2015年10月18日日曜日

Billy Ocean 「Are You Ready」「Whatever Turns You On」「Taking Chances」「Another Day Won't Matter」and others [Ken Gold Songbook]

Billy Oceanは、トリニダード出身・ロンドン育ち、75年(本名Les Charles名義では71年デビューですが…)のデビュー以降、イギリスやヨーロッパ諸国で何曲ものシングル・ヒットを放っていたシンガーでした。76年の「Love Really Hurts Without You」は全米22位、「L. O. D. (Love On Deliverly)」は106位・R&B55位のヒットを記録しています。その後ややセールスが落ち着いてきたことで、それまでの60年代モータウン等の影響が濃厚な、当時としてもややオールド・ファッションな路線から、よりコンテンポラリーなものにシフトしたシングルが79年9月リリースの「American Hearts」c/w「My Love」でした(12インチも作られ、こちらはA面は別ミックスです)。両面ともプロデュースがKen Gold、ストリングス・ブラスアレンジをLynton Naiffが担当しています。この流れで11月にはGold-Oceanコンビ作の「Are You Ready」c/w「Maybe Tonight」が同じくGoldプロデュース、Lynton Naiffのストリングス・ブラスアレンジで7インチ・12インチ(A面別ミックス)の2種リリースされます。その流れで、80年初頭にリリースされたのがアルバム『City Limit』でした。


A-1 Stay The Night
A-2 What You Doing To Me
A-3 Who's Gonna Rock You
A-4 Maybe Tonight
A-5 City Limit [*Ocean-McKay]
B-1 Are You Ready
B-2 Whatever Turns You On
B-3 Taking Chances
B-4 American Hearts [*Bugatti-Musker]

2曲を除きOcean-Goldコンビ作(シングルと順番がひっくり返りました)、プロデュースはKen Gold(A-5のみDave McKay)、ストリングス・ブラスアレンジはLynton Naiffという布陣で制作されました。

「Stey The Night」もそうかもしれませんが、「Are You Ready」はあからさまにMichael Jackson(にKC & The Sunshine Band を合わせたような…)的なサウンドで、これらを後にMichael実姉のLa Toya Jacksonがカバーするのですから世の中わからないものです。「Whatever Turns You On」も軽めですがメロウなミディアムで、これこそいかにもKen Goldらしい一曲と言えるでしょう。「Taking Chances」は隙間多めの演奏にソウルフルなBillyのヴォーカルが光るバラードです。また、「Maybe Tonight」などはAOR風というか、あまり黒っぽくありませんがこれまたメロウなバラードです。「Who's Gonna Rock You」は後にカバーされヒットを記録することになりますが、さもありなんと言うべきポップな一曲です。

残念ながら『City Limit』はチャート・インを逃します。80年4月には「Stay The Night」c/w「What You Doing To Me」が7インチ・12インチ(A面は別ミックス)でシングル・カットされ、イギリスではチャート・インを逃しますが、フランスやドイツではヒットを記録しています。

その後、初夏には元Nolan SistersことNolansが「Who's Gonna Rock You」をEpic2作目のアルバム『Making Waves』でカバー、10月にはシングルとしてリリースし、イギリスで12位のヒットを記録します。また、同年6月にLa Toya Jacksonがファースト・ソロ『La Toya Jackson』で「Are You Ready」をカバー。9月にはイギリスで「Stay The Night」をシングル・リリース、81年3月リリースの『My Special Love』に収録されました。

81年4月、新たにリリースされたBilly Oceanのシングル「Nights (Feel Like Getting Down)」c/w「Everlasting Love」はプロデュースがNigel Martinezで、作曲もMartinez-Oceanコンビによるものです。Martinezは78年にStateからソロ・ファースト・アルバムをリリースする傍らReal Thing『Step Into Our World』でドラマーとして参加しており、81年にはDelegation『Delegation』にもドラムで参加する等、Goldとも関わりのある人物です。いわゆるアーベインでファンキーなこのシングルがOceanの作品としては久々にアメリカでリリースされると全米チャート103位・R&Bチャート7位まで上昇します。ここでGTO(の親会社のEpic)はすぐにアメリカ・マーケット向けのアルバムを出すよう要請、10日前後で急いでレコーディングされたのが『Nights(Feel Like Getting Down)』です。


A-1 Are You Ready
A-2 Don't Say Stop
A-3 Whatever Turns You On
A-4 Another Day Won't Matter
B-1 Nights(Feel Like Getting Down) [*Ocean-Martinez]
B-2 Who's Gonna Rock You
B-3 Stay The Night
B-4 Everlasting Love [*Ocean-Martinez-Linton]
B-5 Taking Chances

全曲プロデュースはNigel Martinez、ただし「Stay The Night」のみKen Goldのクレジットで、これは『City Limit』と同じテイク/ミックス(ただしフェイド・アウトが早い)を持ってきているからです(実は「Taking Chances」も『City Limit』と同じなんですがそれは…)。しかし、イギリスでの先行シングルとなった「Nights」(こちらはアルバム・エディット)・「Everlasting Love」以外は、リレコーディング3曲や再収録2曲のみならず純粋な新曲2曲もOcean-Gold作の楽曲で、結果的に作家Ken Goldの印象は強く残るアルバムとなっています。

「Are You Ready」「Whatever Turns You On」「Who's Gonna Rock You」はNigel Martinezのプロデュースで新たに録音し直され、よりシンプルでタイトな、いわゆるブラコン風スタイルに生まれ変わりました。新曲の「Don't Say Stop」「Another Day Won't Matter」などはどことなくRod TempertonミーツQuincy Jones的な雰囲気も感じられますが、全体としては『City Limit』ほど幕の内的な雰囲気ではなく、サウンドの統一感はこちらの方がとれているかと思います。『Nights』はイギリスではチャート・インしませんでしたが、アメリカでは152位、R&B27位を記録しました。「Another Day Won't Matter」はアメリカでショート・エディットでシングル・カットされ、R&B66位を記録しました。

同81年には「Whatever Turns You On」がDells(プロデュースはEugene Record)によってカバーされ、収録アルバムのタイトルも『Whatever Turns You On』としてリリースされました。さらには翌82年Ray, Goodman & Brownによって「Taking Chances」がカバーされ、アルバム『Open Up』に収録されます。このようにリアルタイムのカバー状況からも、『City Limits』『Nights』の楽曲がその手の筋にも評価されていたということがわかります。

なお、2015年に『City Limit』がFunkytowngroovesからCD化されておりますが、惜しいことになぜか本編の「Are You Ready」は『Nights』バージョンとなっており、『City Limit』バージョンはボーナストラックの中に7インチバージョンとして入ってますのでご注意を…。

(この『City Limit』はFunkytowngrooves盤のマスター使用のためM-6のバージョンが間違って収録されています)