2015年7月20日月曜日

SUGAR BABE『SONGS』のバージョン違い


SUGAR BABEの『SONGS』がリリースされて40周年なのだそうです。正直、40周年記念盤が出ると聞いた時はその後のことが頭をよぎり思わず意識が朦朧としてしまいましたが、それはさておきこのタイミングなので、個人的にとても思い入れのあるこの作品のバージョン違いをまとめることで『SONGS』への敬意を表したいと思います。
「やっぱり最初の笛吹銅次ミックスが一番」とおっしゃっていた山下達郎さんですが、4月末か5月初頭、30周年の際の新春放談での大瀧詠一さんのコメントが甦り、当初予定の内容から急遽リミックスへと内容変更となりました。今回のミックスはどなたが担当されたのでしょうか?40周年版についてはリリースされたら追記することにします(→追記しました)。
(※50周年関連も追記しました)



●SHOW

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
TATSURO FROM NIAGARA 2009
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 4
0th Anniversary Ultimate Edition
SONGS 50th Anniversary Edition

Version B … 吉田保による、ヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … ハイハットの定位が
Version Aと異なる、中村辰也・山下達郎による2015年の見通しと音立ちの良いミックス
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD

Version D … 1974年4月ニッポン放送第一スタジオで録られた通称“LFデモ”
DAWN IN NIAGARA in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version E … 94年版SONGS収録のLFデモ、エコーがかなり強い
SONGS 1994

Version F … 05年版SONGS収録のLFデモ、エコーが一番少ない
SONGS 2005

Version G … Version Fの冒頭カウントをオミット
SONGS 50th Anniversary Edition CD

Track … Version Cのカラオケ
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD


●DOWN TOWN

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
TATSURO FROM NIAGARA 2009
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition
SONGS 50th Anniversary Edition

Version B … シングル用ミックス、Version Aとギターやクラヴィネット・キーボードなどの定位が異なりフェイドアウトも早い
DOWN TOWN(Single)1975

Version C … 1981年に作られた、シンプルながらVersion Aより定位が整頓され、奥行きのあるミックス
MORE MORE NIAGARA FALL STARS in NIAGARA VOX
NIAGARA FALL STARS '81 REMIX SPECIAL in NIAGARA CD BOOK II

Version D … エコーが若干深めの1982年のシングル用バージョン(Version Aの2ミックス・マスターにエコーをかけている?
DOWN TOWN(Single)1982

Version E … クラヴィネットが別テイクの、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めの奥行きのあるミックス
SONGS 1986 
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version F … 1994年の山下達郎シングル「パレード」に収録された“オリジナル・シングル・バージョン”、
Version Bのマスターが現存しないため再現を狙って作成された…と白夜書房版「All About Niagara」に記載はあるが、Version Bとは定位が異なり各パートがセンター寄りでフェイドアウトも長い
パレード(Single)1994
DOWN TOWN(Single)2025

Version G … 中村辰也・山下達郎による2015年の見通しと音立ちの良いミックス
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD

Version H … 1975年7月17日文化放送「ハロー・パーティー」でのライブ・テイク
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD

Version I … 1976年1月28日仙台電力ホール(50周年盤で訂正)宮城県民会館でのライブ・テイク
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD
SONGS 50th Anniversary Edition CD

Track A … 2005年盤『SONGS』用に新たにミックス、クラヴィネットはVersion Eと同じもの
SONGS 2005

Track B … Version Gのカラオケ
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD



●蜃気楼の街

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS
 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition
SONGS 50th Anniversary Edition

Version B … 吉田保による、ヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年の見通しと音立ちの良いミックス
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD

Track … Version Cのカラオケ
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD


●風の世界

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition
SONGS 50th Anniversary Edition

Version B … イントロのギター・カッティングが半拍ずれており、Version A終盤のブレスもオミットされた、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年の見通しと音立ちの良いミックス
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD

◆Version D … 1975年9月12日中野公会堂でのライブ・テイク
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD


●ためいきばかり

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition
SONGS 50th Anniversary Edition

Version B … ブラスがある程度大きい、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年の見通しと音立ちの良いミックス
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD

Version D … ブラスがかなり大きくフィーチャーされた、未採用となった1975年のミックス
SONGS
 2005


いつも通り

Version A
SONGS 1975
DOWN TOWN(Single)1975
SONGS 1976
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
LIBRARY 〜Anthology 1973-2003〜
SONGS 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition
SONGS 50th Anniversary Edition
DOWN TOWN(Single)2025

Version B … ヴォーカルがダブルで大きめ・エコー深めの、吉田保による1981年のミックス
NIAGARA FALL STARS
NIAGARA FALL STARS in NIAGARA VOX
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA FALL STARS REMIX SPECIAL in NIAGARA CD BOOK 2

Version C … 吉田保による、ヴォーカル(Version Aと別テイク/Version Bで小さめに使われている方)大きめ・エコーさらに深めで奥行きのある1986年のミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986
The Very Best Of 大貫妙子
NEW BEST 大貫妙子

Version D … 中村辰也・山下達郎による2015年の見通しと音立ちの良いミックス
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD

Version E … 1974年4月16日池袋シアターグリーンでのライブ・テイク
SONGS 2005

Track … Version Dのカラオケ
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD



●すてきなメロディ

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition
SONGS 50th Anniversary Edition

Version B … フェイドアウトが長い、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのある1981年のミックス
NIAGARA FALL STARS
NIAGARA FALL STARS in NIAGARA VOX
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE
NIAGARA FALL STARS 2nd ISSUE in NIAGARA CD BOOK I 1986
NIAGARA FALL STARS REMIX SPECIAL in NIAGARA CD BOOK 2

Version C … 間奏頭のピアノが一台少なく、カズーが入り、フェイドアウトが長い吉田保によるヴォーカル大きめ・エコーさらに深めで奥行きのある1986年のミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version D … Version C作成後、(※96年4月10日大滝詠一セミナーの発言からこう書きましたが、既に84年の新春放談で消してしまったと話していました)笛吹銅次が誤ってマルチから消してしまったカズーをVersion Aにペーストしたバージョン
TATSURO FROM NIAGARA 2009

Version E … デモ・ミックスからのカズーをマルチに入れ込み作成された、中村辰也・山下達郎による2015年の見通しと音立ちの良いミックス
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD

Version F … 1976年3月31日荻窪ロフトでのライブ・テイク
SONGS 1994


今日はなんだか

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
TATSURO FROM NIAGARA 2009
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition
SONGS 50th Anniversary Edition

Version B … 吉田保による、ヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きがありピアノは
Version Aと別の、初期テイクを使っているミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年の見通しと音立ちの良いミックス
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD

Version D … Version Bと同じピアノをフィーチャーした、中村辰也・山下達郎によるミックスの“Original Piano Version”
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD

Version E … 1976年4月1日荻窪ロフトでのライブ・テイク
SONGS 1994

◆Version F … 1976年1月28日仙台電力ホール(50周年盤で訂正)宮城県民会館でのライブ・テイク
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD
SONGS 50th Anniversary Edition CD



●雨は手のひらにいっぱい

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
音壁JAPAN
TATSURO FROM NIAGARA 2009
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition
SONGS 50th Anniversary Edition

Version B … 冒頭カウント最後のハイハットが入り、間奏ギターがオミットされた、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年の見通しと音立ちの良いミックス
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD

Version D … 1976年4月1日荻窪ロフトでのライブ・テイク
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD

◆Track … Version Cのカラオケ
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD



●過ぎ去りし日々 “60's Dream”

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
TATSURO FROM NIAGARA 2009
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition
SONGS 50th Anniversary Edition

Version B … フェイドアウトの長い、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 中村辰也・山下達郎による2015年の見通しと音立ちの良いミックス
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD


●SUGAR

Version A
SONGS 1975
SONGS 1976
山下達郎 FROM ナイアガラ 1979
SONGS 1981
SONGS in NIAGARA VOX
SONGS 1994
SONGS 2005
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 2011 
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition
SONGS 50th Anniversary Edition

Version B … 冒頭の口笛は入らずいきなりドラムから始まり、
入りのギターも1本別テイク、Version Aに入っていないパーカッションや福生Excitersのノイズが入る・音戻り編集なし・最後の演奏のフェイドアウトが長いなど細部に違いのある、吉田保によるヴォーカル大きめ・エコー深めで奥行きのあるミックス
SONGS 1986
SONGS in NIAGARA CD BOOK I 1986

Version C … 
Version Aより一瞬早く始まり、一部Version Aに入らずVersion Bに入っていたパーカッションや福生Excitersのノイズが入っていたり・Version Bにも入っていなかったパーカッションが入っていたりする、中村辰也・山下達郎による2015年の見通しと音立ちの良いミックス
SONGS 40th Anniversary Ultimate Edition CD

Version D  未採用となった、
いきなりドラムから始まり、入りのギターも1本別テイク、パーカッションや福生Excitersのノイズが他バージョンより多く・エコーが深く、「Sugar」の呟きも福生Excitersのシャウトに差し替え、音戻り編集なし・「ユルシテーナ」ブレイクなしだがギターソロ終盤がカットされ、カットアウトで終わる「Wild Mix Version」
SONGS 2005

◆Version E … 
いきなりドラムから始まり、入りのギターも1本別テイク、パーカッションや福生ExcitersのノイズがVersion Dほどではないが多く・エコーが深く、音戻り編集なし・「ユルシテーナ」ブレイクなし、最後はカットアウトで終わる1975年の(デモ?・)「オリジナル・ミックス」
TATSURO FROM NIAGARA 2009

2015年7月5日日曜日

サザンオールスターズ『さくら』


今回はサザン98年作、『さくら』についてつらつらと…。

90年代に入りバブルも崩壊すると、桑田さんの目指す場所もそれまでと変わりました。大瀧詠一さんや細野晴臣さん、私的にも仲良くなっていた山下達郎さんのような、レコーディングを極めるミュージシャンズ・ミュージシャン的な存在にならんとしていたかと思います(96年『Young Love』は外部のキーボード・プレイヤーやアレンジャーを起用せず、初めて桑田さん一人が中心となって作られたアルバムでした)。しかし国民的バンドの中心的存在にはあまりそういった目線は注がれません。そんなギャップに対するストレスを抱えたまま不惑の40代に突入、その頃から作曲もスムーズにいかなくなったとのことで、ネガティブな思いが強くなっていたのではないでしょうか。そこに続く不況や世紀末など、当時のあれこれに感じられた終末感が混じり合うことで、このアルバム独特の閉塞感が出来上がったのではないか…というのが私の霊感による妄想です。ProToolsの導入もこのアルバムからで、桑田さん仕切りのレコーディングもより箱庭的になりました(しかしメンバーがいつもの担当楽器以外でも携わっているなど、新たな試みもあります)。

収録曲を一つ一つ見ても、求められているサザンをいかに裏切るかということに注力しているのがわかります。一見いつものサザンらしい曲も、桑田さんとしては嫌味な仕掛けを施したようで、決して面と向かって表さないところが桑田さんらしいというか、さすが国民的バンドを仕切るだけの狡猾さがあります。

リリース後の評価はというと、サザンらしいサザンを期待していたリスナーからは「?」、そして桑田さんが期待するような新規リスナーが増えるわけでもなく、どっちつかずな結果となってしまいました。途方にくれていた桑田さんに届いた「Oh!クラウディア」をもう一度、という声に導かれ、恐る恐る桑田さんが出した曲には「TSUNAMI」というタイトルが付けられていたのでした。

M-1NO-NO-YEAH/GO-GO-YEAH」はいきなりLed Zeppelinもので、恐らくギターやベースはタッチから察するに桑田さんではないでしょうか。M-2YARLEN SHUFFLE」はLeon Russell風ヴォーカルをフィーチャーしたラテン風味の曲ですが、桑田さんっぽいギターとブラス以外は打ち込みメインでクールな手触りがします。M-3「マイ フェラ レディ」は4人の桑田さんと4本のトロンボーンが絡む、久々のエロジャズ歌謡です。八木正生さんと離れて以降、ストレートなジャズものは控えてきた桑田さんでしたが、96年に島健さんと組んでからはこういったアプローチが復活しました。M-4LOVE AFFAIR」はBeach Boysのコンサートを意図したそうで、頭と終わりに歓声が入れられています。ポップな曲なのに、(タイアップのドラマ内容を踏まえただけとはいえ)歌詞は不倫がテーマってのも、病んでる感じがなんとなくBrian Wilsonぽいですね。M-5「爆笑アイランド」は歪んだギターと打ち込みの組み合わせに病んだ世間のスケッチシリーズの歌詞で、ちょっと力み過ぎな感じがします。M-6BLUE HEAVEN」は桑田さんのドブロ・ギターをフィーチャーしたClaptonもので、曲自体はとてもシンプルな作りです。M-7CRY  CRY」は当時の桑田さんのアイドル、Radioheadを意識したそうで、ドラム以外は基本桑田さんの演奏のようです。M-8「唐人物語」は原さんヴォーカルコーナーで、Beatlesの開放弦のあの曲っぽく作り始めたら、全然違う和の香りのする曲になったということです。

M-9「湘南SEPTEMBER」はEagles系ワルツで、“あの頃を生きた街”湘南を回顧する歌詞になってます。M-10PARADISE」はソウル・ディスコ・ヒップホップ的な方向を向いていますが、ちょっとこれも肩に力が入り過ぎてるかなという印象を受けます。M-11「私の世紀末カルテ」は桑田さんソロ『孤独の太陽』の続編のようなアコギ弾き語りで延々病んでる風な中年男性の独白が歌われます。M-12SAUDADE」は小倉博和さんのガット・ギターをフィーチャーしたボッサ風AOR歌謡といったところでしょうか。抑えた桑田さんの歌含め、個人的にはこのアルバム中でも出色の出来だと思います。M-13GIMME SOME LOVIN’」はSMがテーマのGSもの。M-14SEA SIDE WOMAN BLUES」はマヒナスターズ風の和製コーラスもので、ガット・ギターとラップ・スティールは小倉さん、そして、左チャンネルのウクレレはクレジットはありませんが、先のサザン欠席中にウクレレ愛好家に変貌を遂げた関口さんによる演奏のようです。M-15(The Return of) 01MESSENGER」はシングル「01MESSENGER」のアルバム用リミックス(角谷仁宣さんと林憲一さんがクレジットされています)で、ドラムンベースに変貌しましたM-16「素敵な夢を叶えましょう」は『人気者で行こう』『Young Love』と同じく、桑田さんとオーケストラの組み合わせでの締めくくりです。どんな立場でも、“夢を叶える”ということは、なかなか難しいものです。




2015年7月4日土曜日

The Realistics「Someone Oughta Write A Song About You Baby」「The Magic You Do」「So Sad」and others [Ken Gold Songbook]

(2019/12 文末にReal Thingのバージョンについて取り急ぎの追記をしました)

Realisticsといえば「Puttin' It Down」で既出のヴォーカルグループですが、77年になりGoldがReal ThingやDelegationを手がけヒットを生む中で、再び楽曲提供とプロデュースを担当することになります。77年に英エピックから今回紹介のシングルが3枚、計5曲がリリースされますが、アルバムのリリースはありませんでした。

77年4月にリリースされたのが「Someone Oughta Write A Song About You Baby」c/w 「Unchain Me」です。両面ともバリトンのリードをフィーチャーし、A面がアップ・B面がスローの組み合わせです。この「Someone Oughta Write A Song About You Baby」、特筆すべきはリズム・パターンです。日本ではシカゴ・ソウル(にニューオーリンズ的なフレーバーを組み合わせた?)の影響でこのもう少し後から何曲か出現することになるのですが、影響元が同じかどうかはともかく、イギリスと日本で同時期に同じようなことにトライする似たような人がいたというのは非常に面白いものです。ブラス・ストリングスアレンジとしてLynton Naiffがクレジットされています。後にGoldはDelegationにもカバーさせ『The Promise Of Love』に収録したのは前述の通りですが、Delegationの方が若干演奏がタイトになっています。また、79年4月にはGoldプロデュースでSpookeyというマンチェスターのグループがシングル・リリースしています(「Someone Oughta' Write A Song About You Baby」c/w 「Times」、どちらもGold-Denne作品です)。このバージョンはドラムが四つ打ち、ブラスも賑やかで、また違ったポップな印象を受けます。

7月には「Love Vibrations」c/w「The Magic That You Do」がリリースされます。このB面扱いの「The Magic That You Do」、リードのファルセット、ギターのカッティング、シンベ、浮遊感のあるエコーなどの組み合わせの、洗練されたかなり好みな曲です。このシングルにはProduced by Ken Goldの記載しかありませんが、後述のシングルにはアレンジャーとしてLynton Naiffがクレジットされています。

10月に最後のシングルとしてリリースされたのが「So Sad」で、B面は前作同様「The Magic That You Do」が収録されています(時間・予算が無かった?)。「So Sad」は語りから始まるスウィート・ソウルもので、こちらもファルセットのリードが映えるメロウなGoldらいしい曲と言えるでしょう。アレンジはB面同様Lynton Naiff。Goldのスウィート・ソウルものでの最高傑作は翌年、Delegationのシングルとしてリリースされることになります。

残念ながらこの3枚のシングルを持ってGoldはRealisticsと離れてしまいますが、アルバムなども残していってほしかったですね。


(2019/12 追記)
「Someone Oughta Write A Song」は、もともとReal Thingが「Can't Get By Without You」の後にGold-Denne作品の第三弾として76年8月に録音していたものの、自作曲志向があったReal Thing側の意向でお蔵入りになってしまった楽曲だったようです(リズムトラックはRealsiticsのものとほぼ同じに聞こえます)。2017年にKen Goldがマスターのコピーを発掘し、この度、リリースの運びとなったとのこと。
こちらのオフィシャルサイトの記事に経緯があります。
http://therealthingofficial.com/missing-for-43-years-the-real-thing-release-a-new-single-from-1976/








2015年5月4日月曜日

「enoshima - Southern All Stars Golden Hits Medley」Produced by Z.DAN

サザン関連、今回は93年に突如リリースされたサザンのメガ・ミックス「江ノ島 〜 Southern All Stars Golden Hits Medley」です。

元々93年というのは、ミュージシャン側としても特に何も予定がなかったものの、何せデビュー15周年の年ですから、何もしない訳にもいかず、「エロティカ・セブン」「素敵なバーディー」という、83年以降禁じ手としていたバタ臭いラテン・ディスコ歌謡/ブルージーな三連ものを10年ぶりに解禁しました。しかし、アルバムを出すほどのモチベーションも無く、何とか会社側の企画で絞り出されたのが本作かと推察しますが、安易にベスト盤に行くこと無く、意欲的な企画が飛び出します。

どんな企画かというと、過去の録音をメドレー形式でフロア向け風にリミックスするというものでした。何しろこの作品、公式でも未だに全く制作体制が公になっておらず、謎のままです。リリース時の設定は「謎の集団Z団がサザンのマルチ・マスターを盗難しリミックス、(架空の・というかこの作品のためのレーベルである)『江ノ島レコード』からリリースする」というものでした。しかし、少なくとも福富幸宏さん・斎藤誠さんが後にそれぞれ公式サイトで参加作品として掲載されていたことがあり、小西康陽さんも福富さんが当作品に携わっていることをサイトに書かれていたこともあるため、このお二人は参加しているのが確定と見ていいでしょう。当作品が好評となり、翌年福富さんへブルーハーツのリミックス企画『KING OF MIX』プロデュースの依頼が来ることになります(その際アルバムの名義は「盗賊団」でした)。今でこそサザン関連に欠かせない存在の斎藤さんもこの時点ではサザン関連のレコーディングから離れて久しく(原由子さんの84年『Miss YOKOHAMADULT』の後は92年の同じく原さん「友達でいようね」の編曲とアニメ「眠れぬ夜の小さなお話」の音楽を担当した程度でした)、この作品も過去とは違う文脈で声がかかったのかもしれません。さらにさらに、今野多久郎さんもaxelleのプロフィールに本作プロデュースの記載があります。今野さんも桑田さん絡みでは90年代半ばまで様々共演があり、人脈の供給元としても重要な方です。

のっけから、八木グランドオーケストラによる「Dear John」のイントロのループに突き刺さるビート、桑田さんのライブの定番「スタンド、アリーナ、カーモーン」の叫び、そして始まる「勝手にシンドバッド」…と、最初からなかなか凝った作りです。マルチ・マスターからのミックスで、単純にドラム・ベース等を差し替えて繋ぐだけでなく、例えば「勝手にシンドバッド」で「そんなヒロシに騙されて」のギターや「My Foreplay Music」のピアノが登場したり、「マチルダBABY」のシンベに「ボディ・スペシャルII」、同じく「マチルダBABY」のサックスに乗せて「私はピアノ」のヴォーカルが展開されたりと、マッシュアップが93年の歌謡界で堂々と繰り広げられておりました。17分に渡って、最新曲「エロティカ・セブン」を含むサザンのヒット曲・人気曲が次から次へと登場します。


また、当作品のリリースは手順も凝っていました。まずはラジオOAを行い、8月に12インチのみを先行で1万枚限定リリース。即日完売という煽り方で、「急遽9月にCD・カセットのレギュラー・リリースが決定!」という、珍しく手の込んだ演出でした。12インチはビクターのクレジットがジャケット上記載が無く(規格番号でわかるんですけど)、盤レーベル上に「MANUFACTURED BY VICTOR ENTERTAINMENT INC., TOKYO, JAPAN」があるのみでした。CD・カセットのジャケットは「MANUFACTURED BY V. E. INC., TOKYO, JAPAN」と、それでも頑張った痕跡が見えます。CDのセカンド・プレスからは、帯が付き普通のビクターのCDっぽくなりました。


ちなみに、ジャケットのデザインはTYCOON GRAPHICSが担当しています(公式インタビューではCDのジャケットを手がけたのはこの後94年頃の作品と語られているようですが…)。

2015年5月2日土曜日

Delegation「The Promise Of Love」「Where Is The Love (We Used To Know)」and others [Ken Gold Songbook]

Ken Goldのシリーズ、いよいよGoldが長きに渡ってかかわることになるヴォーカル・グループ、Delegationの登場です。

76年、Real ThingのシングルをヒットさせたKen GoldとMicky Denneは自身の曲を歌わせる黒人ヴォーカルグループを探し、「Melody Maker」誌に広告を掲載しました。これを見たバーミンガム出身のLen Coleyが友人と申し込みに行ったのですが、「まともなリードヴォーカルを連れてこい」と門前払い、Coleyが改めて連れて行ったのが別の友人Ricky Baileyでした。ここでGoldがプロデュースを快諾、という流れのようです。Ricky Bailey・Len Coley・Roddy Harrisの3人グループはRumoursと名乗り、Goldは英Stateと契約します。

そしてGold-Denneコンビ作・Goldプロデュースで7月にリリースされたファースト・シングルが「The Promise Of Love」です。ストリングスがフィーチャーされたフィリー・ソウル風の、軽快で爽やかで、そして少し切ない仕上がりになっています。B面はGold-Denneクラシック「It Only Happens」をGold自らのプロデュースで取り上げていますが、非常に簡素な仕上がりで、ヴォーカル・グループのファースト・シングルなのにRicky Bailey1人しか登場しないというのはどういうことなのでしょうか(関連するかどうか不明ですが、「The Promise Of Love」のシングルは77年10月に再発され、B面が「Back Door Love」に差し代わっています)。このシングルは出来の良さとは裏腹に、チャート・インしませんでした。さらに、リリースの1ヶ月後、グループはDelegationに改名します。

翌77年2月にはセカンド・シングル「Where Is The Love (We Used To Know) / Back Door Love」がリリースされます。前作同様両面共にGold-Denneコンビ作ですが、プロデュースのクレジットもKen Gold/Mickey Denneと連名となりました。「Where Is The Love (We Used To Know)」はUKチャート22位まで上昇した名曲で、これまたフィリー風のストリングスと爽やかなリズム・セクションに乗せ、切ないメロディが繰り広げられます。Ricky Baileyもお気に入りだったのか、Delegationがソロ・プロジェクトとなりGoldの元を離れて以降の87年に再演しシングル・リリースしています。B面「Back Door Love」もフィリーもので、この頃はGold達はフィリー路線でこのグループを売り出したかったようですね。

7月リリースの3枚目のシングル「You've Been Doing Me Wrong / Baby You're My Mystery」もGold-Denneコンビ作で、プロデュースはGoldの単独表記に戻りました。また、ブラス/ストリングス・アレンジャーとしてLynton Naiffも両面にクレジットされています。こちらはチャート最高49位を記録しました。このシングルも前2作の系譜にある出来です。そしてこの前後で、Roddy Harrisがグループを離れ、Ray Pattersonが加入しています。

上記3枚のシングルを経て、11月にファースト・アルバム『The Promise Of Love』がリリースされました。

A-1 The Promise Of Love
A-2 You've Been Doing Me Wrong
A-3 We Can Make It [*Denne-Feeney]
A-4 Heaven Is By Your Side
A-5 Back Door Love
B-1 Where Is The Love (We Used To Know)
B-2 Soul Trippin'
B-3 You And Your Love
B-4 Someone Oughta Write A Song (About You Baby)
B-5 Steppin' Out Of Line

全編Goldのプロデュースで、1曲(A-3)を除き全てGold-Denneコンビ作のナンバーということで、既にキャリアのあったReal Thingとは違いトータルでGoldがバックアップしています。基本的にはシングル曲同様にフィリー風のサウンド中心ですが、終盤になると少しフィリーから離れます。特にB-4(76年8月にReal Thingが録音したもののお蔵入り、翌77年にRealisticsのシングルとしてリリースされた曲で、アレンジの方向性は一緒ですがDelegationの方が歌のせいか少し軽めで、若干洗練されている印象です)のドラムとベースのリズム・パターンなど、この後のGold関連作品につながる流れです

なお、このオリジナルUK盤『The Promise Of Love』は、一度もCD化されることはありませんでした(後述するUS盤の曲目に2曲加えたものが米Collectablesの96年CD『Golden Classics Edition』です)が、2015/5現在、iTunesでは上記UK盤の内容のみ(謎のボーナストラック付で)取り扱われており、さらに、State時代のシングルも取り揃えられています。
追記:2017年、遂に英bbrから40周年記念盤がCDでリリースされました。英盤の内容に米盤収録曲やシングル曲等を加えた、充実の内容です。








(こちらが謎のボーナス付配信版です)

2015年4月19日日曜日

サザンオールスターズ『Southern All Stars』


サザン関連、今回は90年リリースの『Southern All Stars』です。88年の復活以降のサザンは名実共に“国民的バンド”となり、メインストリームに祭り上げられる反面、『kamakura』の頃まではあったサブカル方面からの視線はほとんど無くなっていました(90年代に桑田さんがずっと思い悩むことになる部分です)。昔ながらのリスナーはこのアルバムでサザンを卒業した、といった声も良く聞かれます。さらにこれは私の根拠の無い妄想ですが、この頃はサザンの存続について色々内部的にも話があった状況ではなかったかと感じています。そんな最中にリリースされたアルバムではありますが、個人的に良く聴いたというそれだけの理由で、語ってみたいと思います。

確かレコーディング当初は原点回帰の、男っぽいアルバムにしたいと語っていた桑田さんですが、結果的にはポップで、何よりクールなアルバムになった感があります。音作りに関して言えば、制作体制が変わりました。それまではあくまでメンバーでのヘッド・アレンジが前提でしたが、本作からは87年春に桑田さんが訪問したHall & Oatesのレコーディング体制をベースにしたと思われる『Keisuke Kuwata』の手法を踏襲することになります。門倉聡さん・小林武史さん・松本晃彦さんといった外部キーボード・プレイヤー達と桑田さん、そして藤井丈司さんや菅原弘明さん等のプログラマーといった体制でしっかりアレンジ設計した後、必要に応じてメンバーの生音に差し替えるという流れになりました(出てくるお名前はほぼ皆藤井さん人脈なのが80年代中盤〜90年代の桑田さんサウンドの特徴と言えるでしょう)。また、今回はブラス、ストリングスも生音が使われていません。コーラスも基本は桑田さんの多重録音です。そのため、キーボードやコンピュータ主体の、良くも悪くもかなり落ち着いた印象のサウンドとなっています。おそらく、ソロの手法を踏襲したのは、サザン復活時の過去の名曲ばかり求められるような扱いから何とか抜け出し、現役感を出そうとする桑田さんの試みだったのではないでしょうか(88年にCD化された旧譜シングル達の好調な売れ行き、そして89年のアンソロジー『すいか』バカ売れを受け、桑田さんが渋谷陽一先生に面と向かって言われたのが“現役の懐メロバンド”という称号でした)。

M-1「フリフリ’65」は60年代半ばのお水でB級なGS〜和製ロックンロールの世界、といったところでしょうか。おそらくサザンの男性メンバー+小林さん、門倉さん、菅原さんでの男らしい演奏です。M-2「愛は花のように」はGipsy Kingsの桑田さん小林さん流解釈、といった感じです。そもそもサザンとは別に、このアルバム用セッション開始以前から映画「稲村ジェーン」用に録音が進められていたものでした。そういった事情から、小林さん藤井さんつながりと思われますが、小倉博和さんが初めて登場し華麗なガット・ギターを披露しています。M-3「悪魔の恋」は原点回帰でデルタ・ブルースっぽくやりたかったとのことでコンボ・スタイルの演奏ではありますが、あまり熱は感じられないというか、クールな印象です。M-4「忘れられたBig Wave」も映画「稲村ジェーン」用の録音なので桑田さんの多重アカペラという珍しいタイプの曲ですが、この時点で出来上がっていた映画用の2曲はどういう事情かサザンの作品としてこのアルバムに入ってしまいました。M-5YOU」は88年の桑田さんソロに近い路線ですが、この曲に限らずこのアルバムをサザン側にぐっと引き寄せているのは、結果的に大森さんのギターなんじゃないかと随所随所で感じます。この曲のリムと皮を同時に叩いているかのようなスネアは、私の霊感によれば藤井さんが個人的に所有していたあの方のサンプ(略
M-6「ナチカサヌ恋歌」は原さんヴォーカルコーナーで、沖縄ものに挑戦しています。M-7Oh, Girl」はHall & Oates的な一曲で、あまり語られませんが桑田さんのHall & Oatesからの影響って意外と楽曲やレコーディング方式など、様々なところで見られますよね。

M-8「女神達への情歌」も原点回帰もので、Little Featなど昔のサザンが持っていた熱気・ブルージーな感覚を、箱庭的打ち込みサウンドで再現するというコンセプトで作られました。この構造と同じく同じく箱庭の中のヴァーチャルな熱狂、ということでAV鑑賞を詞のテーマに選びサウンドとリンクさせていると思われます。唐突にこれをサザンのシングルで出すというのも冒険でした。M-9「政治家」は当時の小林さんとビートリーなサウンドを目指したらこうなった、という感じでしょうか。M-10MARIKO」は門倉さんや小林さんなどみんなで情報を詰め込むだけ詰め込んだ感のあるシャッフルものです。M-11「さよならベイビー」はホイチョイ映画「彼女が水着にきがえたら」のオファーに応え書き下ろされた曲です。松田さんも関口さんも最後にちょっと登場しますが基本的には打ち込みサウンドで、やはり大森さんの味わいのあるギターが楽曲をサザンたらしめている気が…。ちなみにシングル・バージョンとちょっとだけ違う、別ミックスのアルバム・バージョンです。M-12GORILLA」はTalking Heads風のほぼインスト曲で、大森さん作です。そして最後に急に6人揃ったような編成のシンプルなバラードM-13「逢いたくなったときに君はここにいない」でアルバムは幕を閉じます。「君」が何を指していたのかわかりませんが、結局この後も、サザンの歴史は続いていくのでした。



2015年4月18日土曜日

The Real Thing「You To Me Are Everything」「Can’t Get By Without You」[Ken Gold Songbook]


Ken Goldの、作家としても、そしてプロデューサーとしても初の大ヒット曲で、UKシングルチャート1位、USでも64位(R&Bチャート28位)まで上昇したのが1976年5月リリースのThe Real ThingYou To Me Are Everything」です。

The Real Thingはリバプール出身の4人組ヴォーカル・グループで、中心人物のEddie Amooはキャバーン・クラブ時代のBeatlesとも共演していたヴォーカルグループ、The Chantsを率いており、Real Thing結成時点で既にそれなりにキャリアがあったようです。また、グループを命名したのはマネージャーのTony Hallです。このTony Hallは50年代からDeccaのA&Rとして活躍し、60年代後半から独立しマネジメント業を営んでいました。Jimi Hendrixら黒人ミュージシャンのUKでのプロモーションを行っていたということです。

ちょうどReal ThingがPyeと契約し、ヒットを求められていたタイミングでTony HallにKen GoldとMicky Denneがコンタクトしてきたようです。Real Thingの公式サイトによれば、出版社が売り込んでくれなくてフラストレーションが溜まっていたGoldが持ち込んできたのが「You To Me Are Everything」で、ピンときたTony HallがすぐにGoldをプロデューサーにも起用し、録音されたということです。Goldは元Affinityのキーボード・プレイヤー、Lynton Naiffをストリングス・アレンジャーに起用。これ以降、Goldのプロデュース作品のストリングス、キーボードに欠かせない存在になります。

「You To Me Are Everything」は、Real ThingのメンバーEddie Amooが「Barry White風」と語っていますが、正にBarry White、それにJohnny Bristolの影響を感じる、流麗なストリングスをフィーチャーした爽やかなサウンドに切ないメロディで、確かにアメリカ以上にイギリスで受けそうな感じではあります。とはいえアメリカでも速攻でカバーされており、イギリスの翌月にアメリカでリリースされたのと同月、何とFrankie ValliバージョンがシングルのB面としてBob Gaudioプロデュースでリリースされています。それ以外にもBroadway、Revelationなどにカバーされ、同時にヒットしている人気の高い曲です。


「You To Me Are Everything」がヒットしたことで、同じ路線の第二弾を、ということでReal ThingはGold-Denneコンビ作の「Can't Get By Without You」を録音、同年8月にリリースします。
「Can't Get By Without You」はさらにBarry Whiteサウンドの影響がわかり易く出ており、日本盤シングルがリリースされた際、テイチクは「愛のテーマ77」となかなか身も蓋もない邦題をつけておりましたが、こちらも名曲ですね。UKチャートでは2位を記録しています。


この後Real Thingは2曲のヒットの勢いに乗ってファーストLP『Real Thing』をリリースします。Gold-Denneコンビ作・Goldプロデュースは先のシングル2曲のみで、あとはReal Thing側の意向でChris & Eddie Amoo兄弟作/アレンジ、Jerome Rimsonプロデュースとなりました(2019/12追記:実は76年8月にGold-Denne楽曲「Someone Oughta Write A Song」を録音したものの、お蔵入りになった経緯があるようです)。


この後、Real ThingはAmoo兄弟作ですがGold-Denne路線の「Love's Such A Wonderful Thing」「Lovin' You Is Like A Dream」等も収録したセルフ・プロデュース作『4 from 8』を経て、再度Ken Goldとタッグを組むこととなります。