2015年9月26日土曜日

Delegation「Heartache No.9」「Put A Little Love On Me」「One More Step To Take」and others [Ken Gold Songbook]

79年は、Delegationには節目の年になりました。「Oh Honey」の突然のアメリカでの大ヒット。そしてLen Coleyの脱退。新メンバーとして迎えられたのはアメリカ人のBruce Dunbarでした。さらにプロデューサーKen Goldは遂に自身のプロダクション、Kego Productions Limitedを立ち上げます。DelegationはStateとの契約を終了しKegoに所属。Kegoはさらに大きな成功を視野に、Delegationのリリース契約をイギリスはAriora・アメリカはMercuryと結びます。新レーベルからの第一弾として制作されたのが『Eau de Vie』(米題『Delegation』)でした。

A-1 Heartache No.9
A-2 Sho' Nuff Sold On You
A-3 One More Step To Take
A-4 Blue Girl
B-1 Darlin' (I Think About You) [Gold-Denne-Naiff]
B-2 You And I
B-3 Stand Up(Reach For The Sky) [*Bailey-Patterson]
B-4 Welcome To My World [*Bailey-Patterson-Dunbar]
B-5 Put A Little Love On Me

もちろんほとんどの楽曲はGold-Denneコンビのペンによるものですが、とにかくGoldの気合いが入りまくっており、プロデューサー・Ken Goldの手がけたアルバムの中でも最高水準のクオリティで、『The Promise Of Love』と並んで甲乙付け難い出来です。アルバムを通して象徴的なのがリズム・ギターやストリングス、コーラス等に見られるChic風サウンドで、「Heartache No.9」「Darlin'」(これのみLynton Naiffが作者としてもクレジット)「You And I」と、同じパターンの曲が何曲も入っています。また「Sho' Nuff Sold On You」はリズム・ボックスから始まるQuincy Jones風のサウンドにRick Jamesっぽいヴォーカルの組み合わせ、「One More Step To Take」はGoldおなじみのパターンというかReal Thingへの提供曲の流れで、一連のシリーズではこれがある意味完成形とも言えるでしょう。「Blue Girl」は「Oh Honey」の続編とでもいうような雰囲気のスウィートなスロー、「Put A Little Love On Me」はイギリスでは本アルバムからの第一弾シングルとしてリリースされ、本国ではヒットを逃しましたものの、欧州各国でチャートの上位に顔を出したアッパーなナンバーです。

また、メンバー作の2曲はGold-Denneコンビの作品に並んでもあまり違和感が無く、シンプルながらもメロウかつアッパーな「Stand Up」、シカゴの香りが濃厚なスロー「Welcome To My World」(珍しくリード・ヴォーカルはBruce Dunbarが担当)いずれも良作です。

サウンドを支えたミュージシャンも『The Promise Of Love』から一新され、特にこれ以降Delegationのサウンドを数年に渡って支えるのがギターのRobert AhwaiとキーボードのLynton Naiffです。AhwaiはReal Thingのファーストアルバムにも参加しており、その後HummingbirdやWham!/George Michael等の作品にも参加していきます。Real Thingのファーストの録音時すでにGoldとは面識があったのか、Ritz『Puttin' On The Ritz』でもNile Rodgersばりのカッティングを披露していましたが、このカッティング、まさにDelegationサウンドのトレードマークと言ってもいいでしょう。またLynton NaiffはGold作品では既におなじみの存在ですが、意外とDelegation関連でプレイヤーとしてクレジットされるのは本作が初めてとなります。



本アルバム並びにシングルとして切られた「Put A Little Love On Me c/w Welcome To My World」「You And I c/w Stand Up」「Heartache No.9 c/w  Stand Up」(「Welcome To My World」以外7インチ収録バージョンはショート・エディット、12インチ用には「You And I」を除くA面曲のみロング・ミックスが作られました)はいずれも残念ながら本国ではチャート・インしませんでした。アメリカではアルバムがR&Bチャート69位、「Welcome To My World」がR&B50位、「Heartache No.9」がR&B57位を記録しており、欧州各国でもヒットを記録。後の87年にはドイツで「You And I」、90年にイギリスで「Darlin'」が、さらにその後も本作の収録曲が幾度となくリミックスされシングル・リリースされています。またCD化やベスト盤への収録、90年代後半以降何度もDelegation自身により再録(これはいわゆる移籍先での全曲集に必要になったので、というアレなパターンですが、State時代の楽曲はほぼ全く再録されませんでした)される等、「Oh Honey」とはまた別に、Delegationにとって記念碑的な作品になっていると言ってよいでしょう。



2015年9月13日日曜日

Ritz「Dance Until You Drop」and others [Ken Gold Songbook]

Ritzは、女性1人・男性2人のトリオからなるヴォーカル・グループです。調べるとフランス出身のようで、78年にMidnightというグループ名でシングルを1枚リリース。79年にRitzに改名した後にも1枚シングルをリリース、その後英Epic/Park Laneと契約し、経緯は不明ですがKen Goldプロデュースで作られたアルバムが同じ79年リリースの『Puttin' On The Ritz』です。

A-1 Dance Until You Drop [Gold-Denne]
A-2 Wake Up Nights [Gold-Denne-Naiff]
A-3 Started Out Dancing, Ended Up Making Love [*O'Day]
A-4 Anyone Who Had A Heart [*Bacharach-David]
A-5 Soul Tripping [Gold-Denne]
B-1 Locomotion [*Goffin-King]
B-2 Ain't No Doubt About It [*Reilley-MacKillop]
B-3 Love Vibrations [Gold-Denne]
B-4 Lazy Love [*Child]

アルバムは全編Goldプロデュースですが、Goldが作曲にかかわった曲は9曲中4曲と少なく(うち2曲は既発曲ですし)、それ以外の曲も比較的バラエティに富んでいるというか、バラバラです。

カバーは不思議な選曲で、A-3は日本でも一部の方にはおなじみAlan O'dayのセカンド・アルバムからのカバーだったり、A-4のBacharach-David作品、そしてアルバムの先行シングルがB-1、なんとあのGoffin-King作「Locomotion」のディスコ・アレンジでした。ポップス界のクラシックとはいえアップ・トゥ・デイトな作りになっており、これが英米ではヒットに至りませんでしたが、オーストラリアやニュージーランド、フランスなどでは大ヒットとなります。また、B-2はスウェーデンからCado BelleのMaggie Reilly・Stuart MacKillopコンビ作、B-5はあのDesmond Child作で、彼の作品としてはかなり初期の作品でしょうか。

さてGoldのペンによる作品ですが、おそらくアルバムリリース前後に2枚目のシングルとしてカットされたのがA-1「Dance Until You Drop」です。これはもう、同時期のレコーディングと思われますDelegationのセカンド・アルバムでも顕著に影響が出ていますが、Chicのサウンド・メイキングを参考にしたファンキーな1曲に仕上がっています。

シングル・カットの際はパーカッション等が追加の上ミックスし直され、7インチと12インチでもそれぞれミックスが異なります。A-2は作者としてLynton Naiffもクレジットされていますが、Gold作品にしては珍しく欧風というかマイナー調の哀愁ディスコものです。A-5はDelegation、B-3はRealisticsのカバーです。

結局「Dance Until You Drop」もヒットせず、Ritzのその後の詳細もよくわかりませんでしたが、79年当時のGoldの志向が垣間見える1枚かと思います。



2015年9月5日土曜日

Delegation「Oh Honey」[Ken Gold Songbook]

ファースト・アルバム『The Promise Of Love』リリースの翌年78年、DelegationはGoldプロデュースで「Honey I'm Rich」c/w「Let Me Take You The Sun」をリリースします。A面はRaydioのファースト『Raydio』収録曲のカバーで、B面はDelegationのRay Pattersonのペンによるものです。残念ながらチャート・インはしませんでした。

その後、7月にシングル「Oh Honey」c/w「Love Is Like A Fire」がリリースされます。両面Goldプロデュース、A面はGold-Denne作、B面はDelegationのRicky BaileyとGrenville Hardingという方の共作です。「Oh Honey」は、まさに“浮遊”感溢れるといった言葉がしっくりくるスロー・ナンバーで、思わずキザな語りまで聞こえてきそうなスウィートな雰囲気満載です。ショート・エディットの7インチだけでなく、Delegation初めての12インチが限定で作られ、フル・バージョンはこちらに収録されました。しかし、これまたUKチャートに顔を出すことはありませんでした。

さて、Delegationは英国では77年にいくつかのヒットを記録していたものの、米国では「The Promise Of Love」のシングルが76年にMCAからリリースされたきりで、その後は特にリリースされていませんでした。ところがどこでどうなったのか、78年末にShady Brookというレーベルからシングルが2枚、「Someone Oughta Write A Song」/「Mr. Heartbreak」と「Oh Honey」c/w「Let Me Take You The Sun」がリリースされます(「Someone Oughta Write A Song」はショート・エディット、「Oh Honey」もUK7インチとは少し違うショート・エディットでした)。するとなんと「Oh Honey」がチャートを駆け上り、全米45位・R&B6位まで上昇する大ヒットになりました。

これを受けて米国でもアルバム『The Promise Of Love』がリリースされることになります。しかし、内容は英国盤とは異なり、もちろん大ヒットの「Oh Honey」を収録し、他にも数曲はGold-Denneコンビ作ではない、シングルB面曲等の新曲に差し替わっています。

A-1 The Promise Of Love
A-2 You've Been Doing Me Wrong
A-3 Mr.Heartbreak [*Harding]
A-4 Let Me Take You The Sun [*Patterson]
A-5 Back Door Love
B-1 Where Is The Love (We Used To Know)
B-2 Soul Trippin'
B-3 Oh Honey
B-4 Someone Oughta Write A Song (About You Baby)
B-5 Love Is Like A Fire [*Bailey-Harding]

アルバムは全米84位、R&B8位を記録するヒットとなりました。いよいよGoldも全米チャートにヒットを持つ作家・プロデューサーとなったのです。


The Real Thing 「Whenever You Want My Love」and others [Ken Gold Songbook]


76年の「You To Me Are Everything」「Can't Get By Without You」のヒットの後、77年のセルフ・プロデュース作『4 from 8』を経て、再度Real Thing側からKen Goldに声がかかったようです。まずは76年同様にシングルのA面のみの担当でしたが、78年1月にリリースされたのがGold-Denneコンビ作・Gold プロデュースによる「Whenever You Want My Love」です。おそらくは、“「You To Me Are Everything」「Can't Get By Without You」みたいなのお願いします!”という感じでのオファーだったかと思われる、同路線の爽快感溢れるポップな1曲になりました。チャート18位のスマッシュ・ヒットとなります。

このシングルのヒットを受けてかその後、78年は全編Goldプロデュースでアルバムを1枚作ることになったようです。おそらく78年後半、『Step Into Our World』のタイトルでリリースされました。

A-1 Whatcha Say, Whatcha Do [*C. Amoo-E. Amoo]
A-2 Lady, I Love You All The Time
A-3 Rainin' Through My Sunshine [*C. Amoo-E. Amoo]
A-4 Can You Feel The Force? [*C. Amoo-E. Amoo]
A-5 Give Me The Chance
B-1 (We Gotta Take It To The) Second Stage [*C. Amoo-E. Amoo]
B-2 Won't You Step Into My World? [*C. Amoo-E. Amoo]
B-3 Whenever You Want My Love
B-4 You Gotta Keep Holding On [*C. Amoo-E. Amoo]
B-5 Love Me Right

1作まるまるGold プロデュースとはいうものの、DelegationのようにGold-Denneコンビ作が多数を占めるわけではなく、10曲中4曲と控えめと言えば控えめです。おそらくこれはセルフ・プロデュース志向が強いAmoo兄弟の意向を受けてのことではないかと想像します。とはいうものの、ここでのAmoo兄弟の楽曲はどれもポップでメロウな、非常にGold-Denneコンビを意識した雰囲気ですが…。とはいうもののGoldの洗練された感覚と、根底に流れるReal Thingの泥臭いファンクネスのバランスが本作では絶妙だと思います。Lady, I Love You All The Time」「Love Me Right」「Give Me The Chance」のGold-Denneコンビ作品は安定したクオリティで、79年のDelegationなどにも繋がる流れです。


また、(当連載的にはズレますが)セッションの2ndシングルとして出たのがAmoo兄弟作のRainin' Through My Sunshine」です。日本でも一部では有名なこの曲、プロデューサーのGoldとAmoo兄弟の役割分担はよくわかりませんが、リズムパターン(Goldは77年Realistics「Someone Oughta Write A Song About You Baby」でもやってました)やタイトルをヴォーカルとコーラスで別に連呼するところなど、おそらく78年初頭に全米30位まで上昇したBill Withers「Lovely Day」へのGold・Amoo兄弟からの返答かと思います。歌詞も陽気なアメリカン・ソウルに対しての陰りのあるブリティッシュ・ソウルという感じがして、綺麗な対比になっているのが面白いですね。これはUKチャート40位という結果でした。

そしてAmoo兄弟作のアッパーでスペイシーな(映画「Star Wars」にインスパイアされたそうです)Can You Feel The Force?」が79年2月に3rdシングルとしてシングル・カットされるとUKチャート5位まで上昇します。このヒットを受け、本作は『Can You Feel The Force?』と改題され、Can You Feel The Force?」をニュー・ミックスのロング・バージョンに差し替えての再リリースが行われました(シングル・LPともにイエローのカラー・レコードでのリリースもありました)。そしてこのヒットを最後に、Real ThingはGoldの元を離れることとなります。