2015年5月4日月曜日

「enoshima - Southern All Stars Golden Hits Medley」Produced by Z.DAN

サザン関連、今回は93年に突如リリースされたサザンのメガ・ミックス「江ノ島 〜 Southern All Stars Golden Hits Medley」です。

元々93年というのは、ミュージシャン側としても特に何も予定がなかったものの、何せデビュー15周年の年ですから、何もしない訳にもいかず、「エロティカ・セブン」「素敵なバーディー」という、83年以降禁じ手としていたバタ臭いラテン・ディスコ歌謡/ブルージーな三連ものを10年ぶりに解禁しました。しかし、アルバムを出すほどのモチベーションも無く、何とか会社側の企画で絞り出されたのが本作かと推察しますが、安易にベスト盤に行くこと無く、意欲的な企画が飛び出します。

どんな企画かというと、過去の録音をメドレー形式でフロア向け風にリミックスするというものでした。何しろこの作品、公式でも未だに全く制作体制が公になっておらず、謎のままです。リリース時の設定は「謎の集団Z団がサザンのマルチ・マスターを盗難しリミックス、(架空の・というかこの作品のためのレーベルである)『江ノ島レコード』からリリースする」というものでした。しかし、少なくとも福富幸宏さん・斎藤誠さんが後にそれぞれ公式サイトで参加作品として掲載されていたことがあり、小西康陽さんも福富さんが当作品に携わっていることをサイトに書かれていたこともあるため、このお二人は参加しているのが確定と見ていいでしょう。当作品が好評となり、翌年福富さんへブルーハーツのリミックス企画『KING OF MIX』プロデュースの依頼が来ることになります(その際アルバムの名義は「盗賊団」でした)。今でこそサザン関連に欠かせない存在の斎藤さんもこの時点ではサザン関連のレコーディングから離れて久しく(原由子さんの84年『Miss YOKOHAMADULT』の後は92年の同じく原さん「友達でいようね」の編曲とアニメ「眠れぬ夜の小さなお話」の音楽を担当した程度でした)、この作品も過去とは違う文脈で声がかかったのかもしれません。さらにさらに、今野多久郎さんもaxelleのプロフィールに本作プロデュースの記載があります。今野さんも桑田さん絡みでは90年代半ばまで様々共演があり、人脈の供給元としても重要な方です。

のっけから、八木グランドオーケストラによる「Dear John」のイントロのループに突き刺さるビート、桑田さんのライブの定番「スタンド、アリーナ、カーモーン」の叫び、そして始まる「勝手にシンドバッド」…と、最初からなかなか凝った作りです。マルチ・マスターからのミックスで、単純にドラム・ベース等を差し替えて繋ぐだけでなく、例えば「勝手にシンドバッド」で「そんなヒロシに騙されて」のギターや「My Foreplay Music」のピアノが登場したり、「マチルダBABY」のシンベに「ボディ・スペシャルII」、同じく「マチルダBABY」のサックスに乗せて「私はピアノ」のヴォーカルが展開されたりと、マッシュアップが93年の歌謡界で堂々と繰り広げられておりました。17分に渡って、最新曲「エロティカ・セブン」を含むサザンのヒット曲・人気曲が次から次へと登場します。


また、当作品のリリースは手順も凝っていました。まずはラジオOAを行い、8月に12インチのみを先行で1万枚限定リリース。即日完売という煽り方で、「急遽9月にCD・カセットのレギュラー・リリースが決定!」という、珍しく手の込んだ演出でした。12インチはビクターのクレジットがジャケット上記載が無く(規格番号でわかるんですけど)、盤レーベル上に「MANUFACTURED BY VICTOR ENTERTAINMENT INC., TOKYO, JAPAN」があるのみでした。CD・カセットのジャケットは「MANUFACTURED BY V. E. INC., TOKYO, JAPAN」と、それでも頑張った痕跡が見えます。CDのセカンド・プレスからは、帯が付き普通のビクターのCDっぽくなりました。


ちなみに、ジャケットのデザインはTYCOON GRAPHICSが担当しています(公式インタビューではCDのジャケットを手がけたのはこの後94年頃の作品と語られているようですが…)。

2015年5月2日土曜日

Delegation「The Promise Of Love」「Where Is The Love (We Used To Know)」and others [Ken Gold Songbook]

Ken Goldのシリーズ、いよいよGoldが長きに渡ってかかわることになるヴォーカル・グループ、Delegationの登場です。

76年、Real ThingのシングルをヒットさせたKen GoldとMicky Denneは自身の曲を歌わせる黒人ヴォーカルグループを探し、「Melody Maker」誌に広告を掲載しました。これを見たバーミンガム出身のLen Coleyが友人と申し込みに行ったのですが、「まともなリードヴォーカルを連れてこい」と門前払い、Coleyが改めて連れて行ったのが別の友人Ricky Baileyでした。ここでGoldがプロデュースを快諾、という流れのようです。Ricky Bailey・Len Coley・Roddy Harrisの3人グループはRumoursと名乗り、Goldは英Stateと契約します。

そしてGold-Denneコンビ作・Goldプロデュースで7月にリリースされたファースト・シングルが「The Promise Of Love」です。ストリングスがフィーチャーされたフィリー・ソウル風の、軽快で爽やかで、そして少し切ない仕上がりになっています。B面はGold-Denneクラシック「It Only Happens」をGold自らのプロデュースで取り上げていますが、非常に簡素な仕上がりで、ヴォーカル・グループのファースト・シングルなのにRicky Bailey1人しか登場しないというのはどういうことなのでしょうか(関連するかどうか不明ですが、「The Promise Of Love」のシングルは77年10月に再発され、B面が「Back Door Love」に差し代わっています)。このシングルは出来の良さとは裏腹に、チャート・インしませんでした。さらに、リリースの1ヶ月後、グループはDelegationに改名します。

翌77年2月にはセカンド・シングル「Where Is The Love (We Used To Know) / Back Door Love」がリリースされます。前作同様両面共にGold-Denneコンビ作ですが、プロデュースのクレジットもKen Gold/Mickey Denneと連名となりました。「Where Is The Love (We Used To Know)」はUKチャート22位まで上昇した名曲で、これまたストリングスと爽やかなリズム・セクションに乗せ、切ないメロディが繰り広げられます。Ricky Baileyもお気に入りだったのか、Delegationがソロ・プロジェクトとなりGoldの元を離れて以降の87年に再演しシングル・リリースしています。B面「Back Door Love」もフィリーもので、この頃はGold達はフィリー路線でこのグループを売り出したかったようですね。

7月リリースの3枚目のシングル「You've Been Doing Me Wrong / Baby You're My Mystery」もGold-Denneコンビ作で、プロデュースはGoldの単独表記に戻りました。また、ブラス/ストリングス・アレンジャーとしてLynton Naiffも両面にクレジットされています。こちらはチャート最高49位を記録しました。このシングルも前2作の系譜にある出来です。そしてこの前後で、Roddy Harrisがグループを離れ、Ray Pattersonが加入しています。

上記3枚のシングルを経て、11月にファースト・アルバム『The Promise Of Love』がリリースされました。

A-1 The Promise Of Love
A-2 You've Been Doing Me Wrong
A-3 We Can Make It [*Denne-Feeney]
A-4 Heaven Is By Your Side
A-5 Back Door Love
B-1 Where Is The Love (We Used To Know)
B-2 Soul Trippin'
B-3 You And Your Love
B-4 Someone Oughta Write A Song (About You Baby)
B-5 Steppin' Out Of Line

全編Goldのプロデュースで、1曲(A-3)を除き全てGold-Denneコンビ作のナンバーということで、既にキャリアのあったReal Thingとは違いトータルでGoldがバックアップしています。基本的にはシングル曲同様にフィリー風のサウンド中心ですが、終盤になると少しフィリーから離れます。特にB-4(76年8月にReal Thingが録音したもののお蔵入り、翌77年にRealisticsのシングルとしてリリースされた曲で、アレンジの方向性は一緒ですがDelegationの方が歌のせいか少し軽めで、若干洗練されている印象です)のドラムとベースのリズム・パターンなど、この後のGold関連作品につながる流れです

なお、このオリジナルUK盤『The Promise Of Love』は、一度もCD化されることはありませんでした(後述するUS盤の曲目に2曲加えたものが米Collectablesの96年CD『Golden Classics Edition』です)が、2015/5現在、iTunesでは上記UK盤の内容のみ(謎のボーナストラック付で)取り扱われており、さらに、State時代のシングルも取り揃えられています。
追記:2017年、遂に英bbrから40周年記念盤がCDでリリースされました。英盤の内容に米盤収録曲やシングル曲等を加えた、充実の内容です。








(こちらが謎のボーナス付配信版です)

2015年4月19日日曜日

サザンオールスターズ『Southern All Stars』


サザン関連、今回は90年リリースの『Southern All Stars』です。88年の復活以降のサザンは名実共に“国民的バンド”となり、メインストリームに祭り上げられる反面、『kamakura』の頃まではあったサブカル方面からの視線はほとんど無くなっていました(90年代に桑田さんがずっと思い悩むことになる部分です)。昔ながらのリスナーはこのアルバムでサザンを卒業した、といった声も良く聞かれます。さらにこれは私の根拠の無い妄想ですが、この頃はサザンの存続について色々内部的にも話があった状況ではなかったかと感じています。そんな最中にリリースされたアルバムではありますが、個人的に良く聴いたというそれだけの理由で、語ってみたいと思います。

確かレコーディング当初は原点回帰の、男っぽいアルバムにしたいと語っていた桑田さんですが、結果的にはポップで、何よりクールなアルバムになった感があります。音作りに関して言えば、制作体制が変わりました。それまではあくまでメンバーでのヘッド・アレンジが前提でしたが、本作からは87年春に桑田さんが訪問したHall & Oatesのレコーディング体制をベースにしたと思われる『Keisuke Kuwata』の手法を踏襲することになります。門倉聡さん・小林武史さん・松本晃彦さんといった外部キーボード・プレイヤー達と桑田さん、そして藤井丈司さんや菅原弘明さん等のプログラマーといった体制でしっかりアレンジ設計した後、必要に応じてメンバーの生音に差し替えるという流れになりました(出てくるお名前はほぼ皆藤井さん人脈なのが80年代中盤〜90年代の桑田さんサウンドの特徴と言えるでしょう)。また、今回はブラス、ストリングスも生音が使われていません。コーラスも基本は桑田さんの多重録音です。そのため、キーボードやコンピュータ主体の、良くも悪くもかなり落ち着いた印象のサウンドとなっています。おそらく、ソロの手法を踏襲したのは、サザン復活時の過去の名曲ばかり求められるような扱いから何とか抜け出し、現役感を出そうとする桑田さんの試みだったのではないでしょうか(88年にCD化された旧譜シングル達の好調な売れ行き、そして89年のアンソロジー『すいか』バカ売れを受け、桑田さんが渋谷陽一先生に面と向かって言われたのが“現役の懐メロバンド”という称号でした)。

M-1「フリフリ’65」は60年代半ばのお水でB級なGS〜和製ロックンロールの世界、といったところでしょうか。おそらくサザンの男性メンバー+小林さん、門倉さん、菅原さんでの男らしい演奏です。M-2「愛は花のように」はGipsy Kingsの桑田さん小林さん流解釈、といった感じです。そもそもサザンとは別に、このアルバム用セッション開始以前から映画「稲村ジェーン」用に録音が進められていたものでした。そういった事情から、小林さん藤井さんつながりと思われますが、小倉博和さんが初めて登場し華麗なガット・ギターを披露しています。M-3「悪魔の恋」は原点回帰でデルタ・ブルースっぽくやりたかったとのことでコンボ・スタイルの演奏ではありますが、あまり熱は感じられないというか、クールな印象です。M-4「忘れられたBig Wave」も映画「稲村ジェーン」用の録音なので桑田さんの多重アカペラという珍しいタイプの曲ですが、この時点で出来上がっていた映画用の2曲はどういう事情かサザンの作品としてこのアルバムに入ってしまいました。M-5YOU」は88年の桑田さんソロに近い路線ですが、この曲に限らずこのアルバムをサザン側にぐっと引き寄せているのは、結果的に大森さんのギターなんじゃないかと随所随所で感じます。この曲のリムと皮を同時に叩いているかのようなスネアは、私の霊感によれば藤井さんが個人的に所有していたあの方のサンプ(略
M-6「ナチカサヌ恋歌」は原さんヴォーカルコーナーで、沖縄ものに挑戦しています。M-7Oh, Girl」はHall & Oates的な一曲で、あまり語られませんが桑田さんのHall & Oatesからの影響って意外と楽曲やレコーディング方式など、様々なところで見られますよね。

M-8「女神達への情歌」も原点回帰もので、Little Featなど昔のサザンが持っていた熱気・ブルージーな感覚を、箱庭的打ち込みサウンドで再現するというコンセプトで作られました。この構造と同じく同じく箱庭の中のヴァーチャルな熱狂、ということでAV鑑賞を詞のテーマに選びサウンドとリンクさせていると思われます。唐突にこれをサザンのシングルで出すというのも冒険でした。M-9「政治家」は当時の小林さんとビートリーなサウンドを目指したらこうなった、という感じでしょうか。M-10MARIKO」は門倉さんや小林さんなどみんなで情報を詰め込むだけ詰め込んだ感のあるシャッフルものです。M-11「さよならベイビー」はホイチョイ映画「彼女が水着にきがえたら」のオファーに応え書き下ろされた曲です。松田さんも関口さんも最後にちょっと登場しますが基本的には打ち込みサウンドで、やはり大森さんの味わいのあるギターが楽曲をサザンたらしめている気が…。ちなみにシングル・バージョンとちょっとだけ違う、別ミックスのアルバム・バージョンです。M-12GORILLA」はTalking Heads風のほぼインスト曲で、大森さん作です。そして最後に急に6人揃ったような編成のシンプルなバラードM-13「逢いたくなったときに君はここにいない」でアルバムは幕を閉じます。「君」が何を指していたのかわかりませんが、結局この後も、サザンの歴史は続いていくのでした。



2015年4月18日土曜日

The Real Thing「You To Me Are Everything」「Can’t Get By Without You」[Ken Gold Songbook]


Ken Goldの、作家としても、そしてプロデューサーとしても初の大ヒット曲で、UKシングルチャート1位、USでも64位(R&Bチャート28位)まで上昇したのが1976年5月リリースのThe Real ThingYou To Me Are Everything」です。

The Real Thingはリバプール出身の4人組ヴォーカル・グループで、中心人物のEddie Amooはキャバーン・クラブ時代のBeatlesとも共演していたヴォーカルグループ、The Chantsを率いており、Real Thing結成時点で既にそれなりにキャリアがあったようです。また、グループを命名したのはマネージャーのTony Hallです。このTony Hallは50年代からDeccaのA&Rとして活躍し、60年代後半から独立しマネジメント業を営んでいました。Jimi Hendrixら黒人ミュージシャンのUKでのプロモーションを行っていたということです。

ちょうどReal ThingがPyeと契約し、ヒットを求められていたタイミングでTony HallにKen GoldとMicky Denneがコンタクトしてきたようです。Real Thingの公式サイトによれば、出版社が売り込んでくれなくてフラストレーションが溜まっていたGoldが持ち込んできたのが「You To Me Are Everything」で、ピンときたTony HallがすぐにGoldをプロデューサーにも起用し、録音されたということです。Goldは元Affinityのキーボード・プレイヤー、Lynton Naiffをストリングス・アレンジャーに起用。これ以降、Goldのプロデュース作品のストリングス、キーボードに欠かせない存在になります。

「You To Me Are Everything」は、Real ThingのメンバーEddie Amooが「Barry White風」と語っていますが、正にBarry White、それにJohnny Bristolの影響を感じる、流麗なストリングスをフィーチャーした爽やかなサウンドに切ないメロディで、確かにアメリカ以上にイギリスで受けそうな感じではあります。とはいえアメリカでも速攻でカバーされており、イギリスの翌月にアメリカでリリースされたのと同月、何とFrankie ValliバージョンがシングルのB面としてBob Gaudioプロデュースでリリースされています。それ以外にもBroadway、Revelationなどにカバーされ、同時にヒットしている人気の高い曲です。


「You To Me Are Everything」がヒットしたことで、同じ路線の第二弾を、ということでReal ThingはGold-Denneコンビ作の「Can't Get By Without You」を録音、同年8月にリリースします。
「Can't Get By Without You」はさらにBarry Whiteサウンドの影響がわかり易く出ており、日本盤シングルがリリースされた際、テイチクは「愛のテーマ77」となかなか身も蓋もない邦題をつけておりましたが、こちらも名曲ですね。UKチャートでは2位を記録しています。


この後Real Thingは2曲のヒットの勢いに乗ってファーストLP『Real Thing』をリリースします。Gold-Denneコンビ作・Goldプロデュースは先のシングル2曲のみで、あとはReal Thing側の意向でChris & Eddie Amoo兄弟作/アレンジ、Jerome Rimsonプロデュースとなりました(2019/12追記:実は76年8月にGold-Denne楽曲「Someone Oughta Write A Song」を録音したものの、お蔵入りになった経緯があるようです)。


この後、Real ThingはAmoo兄弟作ですがGold-Denne路線の「Love's Such A Wonderful Thing」「Lovin' You Is Like A Dream」等も収録したセルフ・プロデュース作『4 from 8』を経て、再度Ken Goldとタッグを組むこととなります。




2015年3月28日土曜日

Japanese Electric Foundation『Japanese Electric Foundation』

サザン関連、第2回は86年3月にリリースされました『Japanese Electric Foundation』です。そろそろリリースとなります『葡萄』のジャケットは岡田三郎助さんの「あやめの衣」をイメージしているそうですが、見れば見るほどどことなくTodd Rundgrenの香りもしてきますよね。

このアルバムはサザンメンバー野沢“毛ガニ”秀行さんのソロ作品ではあるものの、ビクター(インビテーション/タイシタ)ではなく東芝EMI(当時)の新興レーベルポップサイズからのリリース、さらには毛ガニさんのイメージであるパーカッション・コンガ・ラテンなどといったところからは距離のあるサウンドで、リリースから今に至るまで地味な扱いを余儀なくされている(サザンの公式サイトでもあっさりした説明があるだけです)、でもとっても素敵なアルバムです。


そもそもは80年代前半、順番にサザンのメンバーが自分名義のソロ作品をリリースしていく中、毛ガニさんは西麻布にある個人スタジオRunt Studioによく遊びに行っており、そんな中でアルバムの構想が生まれたようです。このスタジオの主は、荻窪ロフトの運営や錚々たるミュージシャンのマネジメントやディレクターを務めていた小川英則さんでした。毛ガニさんにとって小川さんはデビュー前のサザン、それ以前のマーブル・ヘッド・メッセンジャー在籍中から荻窪ロフトに出演していたこともあり、長きに渡る友人でした。小川さんはそれまでご自身が行っていた裏方的な立場ではなく、自ら表現したいという思いが強くなり、このスタジオを作ったようです。同じくロフト時代からの友人であり、第一期終盤ナイアガラなどの各種セッションや美乃家セントラル・ステイションなどにベーシストとして参加していた六川正彦さんをメンバーに迎え、85年2月に3人でRunt Studioにてデモの録音からスタート。そしてサザンの活動が一段落した85年10月、いよいよレコーディングが開始。上記3人以外にギターに六川さんと同じく美乃家セントラル・ステイションで活動していた土屋潔さん、ヴォーカルにH2O解散直後の中沢堅司さんを起用、さらに曲ごとにゲストを迎えるといったやり方でレコーディングされています。

プロジェクトの名前やコンセプトは英国の同じような名前のプロジェクトと似ていますが、こちらは基本的に中沢さんと小川さんのヴォーカルをメインに据えています。ストレートな往年の名曲というよりは、捻りの入った名曲達をJ.E.F.風に聴かせてくれます。この粋な選曲は、本作のディレクターにもクレジットされた小川さんのセンスでしょう。
アルバムのライナーは何と桑田佳祐さんが担当しています(実はレコーディングにも参加していた桑田さんですが、諸事情によりオールカットの憂き目にあい、代わりにライナーを担当することになったようです)。また、大瀧詠一さんの影響で変名好きだったという小川さんに “桜井鉄太郎”を命名したのも桑田さんでした。当時桑田さんが読んでいた漫画(「日本極道史」でしょうか)から取られているそうです。

本作の後、毛ガニさんとしては第2弾、第3弾の構想がすでにあったそうですが、パーカッション・プレイヤーの職業病ともいえるヘルニアで入院してしまい、J.E.F.自体活動休止となってしまいました。桜井さんはこの後ポップス狂の顔を持つ俳優高嶋政宏さんとReal Pop Organizersを結成(これはJ.E.F.の延長といったサウンドで、こちらの作品も名作です)。その後の活躍はご存知の通りです。ミュージシャン桜井鉄太郎を世に送り出したのは、他ならぬ毛ガニさんだった、とも言えます。



収録曲について簡単に…A-1「HEAR」は桜井さんヴォーカルの、J.E.F.オリジナル曲からスタート。A-2「OPEN MY EYES」はTodd Rundgren作。68年、Toddがソロ以前に在籍していたNuzz 1作目から。なにせ“Runt”Studioの主、桜井さんがTodd絡みの曲を選曲しないわけがありません。中沢さんと桜井さんのツイン・ヴォーカルです。このアルバムからシングルはリリースされませんでしたが、プロモ・シングルはこの曲と「LOVE AGENT」のカップリングでした。A-3「DON'T YOU CARE」はGary Beisbier、James William Guercio、Jimmy Holvay作。67年、The Buckinghamsのヒット曲です。リード・ヴォーカルは桜井さん。A-4「OPEN YOUR WINDOW」はHarry Nilsson作。69年の自身のアルバム『Harry』に収録されており、同年のElla Fitzgeraldや73年のFifth Dimensionのバージョンもありますね。リード・ヴォーカルは中沢さん。A-5「GREEN TAMBOURINE」はPaul Leka & Shelly Pinzコンビ作。67年、Lemon Pipersのシングルとしてリリースされた、全米1位の大ヒット曲です。リード・ヴォーカルは桜井さん。

B-1「LOVE AGENT」はA-1に続きJ.E.F.のオリジナル曲で、唯一の日本語詞です。リード・ヴォーカルは中沢さん。B-2「I CAN TELL WHEN CHRISTMAS IS NEAR」はSteveland Morris & Stevie Wonderコンビ(“&”というか“=”ですが)作のクリスマス・ソングで、70年のSmoky Robinson & The Miracles『The Season For Miracles』にStevie自身のプロデュースで入っています。サロン・ミュージックの竹中仁見さん・吉田仁さんによるツイン・ヴォーカル。B-3「IF I LOVE YOU」はThom Bell & Linda Creedコンビ作。70年にLittle Anthony & The ImperialsのシングルB面としてリリースされてますが、翌年Stylisticsのファースト・アルバムにてThom Bell自身の手でリメイクされており、今回はStylisticsバージョン寄りです。リード・ヴォーカルは中沢さん、コーラスでEPOさんが参加しています。B-4「RED CHAIR FADE AWAY」はRobin Gibb & Barry Gibbの兄弟コンビ作。67年、Bee Geesのサード・アルバム『Bee Gees’ 1st』収録曲で、リード・ヴォーカルは中沢さん。B-5、ラストは「TURN TO STONES」ということでRolling Stonesに捧げたJ.E.F.オリジナル曲で締めくくりとなります。リード・ヴォーカルには楠木勇有行さんと桑名晴子さんを迎えています。

2015年3月22日日曜日

Aretha Frankrin / Jackie Wilson / Love Machine「It Only Happens(When I Look At You)」[Ken Gold Songbook]

Ken Goldの作品を綴っていくシリーズ、今回は「It Only Happens(When I Look At You)」です。同じくイギリス出身のMicky Denneとの共作で、これ以降何年にも渡ってコンビで作曲が続く、最初期の作品と思われます。 

初出が誰のバージョンかはっきりしませんが、Aretha Frankrin7510月リリース『You』に収録(録音は6月〜9月)され、76年リリースのJackie WilsonNobody But You』(録音は756月〜9月)で前述の「You’re The Song」と共に取り上げられています。さらに75年にアメリカ録音であるにもかかわらずヨーロッパのみのリリースとなっていた謎のヴォーカル・グループLove Machine(78年には日本ビクター企画で本田 ”Hustle” 慧さんプロデュース・船山基紀さんアレンジでの録音もしている、LAのミスコンから選ばれたという不思議なグループですに「You’re The Song」と共にLPLove Machine』で取り上げられていますので、これは誰かに書き下ろしたというよりは、楽曲を出版社(Screen Gems Columbia)が売りに出したところ、ほぼ同時に大物含めて取り上げられたということなのでしょうか?(ただし、ArethaとLove Machineのバージョンには後述の通りどちらもGene Pageが関わっていそうですが…?

Jackie Wilson(アレンジはDavid Van De Pitte、プロデュースはCarl Davis & Sonny Sanders)とLove MachineLPにアレンジやプロデュースのクレジットがありませんが、同LPからのカットされた別の曲のシングルは両面ともGene Pageプロデュースの記載があります)のバージョンを聴くと両者は解釈が近い一方、ArethaのバージョンはBPMを落とし、西海岸の風を感じる爽やかで洗練された雰囲気の演奏と暑苦しいArethaのパフォーマンスを堪能できるテイクです。アレンジはGene Page、プロデュースはArethaJerry Wexlerによるものです。ArethaYou』は一度も公式にはCD化されておらず(数年前に話があったものの流れてしまったようです)、何とか公式な商品化をUniversalにはお願いしたいところであります(94年の英Expansionのコンピ『Soul Chasers - Volume 2』で「It Only Happens」のみCD化されています。板起こしではありますが…)。Nobody But You』は数回CDでリリースされており、iTunesでも当記事作成時点では発売中ですが、Love Machine』は全く再発の兆しがありません。

なお、Micky DenneGoldのデュオ作品『Denne And Gold』ライナーにはEugene Recordにも取り上げられたとの記載がありますが、これは前述の「Puttin’ It Down」と混同していると思われます。

さらに767月,Goldが長年にわたってプロデュースを務めることになるヴォーカル・グループRumoursのファースト・シングル「The Promise Of Love」のB面にも「It Only Happens」が収録されています。このバージョンも上記のうちではJackie WilsonLove Machineの解釈の延長といったところで、演奏もどちらかというと軽め、というかヴォーカル・グループなのにリードヴォーカルしか入っておらず、デモっぽい印象を受けます。このシングルは8月のセカンド・プレス以降、Rumoursの表記がDelegationに変更されることになります。








2015年3月15日日曜日

サザンオールスターズ『綺麗』

昨今もまだまだあれこれ話題の“国民的バンド”、サザンオールスターズ。そんなサザン関連作品の中でも、評価が世間的にいまいちとか、あまり触れられないけど個人的には思い入れのある作品を不定期でダラダラ語っていこうと思います。


今回は83年作『綺麗』です。その後のサザンや桑田さんを知ってる上でこれを聴いてもあまり見えてこないかもしれませんが、『熱い胸さわぎ』から『NUDE MAN』まで順を追って、いざこのアルバムを聴くとあからさまな路線変更に面食らうのではないでしょうか。そもそもは桑田さんやメンバーが既にそれまでのパターンというか、サザンに飽きてきたという危機感がきっかけだったようですが、サザン・ロックだジャズだ言ってたバンドがシンセ多用のニューウェーブ、ファンカラティーナの方向に向かってしまいました(曲単位では確かに前年に「走れ!!トーキョー・タウン」「NUDE MAN」とかあったんですけど)。もちろん従来のラテン歌謡やレゲエもの、三連の曲もありますが、どれも意図的に泥臭さを排除しています。バタ臭いラテン歌謡や直球のブルージーな三連ものは、93年まで10年間封印することとなります。

そしてどういう繋がりなのかわかりませんが(ジューシィ・フルーツ〜戸田誠司さんの流れでしょうか?)“湾岸系”の矢口博康さんの起用、またマニュアル演奏の電子楽器のみならず、リン・ドラムやオーバーハイムのDMX?といったドラム・マシンによる自動演奏の導入まで、とにかく新しいことづくめのアルバムでした。おそらく桑田さんの曲作りもあまりそれまでのわかりやすいパターンにならないように意識したのが災いしてか、今となっては“ピンとこない”扱いになっているような気もします。桑田さんの歌詞も、それまでと違い明確にストーリーやテーマを決めて、惚れたはれたのラブ・ソング以外のテーマで書かれているものが多くなっています。

A面からいきましょう。A-1「マチルダBABY」はシンセ・ベース(ライブでは原さんが弾いてますが、この録音はマイクロ・シンセを咬ませた関口さんによる演奏でしょう)から始まる、桑田さん曰くMen At Workを意識したという、でもちょっとファンカラティーナ調の一曲。矢口さんの多重サックスや、一瞬登場するシモンズなど、新境地に相応しいサウンドです。A-2「赤い炎の女」はラテン歌謡ですが前述のように洗練された雰囲気で、大森さんのガット・ギターがなかなか良い感じです。A-3「かしの樹の下で」は中華風メロディをシモンズにマイクロ・シンセにヴォコーダーに胡弓で固めるという、ニューウェーブならではなサウンドです。A-4「星降る夜のHARLOT」はレゲエですが、いつものような中南米直系ではなくイギリスのバンドあたりを経由したような感があります。A-5「ALLSTARS’ JUNGO」は2コードで関口さんのスラップが唸るファンキーな曲ですが、ドラムはおそらくリン・ドラムとシモンズと生ドラムを組み合わせているようで、なかなか凝っています。A-6「そんなヒロシに騙されて」は原さんヴォーカルのお遊び風ベンチャーズ歌謡で、間奏では男性ファンの熱い声援を入れたりしてますが、サウンドにストレンジさを出すためか、ドラムはそんなヒロシさんでなくマシンの演奏に聴こえます。A-7「NEVER FALL IN LOVE AGAIN」もマシンのビートとエレピをフィーチャーした、三連なのに全くこれまでと調子の違う、桑田さんの歌も含め繊細な、AOR調の仕上がりになっています。

B面、B-1「YELLOW NEW YORKER」はこれまでもありましたBilly Joel路線。B-2「MICO」はまたまたニューウェーブ、エスノ風でシモンズ、マイクロ・シンセ、矢口さんのサックスなどがサウンドを彩っています。B-3「サラ・ジェーン」はAOR、当時で言うソフト&メロウ路線でこれも「女流詩人の哀歌」など既存のジャンルではありますが、この後もしばらく力が入れられていくことになります。桑田さん以外の5人の味のある演奏に新田一郎セクションのブラス隊、八木のぶおさんのハーモニカの組み合わせがたまらない、個人的にはこのLPのベスト・トラックです。どなたの趣味か存じませんが、フジパシフィック出版の非売品25周年コンピレーションにも収録されていました。B-4「南たいへいよ音頭」は関口さん作・ヴォーカル曲ですが、これもBlue Rondo a la TurkやCulture Clubあたりのファンカラティーナを意識した曲のようです。矢口さんがサックスで参加、マシンのリズムも使われています。B-6「EMANON」もソフト&メロウな、アーベインな一曲で、こんな曲をアルバムと同日に、しかもアルバムと同じデザインのジャケットでシングルリリースするという行為自体がかなり挑発的でした。そして最後はB-7「旅姿六人衆」、突如「Hey Jude」をアメリカン・ロック風に仕立てたような熱いバラードが登場し〆となります。