2016年9月29日木曜日

The Sugarbeats「Sunny Day Girl」[Ken Gold Songbook]

唐突に話が60年代まで遡って申し訳ありませんが、「You Are The Song」以前のKen Goldの作品のいくつかがなんとなくわかってきましたので、不確定なところもありますがせっかくなのでそのまま綴っていくことにします。



60年代半ば、イギリスでSugarba、いえSugarbeatsというバンドが2枚のシングルをPolydorに残しています。Sugarbeatsとは"Music sweet with a beat"なサウンド・コンセプトを表しているそうで、なかなか素敵なコンセプトですね。このバンドのメンバーは、Martin Shaer、John Perry、Geoff Swettenham、Pete Swettenham、そしておそらく、後のKen GoldことChristian Goldが在籍していたようです。

2枚のシングルですが、66年5月に「I Just Stand Here」c/w「The Ballad Of Ole Betsy」、同年10月に「Alice Designs」c/w「Sunny Day Girl」とリリースされました。いずれもプロデュースはRichard Hill、アレンジはJack Dorsey(2枚目はRichard Hillと連名)によるものです。

「I Just Stand Here」は1964年にアメリカの作家コンビStephen SchlaksとCharlie Weissによって書かれ、Robert Loye Jr.(Bob Loye)に歌われたホワイト・ドゥーワップものを、ビート・グループらしい演奏とファルセットが印象的な厚いコーラスで聴かせます。そしてB面、「The Ballad Of Ole Betsy」はおなじみBeach Boys 63年の『Little Deuce Coupe』収録のBrian Wilson & Roger Christian作の名三連バラードですが、特にヒネることなく、オリジナルに忠実なカバーです。

「Alice Designs」はTandyn Almer作で、“LSD Signs”とのダブル・ミーニングなタイトルからいかにもなサイケ・ポップで、1枚目と比べるとちょっと印象が変わります。
しかしB面「Sunny Day Girl」、これは1枚目、特にB面の路線をさらに強化させた1曲です。この曲の作者クレジットがGold-Swettenhamでして、唯一のメンバー作によるオリジナル?で、たぶん、このGoldがChristian Goldであると思われます。この曲、見事なまでの“1965年のBeach Boys”イミテーションになっています。とにかく、聴いていただければわかりますが、これは笑います。イギリスでのBeach Boysはシングルこそアメリカの数ヶ月遅れでリリースされていましたが、アルバムになるとシングルが大ヒットしない限りリリースが見送られていたようで(そして出たアルバムもほとんどチャート・インしなかったようで)、『Pet Sounds』まではてんでバラバラにリリースされていたようです。その結果、66年は前半だけで『Party』『Today』『Summer Days』『Pet Sounds』と駆け込みで怒濤のリリースでしたから、SugarbeatsのメンバーもBeach Boys熱に浮かされているのが推測されます。この頃から、憑依芸といいますか、Goldの、敬愛する先達への高レベルな愛情表現の萌芽が見て取れます(しかし、原点がBeach Boysとは…)。

Sugarbeatsは2枚のシングルリリース後、ハイレベルなBeach Boysへの愛(再現性?)を買われてか、67年にTony Rivers & The CastawaysにMartin Shaer、John Perry、Geoff Swettenham、Pete Swettenhamnの4人が引き抜かれ、解散となります。同年、PerryとSwettenham兄弟は速攻でグループを抜け、George AlexanderとGrapefruitを結成することになります。

さて、残されたGold以外にSugarbeatsにメンバーがいたのかどうか不明ですが、Goldはこの後71年にScreen Gems-Columbia Musicと作家契約をします。それまでの間の動きはわかりませんでした。とはいえ、こういった経緯があったというのを踏まえると、70年代初頭〜半ばまではTony Riversや元バンドメンバー絡みの仕事が多かった、というのも何となく繋がりますね。

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