2015年10月18日日曜日

Billy Ocean 「Are You Ready」「Whatever Turns You On」「Taking Chances」「Another Day Won't Matter」and others [Ken Gold Songbook]

Billy Oceanは、トリニダード出身・ロンドン育ち、75年(本名Les Charles名義では71年デビューですが…)のデビュー以降、イギリスやヨーロッパ諸国で何曲ものシングル・ヒットを放っていたシンガーでした。76年の「Love Really Hurts Without You」は全米22位、「L. O. D. (Love On Deliverly)」は106位・R&B55位のヒットを記録しています。その後ややセールスが落ち着いてきたことで、それまでの60年代モータウン等の影響が濃厚な、当時としてもややオールド・ファッションな路線から、よりコンテンポラリーなものにシフトしたシングルが79年9月リリースの「American Hearts」c/w「My Love」でした(12インチも作られ、こちらはA面は別ミックスです)。両面ともプロデュースがKen Gold、ストリングス・ブラスアレンジをLynton Naiffが担当しています。この流れで11月にはGold-Oceanコンビ作の「Are You Ready」c/w「Maybe Tonight」が同じくGoldプロデュース、Lynton Naiffのストリングス・ブラスアレンジで7インチ・12インチ(A面別ミックス)の2種リリースされます。その流れで、80年初頭にリリースされたのがアルバム『City Limit』でした。


A-1 Stay The Night
A-2 What You Doing To Me
A-3 Who's Gonna Rock You
A-4 Maybe Tonight
A-5 City Limit [*Ocean-McKay]
B-1 Are You Ready
B-2 Whatever Turns You On
B-3 Taking Chances
B-4 American Hearts [*Bugatti-Musker]

2曲を除きOcean-Goldコンビ作(シングルと順番がひっくり返りました)、プロデュースはKen Gold(A-5のみDave McKay)、ストリングス・ブラスアレンジはLynton Naiffという布陣で制作されました。

「Stey The Night」もそうかもしれませんが、「Are You Ready」はあからさまにMichael Jackson(にKC & The Sunshine Band を合わせたような…)的なサウンドで、これらを後にMichael実姉のLa Toya Jacksonがカバーするのですから世の中わからないものです。「Whatever Turns You On」も軽めですがメロウなミディアムで、これこそいかにもKen Goldらしい一曲と言えるでしょう。「Taking Chances」は隙間多めの演奏にソウルフルなBillyのヴォーカルが光るバラードです。また、「Maybe Tonight」などはAOR風というか、あまり黒っぽくありませんがこれまたメロウなバラードです。「Who's Gonna Rock You」は後にカバーされヒットを記録することになりますが、さもありなんと言うべきポップな一曲です。

残念ながら『City Limit』はチャート・インを逃します。80年4月には「Stay The Night」c/w「What You Doing To Me」が7インチ・12インチ(A面は別ミックス)でシングル・カットされ、イギリスではチャート・インを逃しますが、フランスやドイツではヒットを記録しています。

その後、初夏には元Nolan SistersことNolansが「Who's Gonna Rock You」をEpic2作目のアルバム『Making Waves』でカバー、10月にはシングルとしてリリースし、イギリスで12位のヒットを記録します。また、同年6月にLa Toya Jacksonがファースト・ソロ『La Toya Jackson』で「Are You Ready」をカバー。9月にはイギリスで「Stay The Night」をシングル・リリース、81年3月リリースの『My Special Love』に収録されました。

81年4月、新たにリリースされたBilly Oceanのシングル「Nights (Feel Like Getting Down)」c/w「Everlasting Love」はプロデュースがNigel Martinezで、作曲もMartinez-Oceanコンビによるものです。Martinezは78年にStateからソロ・ファースト・アルバムをリリースする傍らReal Thing『Step Into Our World』でドラマーとして参加しており、81年にはDelegation『Delegation』にもドラムで参加する等、Goldとも関わりのある人物です。いわゆるアーベインでファンキーなこのシングルがOceanの作品としては久々にアメリカでリリースされると全米チャート103位・R&Bチャート7位まで上昇します。ここでGTO(の親会社のEpic)はすぐにアメリカ・マーケット向けのアルバムを出すよう要請、10日前後で急いでレコーディングされたのが『Nights(Feel Like Getting Down)』です。


A-1 Are You Ready
A-2 Don't Say Stop
A-3 Whatever Turns You On
A-4 Another Day Won't Matter
B-1 Nights(Feel Like Getting Down) [*Ocean-Martinez]
B-2 Who's Gonna Rock You
B-3 Stay The Night
B-4 Everlasting Love [*Ocean-Martinez-Linton]
B-5 Taking Chances

全曲プロデュースはNigel Martinez、ただし「Stay The Night」のみKen Goldのクレジットで、これは『City Limit』と同じテイク/ミックス(ただしフェイド・アウトが早い)を持ってきているからです(実は「Taking Chances」も『City Limit』と同じなんですがそれは…)。しかし、イギリスでの先行シングルとなった「Nights」(こちらはアルバム・エディット)・「Everlasting Love」以外は、リレコーディング3曲や再収録2曲のみならず純粋な新曲2曲もOcean-Gold作の楽曲で、結果的に作家Ken Goldの印象は強く残るアルバムとなっています。

「Are You Ready」「Whatever Turns You On」「Who's Gonna Rock You」はNigel Martinezのプロデュースで新たに録音し直され、よりシンプルでタイトな、いわゆるブラコン風スタイルに生まれ変わりました。新曲の「Don't Say Stop」「Another Day Won't Matter」などはどことなくRod TempertonミーツQuincy Jones的な雰囲気も感じられますが、全体としては『City Limit』ほど幕の内的な雰囲気ではなく、サウンドの統一感はこちらの方がとれているかと思います。『Nights』はイギリスではチャート・インしませんでしたが、アメリカでは152位、R&B27位を記録しました。「Another Day Won't Matter」はアメリカでショート・エディットでシングル・カットされ、R&B66位を記録しました。

同81年には「Whatever Turns You On」がDells(プロデュースはEugene Record)によってカバーされ、収録アルバムのタイトルも『Whatever Turns You On』としてリリースされました。さらには翌82年Ray, Goodman & Brownによって「Taking Chances」がカバーされ、アルバム『Open Up』に収録されます。このようにリアルタイムのカバー状況からも、『City Limits』『Nights』の楽曲がその手の筋にも評価されていたということがわかります。

なお、2015年に『City Limit』がFunkytowngroovesからCD化されておりますが、惜しいことになぜか本編の「Are You Ready」は『Nights』バージョンとなっており、『City Limit』バージョンはボーナストラックの中に7インチバージョンとして入ってますのでご注意を…。

(この『City Limit』はFunkytowngrooves盤のマスター使用のためM-6のバージョンが間違って収録されています)

2015年9月26日土曜日

Delegation「Heartache No.9」「Put A Little Love On Me」「One More Step To Take」and others [Ken Gold Songbook]

79年は、Delegationには節目の年になりました。「Oh Honey」の突然のアメリカでの大ヒット。そしてLen Coleyの脱退。新メンバーとして迎えられたのはアメリカ人のBruce Dunbarでした。さらにプロデューサーKen Goldは遂に自身のプロダクション、Kego Productions Limitedを立ち上げます。DelegationはStateとの契約を終了しKegoに所属。Kegoはさらに大きな成功を視野に、Delegationのリリース契約をイギリスはAriora・アメリカはMercuryと結びます。新レーベルからの第一弾として制作されたのが『Eau de Vie』(米題『Delegation』)でした。

A-1 Heartache No.9
A-2 Sho' Nuff Sold On You
A-3 One More Step To Take
A-4 Blue Girl
B-1 Darlin' (I Think About You) [Gold-Denne-Naiff]
B-2 You And I
B-3 Stand Up(Reach For The Sky) [*Bailey-Patterson]
B-4 Welcome To My World [*Bailey-Patterson-Dunbar]
B-5 Put A Little Love On Me

もちろんほとんどの楽曲はGold-Denneコンビのペンによるものですが、とにかくGoldの気合いが入りまくっており、プロデューサー・Ken Goldの手がけたアルバムの中でも最高水準のクオリティで、『The Promise Of Love』と並んで甲乙付け難い出来です。アルバムを通して象徴的なのがリズム・ギターやストリングス、コーラス等に見られるChic風サウンドで、「Heartache No.9」「Darlin'」(これのみLynton Naiffが作者としてもクレジット)「You And I」と、同じパターンの曲が何曲も入っています。また「Sho' Nuff Sold On You」はリズム・ボックスから始まるQuincy Jones風のサウンドにRick Jamesっぽいヴォーカルの組み合わせ、「One More Step To Take」はGoldおなじみのパターンというかReal Thingへの提供曲の流れで、一連のシリーズではこれがある意味完成形とも言えるでしょう。「Blue Girl」は「Oh Honey」の続編とでもいうような雰囲気のスウィートなスロー、「Put A Little Love On Me」はイギリスでは本アルバムからの第一弾シングルとしてリリースされ、本国ではヒットを逃しましたものの、欧州各国でチャートの上位に顔を出したアッパーなナンバーです。

また、メンバー作の2曲はGold-Denneコンビの作品に並んでもあまり違和感が無く、シンプルながらもメロウかつアッパーな「Stand Up」、シカゴの香りが濃厚なスロー「Welcome To My World」(珍しくリード・ヴォーカルはBruce Dunbarが担当)いずれも良作です。

サウンドを支えたミュージシャンも『The Promise Of Love』から一新され、特にこれ以降Delegationのサウンドを数年に渡って支えるのがギターのRobert AhwaiとキーボードのLynton Naiffです。AhwaiはReal Thingのファーストアルバムにも参加しており、その後HummingbirdやWham!/George Michael等の作品にも参加していきます。Real Thingのファーストの録音時すでにGoldとは面識があったのか、Ritz『Puttin' On The Ritz』でもNile Rodgersばりのカッティングを披露していましたが、このカッティング、まさにDelegationサウンドのトレードマークと言ってもいいでしょう。またLynton NaiffはGold作品では既におなじみの存在ですが、意外とDelegation関連でプレイヤーとしてクレジットされるのは本作が初めてとなります。



本アルバム並びにシングルとして切られた「Put A Little Love On Me c/w Welcome To My World」「You And I c/w Stand Up」「Heartache No.9 c/w  Stand Up」(「Welcome To My World」以外7インチ収録バージョンはショート・エディット、12インチ用には「You And I」を除くA面曲のみロング・ミックスが作られました)はいずれも残念ながら本国ではチャート・インしませんでした。アメリカではアルバムがR&Bチャート69位、「Welcome To My World」がR&B50位、「Heartache No.9」がR&B57位を記録しており、欧州各国でもヒットを記録。後の87年にはドイツで「You And I」、90年にイギリスで「Darlin'」が、さらにその後も本作の収録曲が幾度となくリミックスされシングル・リリースされています。またCD化やベスト盤への収録、90年代後半以降何度もDelegation自身により再録(これはいわゆる移籍先での全曲集に必要になったので、というアレなパターンですが、State時代の楽曲はほぼ全く再録されませんでした)される等、「Oh Honey」とはまた別に、Delegationにとって記念碑的な作品になっていると言ってよいでしょう。



2015年9月13日日曜日

Ritz「Dance Until You Drop」and others [Ken Gold Songbook]

Ritzは、女性1人・男性2人のトリオからなるヴォーカル・グループです。調べるとフランス出身のようで、78年にMidnightというグループ名でシングルを1枚リリース。79年にRitzに改名した後にも1枚シングルをリリース、その後英Epic/Park Laneと契約し、経緯は不明ですがKen Goldプロデュースで作られたアルバムが同じ79年リリースの『Puttin' On The Ritz』です。

A-1 Dance Until You Drop [Gold-Denne]
A-2 Wake Up Nights [Gold-Denne-Naiff]
A-3 Started Out Dancing, Ended Up Making Love [*O'Day]
A-4 Anyone Who Had A Heart [*Bacharach-David]
A-5 Soul Tripping [Gold-Denne]
B-1 Locomotion [*Goffin-King]
B-2 Ain't No Doubt About It [*Reilley-MacKillop]
B-3 Love Vibrations [Gold-Denne]
B-4 Lazy Love [*Child]

アルバムは全編Goldプロデュースですが、Goldが作曲にかかわった曲は9曲中4曲と少なく(うち2曲は既発曲ですし)、それ以外の曲も比較的バラエティに富んでいるというか、バラバラです。

カバーは不思議な選曲で、A-3は日本でも一部の方にはおなじみAlan O'dayのセカンド・アルバムからのカバーだったり、A-4のBacharach-David作品、そしてアルバムの先行シングルがB-1、なんとあのGoffin-King作「Locomotion」のディスコ・アレンジでした。ポップス界のクラシックとはいえアップ・トゥ・デイトな作りになっており、これが英米ではヒットに至りませんでしたが、オーストラリアやニュージーランド、フランスなどでは大ヒットとなります。また、B-2はスウェーデンからCado BelleのMaggie Reilly・Stuart MacKillopコンビ作、B-5はあのDesmond Child作で、彼の作品としてはかなり初期の作品でしょうか。

さてGoldのペンによる作品ですが、おそらくアルバムリリース前後に2枚目のシングルとしてカットされたのがA-1「Dance Until You Drop」です。これはもう、同時期のレコーディングと思われますDelegationのセカンド・アルバムでも顕著に影響が出ていますが、Chicのサウンド・メイキングを参考にしたファンキーな1曲に仕上がっています。

シングル・カットの際はパーカッション等が追加の上ミックスし直され、7インチと12インチでもそれぞれミックスが異なります。A-2は作者としてLynton Naiffもクレジットされていますが、Gold作品にしては珍しく欧風というかマイナー調の哀愁ディスコものです。A-5はDelegation、B-3はRealisticsのカバーです。

結局「Dance Until You Drop」もヒットせず、Ritzのその後の詳細もよくわかりませんでしたが、79年当時のGoldの志向が垣間見える1枚かと思います。



2015年9月5日土曜日

Delegation「Oh Honey」[Ken Gold Songbook]

ファースト・アルバム『The Promise Of Love』リリースの翌年78年、DelegationはGoldプロデュースで「Honey I'm Rich」c/w「Let Me Take You The Sun」をリリースします。A面はRaydioのファースト『Raydio』収録曲のカバーで、B面はDelegationのRay Pattersonのペンによるものです。残念ながらチャート・インはしませんでした。

その後、7月にシングル「Oh Honey」c/w「Love Is Like A Fire」がリリースされます。両面Goldプロデュース、A面はGold-Denne作、B面はDelegationのRicky BaileyとGrenville Hardingという方の共作です。「Oh Honey」は、まさに“浮遊”感溢れるといった言葉がしっくりくるスロー・ナンバーで、思わずキザな語りまで聞こえてきそうなスウィートな雰囲気満載です。ショート・エディットの7インチだけでなく、Delegation初めての12インチが限定で作られ、フル・バージョンはこちらに収録されました。しかし、これまたUKチャートに顔を出すことはありませんでした。

さて、Delegationは英国では77年にいくつかのヒットを記録していたものの、米国では「The Promise Of Love」のシングルが76年にMCAからリリースされたきりで、その後は特にリリースされていませんでした。ところがどこでどうなったのか、78年末にShady Brookというレーベルからシングルが2枚、「Someone Oughta Write A Song」/「Mr. Heartbreak」と「Oh Honey」c/w「Let Me Take You The Sun」がリリースされます(「Someone Oughta Write A Song」はショート・エディット、「Oh Honey」もUK7インチとは少し違うショート・エディットでした)。するとなんと「Oh Honey」がチャートを駆け上り、全米45位・R&B6位まで上昇する大ヒットになりました。

これを受けて米国でもアルバム『The Promise Of Love』がリリースされることになります。しかし、内容は英国盤とは異なり、もちろん大ヒットの「Oh Honey」を収録し、他にも数曲はGold-Denneコンビ作ではない、シングルB面曲等の新曲に差し替わっています。

A-1 The Promise Of Love
A-2 You've Been Doing Me Wrong
A-3 Mr.Heartbreak [*Harding]
A-4 Let Me Take You The Sun [*Patterson]
A-5 Back Door Love
B-1 Where Is The Love (We Used To Know)
B-2 Soul Trippin'
B-3 Oh Honey
B-4 Someone Oughta Write A Song (About You Baby)
B-5 Love Is Like A Fire [*Bailey-Harding]

アルバムは全米84位、R&B8位を記録するヒットとなりました。いよいよGoldも全米チャートにヒットを持つ作家・プロデューサーとなったのです。


The Real Thing 「Whenever You Want My Love」and others [Ken Gold Songbook]


76年の「You To Me Are Everything」「Can't Get By Without You」のヒットの後、77年のセルフ・プロデュース作『4 from 8』を経て、再度Real Thing側からKen Goldに声がかかったようです。まずは76年同様にシングルのA面のみの担当でしたが、78年1月にリリースされたのがGold-Denneコンビ作・Gold プロデュースによる「Whenever You Want My Love」です。おそらくは、“「You To Me Are Everything」「Can't Get By Without You」みたいなのお願いします!”という感じでのオファーだったかと思われる、同路線の爽快感溢れるポップな1曲になりました。チャート18位のスマッシュ・ヒットとなります。

このシングルのヒットを受けてかその後、78年は全編Goldプロデュースでアルバムを1枚作ることになったようです。おそらく78年後半、『Step Into Our World』のタイトルでリリースされました。

A-1 Whatcha Say, Whatcha Do [*C. Amoo-E. Amoo]
A-2 Lady, I Love You All The Time
A-3 Rainin' Through My Sunshine [*C. Amoo-E. Amoo]
A-4 Can You Feel The Force? [*C. Amoo-E. Amoo]
A-5 Give Me The Chance
B-1 (We Gotta Take It To The) Second Stage [*C. Amoo-E. Amoo]
B-2 Won't You Step Into My World? [*C. Amoo-E. Amoo]
B-3 Whenever You Want My Love
B-4 You Gotta Keep Holding On [*C. Amoo-E. Amoo]
B-5 Love Me Right

1作まるまるGold プロデュースとはいうものの、DelegationのようにGold-Denneコンビ作が多数を占めるわけではなく、10曲中4曲と控えめと言えば控えめです。おそらくこれはセルフ・プロデュース志向が強いAmoo兄弟の意向を受けてのことではないかと想像します。とはいうものの、ここでのAmoo兄弟の楽曲はどれもポップでメロウな、非常にGold-Denneコンビを意識した雰囲気ですが…。とはいうもののGoldの洗練された感覚と、根底に流れるReal Thingの泥臭いファンクネスのバランスが本作では絶妙だと思います。Lady, I Love You All The Time」「Love Me Right」「Give Me The Chance」のGold-Denneコンビ作品は安定したクオリティで、79年のDelegationなどにも繋がる流れです。


また、(当連載的にはズレますが)セッションの2ndシングルとして出たのがAmoo兄弟作のRainin' Through My Sunshine」です。日本でも一部では有名なこの曲、プロデューサーのGoldとAmoo兄弟の役割分担はよくわかりませんが、リズムパターン(Goldは77年Realistics「Someone Oughta Write A Song About You Baby」でもやってました)やタイトルをヴォーカルとコーラスで別に連呼するところなど、おそらく78年初頭に全米30位まで上昇したBill Withers「Lovely Day」へのGold・Amoo兄弟からの返答かと思います。歌詞も陽気なアメリカン・ソウルに対しての陰りのあるブリティッシュ・ソウルという感じがして、綺麗な対比になっているのが面白いですね。これはUKチャート40位という結果でした。

そしてAmoo兄弟作のアッパーでスペイシーな(映画「Star Wars」にインスパイアされたそうです)Can You Feel The Force?」が79年2月に3rdシングルとしてシングル・カットされるとUKチャート5位まで上昇します。このヒットを受け、本作は『Can You Feel The Force?』と改題され、Can You Feel The Force?」をニュー・ミックスのロング・バージョンに差し替えての再リリースが行われました(シングル・LPともにイエローのカラー・レコードでのリリースもありました)。そしてこのヒットを最後に、Real ThingはGoldの元を離れることとなります。







2015年8月30日日曜日

関口和之 & 砂山オールスターズ『World Hits!? of Southern All Stars』


サザン関連作品をご紹介するシリーズ、今回で一段落となります。サザンのベーシスト関口和之さんは、サザン初期に作曲を手がけた作品はどれもビートリーなものでしたが、83年『綺麗』ではアルバム・コンセプトに合わせたニューウェーブ路線にシフトし、その路線は86年のファースト・ソロ・アルバム『砂金』まで継続しました。その後いろいろあって、95年にサザンに復帰した頃はすっかりウクレレ愛好家の地位を不動のものとされておりました。その後のソロ作品は全てウクレレを核としたコンセプト・アルバムばかりで、ご本人はヴォーカリストやプレイヤーというよりはプロデューサーのポジションから作品を手がけているのが大きな特徴です。

さて今回の『World Hits!? of Southern All Stars』は01年、急遽サザンの活動が止まってしまってリリースもライブも出来なくなったタイミングで、なんとサザンの楽曲をウクレレ愛好家がワールドミュージック的な視点からカバーするという、異色作にして意欲作として飛び出した作品です。個人的にはプロデューサー・関口和之の現時点でのベスト作と思っています。

当初は当時すでにSoul Loversやケツメイシに関わっていたYANAGIMANこと柳満夫さん(97年の『UKULELE CALENDER』や『口笛とウクレレ』でもかなりご活躍でした)と作業を始め、さらにLittle CreaturesやDouble Famous(当時)の青柳拓次さんの演奏を見て声をかけたということで、主にこのお二方がサウンド作りの要となっています。そこに高野寛さんが一曲、鈴木惣一朗さん(『口笛とウクレレ』でも参加されていました)が在籍していた時期のNoahlewis' Mahlon Taitsが一曲を受け持っています。それまでの作品のようにウクレレ主体でサウンドを組み立てるのではなく、サウンドありきでウクレレを必ず入れる、といういつもとは逆の発想で作られていることで非常に表情豊かな作品になっています(ウクレレ愛好家としてはあくまで亜流なのかもしれませんが…)。さらに、サザンのメンバーによるカバーということで、オリジナルをなぞるような凡庸なカバーから遥か彼方に距離を置いたのがかなり吉と出ています。

M-1「涙のキッス(a cappella)」は特にどこの地方という観点で作られた訳ではなく、関口さんの前年作『口笛とウクレレ』で使ったオアフで録ったSEを使うことで前作の続きであることを示しているようです。M-2「ミス・ブランニュー・デイ」はジャマイカはキングストンということで、レゲエものに生まれ変わりました。柳さんのアレンジで、iwaoこと山口岩男さんと関口さんのウクレレがギターの代わりに裏打ちのビートを奏でており、オートチューンが使われたリードヴォーカルは関口さんご本人によるものです。ハワイ島のイメージで選ばれたのはM-3「Ya Ya」で、青柳さんアレンジでスラック・キー・ギター等のハワイ楽器も青柳さん、同じくDouble Famousの栗林慧さんも関口さんと共にウクレレを奏でています。キューバ・ハバナとして選ばれたのが前年のヒット曲M-4「HOTEL PACIFIC」で、オリジナルも桑田さんの「こういうのが好きなんでしょ?」という声が聞こえてきそうなどラテン歌謡でしたが、それをさらにやさぐれ歌謡の方向に持って行ったそうです。玲葉奈(現Leyona)さんをヴォーカルに迎え、青柳さん仕切りのソリッドなサウンドの「HOTEL PACIFIC」になりました。本作から12インチとしてシングル・カットされています。

M-5「愛の言霊」はコロンビアはサンタ・マルタで、関口さんの持つ「危険な場所」というイメージに沿った青柳さんのサウンドは、メレンゲやボンバなどとハウスを融合させたスタイルになっています。ブラジル・リオデジャネイロはM-6「涙のキッス」を柳さんによるループに青柳さんのギターをフィーチャーしたボサノヴァもの。関口さんがJoao GilBertoを聴いてるうちに思いついたそうです。M-7「みんなのうた」はアメリカはカリフォルニアということで、高野寛さんによるBeach Boysものに仕上がりました。ペティ・ブーカをヴォーカルに迎えた、とにかく楽しい雰囲気に仕上がっています。

M-8「希望の轍」は一応ミシシッピということですが、正直そこにそれほど強い意味は無いようで、Noahlewis' Mahlon Taitsと関口さんのウクレレによる3拍子のオールド・スタイルなアメリカン・ミュージックの世界。リードを取っているのはNoahlewisの森谷文哉さんによるノコギリです。本作は全て関口さんのNofofon Studioで録音が行われていますが、この曲のみ、本作リリース直後に下北沢でオープンすることとなるノアルイズ・レコード予定地にて、一発録りのアナログレコーディングということです。さてここでシングル曲でない、83年『綺麗』収録の関口さん作M-9「南たいへいよ音頭」が柳さんアレンジで、トリニダード・トバゴということでスティールパンを引っさげて唐突に登場です。そもそもこの曲は『綺麗』のコンセプトに合わせたファンカラティーナ等を意図して書かれ、その時は歌詞はバリを想定していたそうなのですが、これが某音楽誌の某中村編集長に絶賛され「南太平洋よりはスティールパンが合いそう」と誌面で助言されていたことへ18年ぶりの回答と思われます。M-10「Big Star Blues」は大胆にも沖縄ものになりました。柳さんのキーボードと打ち込み、関口さんの三線とウクレレで奏でられる、沖縄の音と自然を表現したという不思議な「Big Star Blues」です。次はカメルーンでM-11「真夏の果実」、柳さんによる打ち込みのクールなビートとカリンバ、そしてSoul LoversのMahyaさんによるコーラス等が素晴らしく、個人的には本作で1、2を争う好みの曲です(もう1曲は「南たいへいよ音頭」です)。そして北欧アイルランドはダブリンからケルトものになってやって来たM-12「クリスマス・ラブ」。青柳さんと関口さんによる演奏は、子供がトイピアノを弾いているクリスマスの家庭をイメージしたというユニークな音処理になっています。そしてイビザ島から宇宙へということでM-13「忘れられたBIG WAVE」は『口笛とウクレレ』での未発表のアイディア、口笛とループにラジオのチューニング音を合わせるというチルアウトになっています。

最後の最後にお土産ということで関口さんがサンディエゴのホテルのバルコニーで録ってきた前年の大ヒットM-14「TSUNAMI」、KAWAIKAのウクレレでOhta Sanのスタイルを意識しての演奏です。

関口さんは現在、ウクレレ布教活動を行いながらもハワイにウクレレ・ミュージアムを建設するという夢に向かって邁進中です。是非、叶えてほしいと思っています。


2015年8月11日火曜日

Denne And Gold 「Let's Put Our Love Back Together」「Don't Go Away (And Take Your Love Out Of Town)」and others [Ken Gold Songbook]

米国のソウル・シンガー達に作品が取り上げられ、Real ThingやDelegationで英国でもヒットを飛ばし始めた作家コンビMicky DenneとKen Goldは、77年暮れから彼等名義のアルバム制作に入ります。77年9月にシングル「Midnight Creeper」c/w「You've Got To Give Me All Your Lovin'」がリリースされ、翌年シングル「Let's Put Our Love Back Together」c/w「Don't Go Away (And Take Your Love Out Of Town)」とLP『Denne And Gold』がリリースされました。ただし、調べてもシングルはUK、LPはUSでしかリリースされた形跡がありません(CDは日本だけですね…)。

Real ThingやDelegation、RealisticsでもおなじみのLynton Naiffがキーボード(シングルではアレンジャーとしてクレジット)を担当しており、Gold・Denneと共にサウンド作りの要となっているのが伺えます。LPにプロデュースのクレジットは無く、エグゼクティブ・プロデューサーにGeorge Leeという方がクレジットされておりますが、この方の経歴はわかりません(77年同じくMCAからリリースされたB. J. ThomasによるBeach Boysのカバー「Don't Worry Baby」シングルでもエグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットされているようですが、それ以外あまり情報がありません)。ただし、2枚のシングルにはKen Goldプロデュースのクレジットがあります。

A-1 Let's Put Our Love Back Together
A-2 It Hurts To Watch A Good Thing Die
A-3 Midnite Creeper
A-4 Don't Go Away (And Take Your Love Out Of Town)
A-5 You've Got To Give Me All Your Lovin'
B-1 We've Got It Jumpin' Now
B-2 I Can't Ask For Anymore Than You
B-3 Why Do We Hurt Each Other [*Denne]
B-4 Uncertain
B-5 If I Could Just Be With You Tonight

Delegation『The Promise Of Love』に近い、フィリーの影響が感じられ、もちろんシカゴ・ソウルの影響もありますが、全体としてはどこか垢抜けないスワンプ風味が散りばめられている、軽めで清涼感が漂うブルー・アイド・ソウル作品に仕上がっています(金澤寿和さんも日本盤ライナーで書かれていますが、Hall & Oatesのアトランティック時代のような雰囲気もあります)。特にその後の洗練されたGoldプロデュース作品群と比べるとちょっと泥臭く、別の味わいがあると思います。

何と言ってもシングル・カットされた1曲目フィリー風ミディアム「Let's Put Our Love Back Together」からメロウで素晴らしいです。歌い出しのヴァースはMicky Denne、「I may be〜」のヴァースはKen Goldがリードを取っているようです。「Let's Put Our Love Back Together」のシングルB面に収録された「Don't Go Away (And Take Your Love Out Of Town)」もフィリー風味のスローで、非常に味わい深い出来です。


また、当シリーズ的にはちょっとズレますが、唯一Micky Denneの単独作である「Why Do We Hurt Each Other」はファルセット多用のシカゴもので、とてもいい出来だと思います。「It Hurts To Watch A Good Thing Die」もいかにもなAOR調のメロウな仕上がりです。「We've Got It Jumpin' Now」は(これも金澤さんが日本盤ライナーで書かれていますが)UK大御所の80年シングル曲と同じ方向を向いています。「I Can't Ask For Anymore Than You」「You've Got To Give Me All Your Lovin'」は76年のCliff Richardへの提供曲、「Uncertain」は77年Jimmy Helmsへの提供曲のそれぞれセルフカバーです。

 

(2020/3追記)
シングル曲「Midnight Creeper」「Let's Put Our Love Back Together」、またLPの「If I Could Just Be With You Tonight」の3曲は1976年にDenny McCaffreyがレコーディングしたものの、未発表となった楽曲のセルフカバーだったようです。
tuesday breakheart: Denny McCaffrey「Midnight Creeper」「Goodbye For The Last Time」「Take Good Care Of Yourself」「Times」and others [Ken Gold Songbook]