル「Midnight Creeper」c/w「You've Got To Give Me All Your Lovin'」がリリースされ、翌年シングル「Let's Put Our Love Back Together」c/w「Don't Go Away (And Take Your Love Out Of Town)」とLP『Denne And Gold』がリリースされました。ただし、調べてもシングルはUK、LPはUSでしかリリースされた形跡がありません(CDは日本だけですね…)。

Real ThingやDelegation、RealisticsでもおなじみのLynton Naiffがキーボード(シングルではアレンジャーとしてクレジット)を担当しており、Gold・Denneと共にサウンド作りの要となっているのが伺えます。LPにプロデュースのクレジットは無く、エグゼクティブ・プロデューサーにGeorge Leeという方がクレジットされておりますが、この方の経歴はわかりません(77年同じくMCAからリリースされたB. J. ThomasによるBeach Boysのカバー「Don't Worry Baby」シングルでもエグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットされているようですが、それ以外あまり情報がありません)。ただし、2枚のシングルにはKen Goldプロデュースのクレジットがあります。

A-1 Let's Put Our Love Back Together
A-2 It Hurts To Watch A Good Thing Die
A-3 Midnite Creeper
A-4 Don't Go Away (And Take Your Love Out Of Town)
A-5 You've Got To Give Me All Your Lovin'
B-1 We've Got It Jumpin' Now
B-2 I Can't Ask For Anymore Than You
B-3 Why Do We Hurt Each Other [*Denne]
B-4 Uncertain
B-5 If I Could Just Be With You Tonight

Delegation『The Promise Of Love』に近い、フィリーの影響が感じられ、もちろんシカゴ・ソウルの影響もありますが、全体としてはどこか垢抜けないスワンプ風味が散りばめられている、軽めで清涼感が漂うブルー・アイド・ソウル作品に仕上がっています(金澤寿和さんも日本盤ライナーで書かれていますが、Hall & Oatesのアトランティック時代のような雰囲気もあります)。特にその後の洗練されたGoldプロデュース作品群と比べるとちょっと泥臭く、別の味わいがあると思います。

何と言ってもシングル・カットされた1曲目フィリー風ミディアム「Let's Put Our Love Back Together」からメロウで素晴らしいです。歌い出しのヴァースはMicky Denne、「I may be〜」のヴァースはKen Goldがリードを取っているようです。「Let's Put Our Love Back Together」のシングルB面に収録された「Don't Go Away (And Take Your Love Out Of Town)」もフィリー風味のスローで、非常に味わい深い出来です。


また、当シリーズ的にはちょっとズレますが、唯一Micky Denneの単独作である「Why Do We Hurt Each Other」はファルセット多用のシカゴもので、とてもいい出来だと思います。「It Hurts To Watch A Good Thing Die」もいかにもなAOR調のメロウな仕上がりです。「We've Got It Jumpin' Now」は(これも金澤さんが日本盤ライナーで書かれていますが)UK大御所の80年シングル曲と同じ方向を向いています。「I Can't Ask For Anymore Than You」「You've Got To Give Me All Your Lovin'」は76年のCliff Richardへの提供曲、「Uncertain」は77年Jimmy Helmsへの提供曲のそれぞれセルフカバーです。

 

(2020/3追記)
シングル曲「Midnight Creeper」「Let's Put Our Love Back Together」、またLPの「If I Could Just Be With You Tonight」の3曲は1976年にDenny McCaffreyがレコーディングしたものの、未発表となった楽曲のセルフカバーだったようです。
tuesday breakheart: Denny McCaffrey「Midnight Creeper」「Goodbye For The Last Time」「Take Good Care Of Yourself」「Times」and others [Ken Gold Songbook]





2015年7月20日月曜日

SUGAR BABE『SONGS』のバージョン違い


SUGAR BABEの『SONGS』がリリースされて40周年なのだそうです。正直、40周年記念盤が出ると聞いた時はその後のことが頭をよぎり思わず意識が朦朧としてしまいましたが、それはさておきこのタイミングなので、個人的にとても思い入れのあるこの作品のバージョン違いをまとめることで『SONGS』への敬意を表したいと思います。
「やっぱり最初の笛吹銅次ミックスが一番」とおっしゃっていた山下達郎さんですが、4月末か5月初頭、30周年の際の新春放談での大瀧詠一さんのコメントが甦り、当初予定の内容から急遽リミックスへと内容変更となりました。今回のミックスはどなたが担当されたのでしょうか?40周年版についてはリリースされたら追記することにします(→追記しました)。



●SHOW

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
TATSURO FROM NIAGARA 2009
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 2015

Version B … 吉田保による、ヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Version D … 1974年4月ニッポン放送第一スタジオで録られた通称“LFデモ”
DAWN IN NIAGARA in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version E … 94年版SONGS収録のLFデモ、エコーがかなり強い
SONGS 1994

Version F … 05年版SONGS収録のLFデモ、エコーが一番少ない
SONGS 2005

Track … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス(Version C)のカラオケ
SONGS 2015 CD


●DOWN TOWN

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
TATSURO FROM NIAGARA 2009
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜
SONGS 2015

Version B … シングル用の別ミックス、Version Aに比べ各パートの定位がセンター寄りでフェイドアウトも早い
DOWN TOWN(Single)1975

Version C … 1981年に作られた、シンプルながらVersion Aより定位が整頓され、奥行きのあるミックス
MORE MORE NIAGARA FALL STARS in NIAGARA VOX
NIAGARA FALL STARS '81 REMIX SPECIAL in NIAGARA CD BOOK II

Version D … エコーが深めの1982年のシングル用バージョン(Version Aの2ミックス・マスターにエコーをかけている?
DOWN TOWN(Single)1982

Version E … クラヴィネットが別テイクの、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めの奥行きのあるミックス
SONGS 1986 
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version F … 1994年の山下達郎シングル「パレード」に収録された“オリジナル・シングル・バージョン”。Version Bの再現を狙い新たにミックスされたが、Version Bよりフェイドアウトは長い
パレード(Single)1994

Version G … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Version H … 1975年7月17日文化放送「ハロー・パーティー」でのライブ・テイク
SONGS 2015 CD

Version I … 1976年1月28日仙台電力ホールでのライブ・テイク
SONGS 2015 CD

Track A … 2005年盤『SONGS』用に新たにミックス、クラヴィネットはVersion Eと同じもの
SONGS 2005

Track B … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス(Version G)のカラオケ
SONGS 2015 CD



●蜃気楼の街

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS
 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 2015

Version B … 吉田保による、ヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Track … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス(Version C)のカラオケ
SONGS 2015 CD


●風の世界

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS
 2015

Version B … イントロのギター・カッティングが半拍ずれており、Version A終盤のブレスもオミットされた、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

◆Version D … 1975年9月12日中野公会堂でのライブ・テイク
SONGS 2015 CD


●ためいきばかり

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS
 2015

Version B … ブラスがある程度大きい、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Version D … ブラスがかなり大きくフィーチャーされた、未採用となった1975年のミックス
SONGS
 2005


いつも通り

Version A
SONGS 1975
DOWN TOWN(Single)1975
SONGS 1976
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
LIBRARY 〜Anthology 1973-2003〜
SONGS 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS
 2015

Version B … ヴォーカルがダブルで大きめ・エコー深めの、吉田保による1981年のミックス
NIAGARA FALL STARS
NIAGARA FALL STARS in NIAGARA VOX
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA FALL STARS REMIX SPECIAL in NIAGARA CD BOOK 2

Version C … 吉田保による、ヴォーカル(Version Aと別テイク/Version Bで小さめに使われている方)大きめ・エコーさらに深めで奥行きのある1986年のミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986
The Very Best Of 大貫妙子
NEW BEST 大貫妙子

Version D … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Version E … 1974年4月16日池袋シアターグリーンでのライブ・テイク
SONGS 1994

Track … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス(Version D)のカラオケ
SONGS 2015 CD



●すてきなメロディ

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS
 2015

Version B … フェイドアウトが長い、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのある1981年のミックス
NIAGARA FALL STARS
NIAGARA FALL STARS in NIAGARA VOX
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA FALL STARS REMIX SPECIAL in NIAGARA CD BOOK 2

Version C … 間奏頭のピアノが一台少なく、カズーが入り、フェイドアウトが長い吉田保によるヴォーカル大きめ・エコーさらに深めで奥行きのある1986年のミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version D … Version C作成後、笛吹銅次が誤ってマルチから消してしまったカズーをVersion Aにペーストしたバージョン
TATSURO FROM NIAGARA 2009

Version E … デモ・ミックスからのカズーをマルチに入れ込み作成された中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Version F … 1976年3月31日荻窪ロフトでのライブ・テイク
SONGS 1994


今日はなんだか

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
TATSURO FROM NIAGARA 2009
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 2015

Version B … 吉田保による、ヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きがありピアノは初期テイクを使っているミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Version D … Version Bと同じピアノをフィーチャーした、中村辰也・山下達郎によるミックスの“Original Piano Version”
SONGS 2015 CD

Version E … 1976年4月1日荻窪ロフトでのライブ・テイク
SONGS 1994

◆Version F … 1976年1月28日仙台電力ホールでのライブ・テイク
SONGS 2015 CD



●雨は手のひらにいっぱい

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
音壁JAPAN
TATSURO FROM NIAGARA 2009
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜
SONGS 2015

Version B … 冒頭カウント最後のハイハットが入る、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Version D … 1976年4月1日荻窪ロフトでのライブ・テイク
SONGS 2015 CD

◆Track … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス(Version C)のカラオケ
SONGS 2015 CD



●過ぎ去りし日々 “60's Dream”

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
TATSURO FROM NIAGARA 2009
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 2015

Version B … フェイドアウトの長い、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD


●SUGAR

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 2015

Version B … Version Aとは細部に違いのある、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … Version Aとは細部に若干違いのある、中村辰也・山下達郎による2015年のミックス
SONGS 2015 CD

Version D  1975年の未採用となったミックス
SONGS 2005

◆Version E … 1975年のデモ・ミックス
TATSURO FROM NIAGARA 2009