2015年11月29日日曜日

1979年のサザンオールスターズ


スージー鈴木さん著「1979年の歌謡曲」を読みました。タイトルの通り1979年の歌謡曲とニューミュージックについて書かれた本で、あまりマニア向けに偏ることなく読み易い仕上がりになっており、一気に読み進めてしまいました。

スージーさんの一押しはゴダイゴで、これは非常に良くわかります。ミッキー吉野さんの垢抜けたサウンド、この辺りの日本コロムビアのサトリルものはどれも昔から非常に好みで…こういったサウンドやニューミュージックが歌謡曲と並列でチャートを上っていたのが79年でした。

そんな中、サザンも大きな扱いとなっています。ゴダイゴもテレビを効果的に使っていたと思いますが、サザンも事務所の方針で78年のデビューから戦略的に、というかとにかく存在を認知させるためにテレビに出まくっており、79年までの全てのシングルをヒットさせることに繋げています。

そこで、今回は完全に「1979年の歌謡曲」に便乗し、1979年のサザンについて、振り返ってみたいと思います。


●1979.1. TBS「ザ・ベストテン」出演。「気分しだいで責めないで」演奏の他、中州産業大学タモリ教授のバックで「勝手にシンドバッド」を演奏。

●1.21. 2ndアルバムのレコーディングスタート。テレビ出演や雑誌取材等を並行して行ないながら3月11日には終わるという、今のサザンからは考えられない強行スケジュールでした。

●2. 日清焼そばUFOのCMに出演。コマソンもサザンが担当しました。6人全員がスーパーマンのコスプレで出演という、当時の扱いがよくわかるCMでした。

●2. 「勝手にシンドブック」ベップ出版より発売。

●2.20. FM東京「音楽夜話」10周年記念公演(日本武道館)に出演、翌月リリースを控えた「いとしのエリー」初披露。既存路線の「思い過ごしも恋のうち」とどちらをシングルにするかでモメたようですが、メンバーの意向も尊重され「いとしのエリー」に決まりました。それまでのイメージを一新するスタイルの新曲に、観客は反応に戸惑い、サザンメンバーは落ち込むことになります。この後も暫くは披露の度に野次が飛び交ったそうですね。

●3.20. 全国ツアー「春五十番コンサート」スタート。6月6日まで全国50ヶ所のツアーでした。

●3.25. シングル「いとしのエリー」c/w「アブダ・カ・ダブラ(TYPE 3)」リリース。A面はビートルズ的なものがベースですが、全体の印象は桑田さんを始めとしたメンバーのブラック・ミュージック的な志向が滲み出る出来となっています。B面は日清焼そばUFOのコマソンを改作したものです。オリコン初登場43位と、地味な初動で、最高位の2位を獲得するのは6月のことでした。

●4.5. アルバム『10ナンバーズ・からっと』リリース。前述の通りほとんど時間が取れない制作状況で、入稿までに歌詞が間に合わず歌詞カードは一部草案が載ったり一曲まるまる記号で埋められたり、ジャケットの桑田さんは撮影現場でディレクターと喧嘩しふて腐れた顔で写っていたり、とにかく混乱の記憶しかなかったようです。80年代にはよく本作を桑田さん自身がこき下ろしていらっしゃいましたが、とは言えBoz Scaggs・Eric Clapton・Little Feat・Paul McCartney・John Lennonなどなど、当時のサザンの志向がはっきり出ていてこれはこれで一筆書きの魅力に溢れた作品かと思います。

●4. ニッポン放送「オールナイトニッポン」木曜第一部パーソナリティが桑田さんに。「勝手にシンドバッド」から出版はバーニングパブリシャーズとパシフィック音楽出版の共同出版でしたが、そういった流れからのスタートかもしれません。

●5. アルバム『ニュー・ミュージック・ベスト・ヒット』リリース。カセットのみの、invitationのレーベル・コンピレーションですが、冒頭「いとしのエリー」「気分しだいで責めないで」「勝手にシンドバッド」とサザンの3曲からスタートしています。サザン以外では伊東ゆかりさんや高橋真梨子さん、つのだ・ひろさんや元ルパンⅢの佐藤三樹夫さん、SHOGUNの前身のワン・ライン・バンド等、多彩な顔ぶれです。

●7.25. シングル「思い過ごしも恋のうち」c/w「ブルースへようこそ」リリース。「いとしのエリー」のヒット醒めやらぬうちに次のシングルを、ということでリリースされたと思われます。新曲を作る余裕はとても無かったようですが、その代わりA面は新田一郎先生のトランペットを追加しリミックスされ、アルバムと比べかなり華やかな印象に変わりました。B面はアルバムと同じバージョンです。オリコン最高7位を記録しました。

●7. アルバム『オリジナル・カラオケ ベスト・12』リリース。カセットのみのリリース第一弾ですが、なんとテレビ用に予備として作られていたカラオケを集めたものでした。ジャケットの桑田さんの仮面ライダーポーズや、燦然と輝く「プロ用メロナシ」の文字がたまりません。

●8.5. 江ノ島ヨットハーバーでの「JAPAN JAM I」に出演。廃人時代のBrian Wilson含めたBeach Boysも出演しておりましたが、この頃の桑田さんのBeach Boysへの認識はまだ数あるオールディーズバンドの一つ、という程度のものだったようです。

●8. 「ニューミュージック・マガジン」9月号に桑田佳祐本人のインタビューが掲載(「芸能界の中でロックし続けるサザンオールスターズ」)。

●9.22. 全国ツアー「Further Up On The Road」スタート。12月12日まで全国42ヶ所のツアーでした。

●10.25. シングル「C調言葉に御用心」c/w「I AM A PANTY (Yes, I am)」リリース。A面は内省的なミディアムで、新機軸でした。アレンジもバンドとして非常に良く練れています。松田さんのハモりも色気十分。B面はLittle Featサウンドに下ネタ歌詞の組み合わせです。オリコン最高2位を記録しました。

●11.25. アルバム『SOLD OUT!! ベスト・オブ・サザンオールスターズ』リリース。カセットのみではありますが、初のベスト盤となります。最新ヒット「C調言葉に御用心」や既存シングル4曲を含む、初期の傑作選です。写真提供:月刊明星のクレジットが泣けます。

●11. アルバム『ヒット・スタジオ No.1』リリース。invitationのコンピレーション・カセットです。こちらにも最新ヒット「C調言葉に御用心」をメインに「いとしのエリー」「思い過ごしも恋のうち」が、伊東ゆかりさん・高橋真梨子さん、新たに松崎しげるさん・岡林信康さんらの楽曲と並んで収録されました。

●12. ナビスコチップスターCMに出演。コマソンではなく「C調言葉に御用心」がタイアップで使われました。


上記に加え、とにかくこの当時は事務所の方針でテレビ仕事をかなり受けていたようです。年末に桑田さんが大里社長(当時)に直談判し、翌80年前半はテレビ出演やコンサートは控えることになるのですが…。とにかく仕事量に体がついていかず、メンバーは皆かなり消耗していたそうですね。

とは言うものの、事務所がアミューズでなかったらおそらくサザンは全く違う道を歩んでいたと思います。そもそもサザンはプロデューサーも事務所もなかなか決まらず、デビューまでの道のりが険しかったようです。プロデュースは某キーボード・プレイヤー(佐藤博さん?)に断られたということですが、結果的に特にプロデューサーを立てず、ほとんどセルフ・プロデュース状態でスタートしたのは大正解でした(ディレクターの高垣さんがプロデューサーとしてクレジットされました)。これがスージー鈴木さんの好きな初期サザンのサウンド・メイキング方針を決定づけるわけですから。また、事務所も宇崎竜童さんのところに断られ、途方に暮れていた高垣ディレクターがブラスのアレンジとダビングを依頼したのがアミューズ所属第一号のホーン・スペクトラムです。大里さんがレコーディングに立ち会ったのが運命を決定づけました。高垣さん側は「別れ話は最後に」をファースト・シングルにしようとしていたようですが、おそらく大里さんの意向で「勝手にシンドバッド」に決まったと思われます。「勝手にシンドバッド」に斉藤ノブさんを起用したり、ビクターとしてはやはりティン・パン〜ナイアガラ系を意識した雰囲気で売り出そうとしていたのでしょうか。

そして、話が戻りますが、1979年のサザンオールスターズという意味ではテレビでの演奏はかなり重要かと思います。「いとしのエリー」「思い過ごしも恋のうち」「C調言葉に御用心」はどれもこの年かなりテレビで演奏されています。特に注目は、出演回によってはストリングスやブラスがきちんと入っている「夜のヒットスタジオ」での演奏です。疲れたメンバーの荒い演奏のみならず、荒い上にバランスもレコードとは遥かに異なるコーラスがとにかく味わい深く、当時のバンドの記録としても評価に値します。「思い過ごしも恋のうち」はレコーディング後に何度も演奏するうちにサビのリズムパターンが変えられ、シングル・リリース時のテレビ出演でもレコードとは違うリズムパターンで演奏されましたが、こちらの方が疾走感があり好みです。こういったテレビ出演をまとめた映像作品が昨今はよくリリースされておりますが、サザンについては様々な事情から、難しいでしょうね…。それでも、何とかまとまった形で、見てみたいものです。

2015年11月28日土曜日

Pointer Sisters「Take My Heart, Take My Soul」[Ken Gold Songbook]


Pointer Sistersはカリフォルニアはオークランド出身の姉妹ヴォーカル・グループです。71年にAtlanticからレコード・デビューしていますので、81年の時点で既にデビュー10周年を迎えていたことになります。この10周年の年の6月にリリースされたアルバム『Black & White』に、Gold-Denne作品である「Take My Heart, Take My Soul」が収録されています。

60年代のファンキーなガール・グループ風の一曲で、アレンジもそれを意識しつつも同時代的に、ポップでアッパーな雰囲気でまとめています(プロデュースはRichard Perryでした)。Goldにしてはコンテンポラリーものから少し距離を置いた印象がありますが、同じく6月にGoldプロデュースでTight Fitというグループの「Back To The 60's」というシングルがリリースされています。これは81年春にアメリカで大ヒットしたStars On 45のイギリスでの便乗企画で、でっち上げグループであるTight Fit60年代のヒット曲をひたすらメドレーで繋いで歌うという内容でした(WikipediaによるとGoldが企画を思いついたことになっていますが、真相のほどはよくわかりません)。この作業と並行しての楽曲提供となったと思われ、このタイミングからGold60年代回帰シリーズが(短期間ですが)始まります。

ちなみに、「Back To The 60's」のB面はGold-Denne作の「Coco-Nite」というインストもので、この適当さがまた60年代前半に一時代を築いた某大物プロデューサーを想起させます。

また、このTake My Heart, Take My Soul」を最後にGold-Denneコンビは古巣のScreen Gems EMI Musicを離れたようです。Coco-Nite」はZomba Music Publishersがクレジットされ、これ以降、Gold-Denne作品は基本的にZomba Musicが出版権を保有することになったようです。


2015年11月1日日曜日

Delegation「In Love's Time」「In The Night」and others [Ken Gold Songbook]


『Eau De Vie』のリリース後,約1年の間を置いて80年12月にイギリスでリリースされたのがDelegationの3枚目のアルバム、『Delegation』です。

前作に引き続きプロデュースはKen Gold、ギターにRobert Ahwai、キーボードやストリングス/ブラス・アレンジにLynton Naiffを迎え、良くも悪くも『Eau De Vie』の続編といった感じに仕上がっています。また、Real Thingの『Step Into Our World』に参加し、この後Billy Ocean『Nights』をプロデュースすることになるNigel Matinezがドラムに起用されています。

A-1 Feels So Good (Loving You So Bad)
A-2 Dance, Prance, Boogie [*Bailey-Patterson-Dunbar]
A-3 In Love's Time
A-4 Singing
A-5 12th House [*Mansfield]
B-1 In The Night
B-2 Turn On To City Life [Gold-Denne-Naiff]
B-3 Free To Be Me [*Patterson]
B-4 I Wantcha Back
B-5 Gonna Keep My Eyes On You[*Bailey-Patterson]

今回もGold-Denneコンビ作の楽曲を軸に、メンバーの楽曲を数曲ちりばめた構成ですが、珍しく、そしてなぜかNew MusikのTony Mansfieldのペンによる曲が1曲収録されています。

「In Love's Time」はMaurice White風というか何と言うか、リードをとるBruce DunbarのファルセットはまるでPhilip Baileyのように聴こえてしまいますね。「In The Night」の他、「Feels So Good」「I Wantcha Back」なども前作から続く、Robert Ahwaiのカッティングが炸裂する、Delegationの定番と言える路線です。「Singing」はSide Effectのあの曲をカリプソ的な味付けで料理したら…というような意図でしょうか。「Turn On To City Life」は軽めですがブラスの映える、ポップな仕上がりです。
また、メンバー作の曲のうち、「Free To Be Me」はRay Pattersonの単独作、リードをとるのもPattersonですが、Delegationにしてはブルージーで、異色作です(この曲だけ浮いているとも…)。

アルバム・リリース後にシングルとして「12th House」/「Singing」が両A面の7インチ・12インチでリリースされていますが、アルバム・シングル共にイギリスではチャート・インしませんでした。7インチは両面ともシングル・エディット、「Singing」は12インチではロング・ミックスで収録されています。一方、アメリカでは当アルバムは『Delegation II』のタイトルでリリースされていますが、こちらもチャート入りを逃します。しかし、「In Love's Time」がシングル・カットされ、R&B54位を記録しています。


2015年10月18日日曜日

Billy Ocean 「Are You Ready」「Whatever Turns You On」「Taking Chances」「Another Day Won't Matter」and others [Ken Gold Songbook]

Billy Oceanは、トリニダード出身・ロンドン育ち、75年(本名Les Charles名義では71年デビューですが…)のデビュー以降、イギリスやヨーロッパ諸国で何曲ものシングル・ヒットを放っていたシンガーでした。76年の「Love Really Hurts Without You」は全米22位、「L. O. D. (Love On Deliverly)」は106位・R&B55位のヒットを記録しています。その後ややセールスが落ち着いてきたことで、それまでの60年代モータウン等の影響が濃厚な、当時としてもややオールド・ファッションな路線から、よりコンテンポラリーなものにシフトしたシングルが79年9月リリースの「American Hearts」c/w「My Love」でした(12インチも作られ、こちらはA面は別ミックスです)。両面ともプロデュースがKen Gold、ストリングス・ブラスアレンジをLynton Naiffが担当しています。この流れで11月にはGold-Oceanコンビ作の「Are You Ready」c/w「Maybe Tonight」が同じくGoldプロデュース、Lynton Naiffのストリングス・ブラスアレンジで7インチ・12インチ(A面別ミックス)の2種リリースされます。その流れで、80年初頭にリリースされたのがアルバム『City Limit』でした。


A-1 Stay The Night
A-2 What You Doing To Me
A-3 Who's Gonna Rock You
A-4 Maybe Tonight
A-5 City Limit [*Ocean-McKay]
B-1 Are You Ready
B-2 Whatever Turns You On
B-3 Taking Chances
B-4 American Hearts [*Bugatti-Musker]

2曲を除きOcean-Goldコンビ作(シングルと順番がひっくり返りました)、プロデュースはKen Gold(A-5のみDave McKay)、ストリングス・ブラスアレンジはLynton Naiffという布陣で制作されました。

「Stey The Night」もそうかもしれませんが、「Are You Ready」はあからさまにMichael Jackson(にKC & The Sunshine Band を合わせたような…)的なサウンドで、これらを後にMichael実姉のLa Toya Jacksonがカバーするのですから世の中わからないものです。「Whatever Turns You On」も軽めですがメロウなミディアムで、これこそいかにもKen Goldらしい一曲と言えるでしょう。「Taking Chances」は隙間多めの演奏にソウルフルなBillyのヴォーカルが光るバラードです。また、「Maybe Tonight」などはAOR風というか、あまり黒っぽくありませんがこれまたメロウなバラードです。「Who's Gonna Rock You」は後にカバーされヒットを記録することになりますが、さもありなんと言うべきポップな一曲です。

残念ながら『City Limit』はチャート・インを逃します。80年4月には「Stay The Night」c/w「What You Doing To Me」が7インチ・12インチ(A面は別ミックス)でシングル・カットされ、イギリスではチャート・インを逃しますが、フランスやドイツではヒットを記録しています。

その後、初夏には元Nolan SistersことNolansが「Who's Gonna Rock You」をEpic2作目のアルバム『Making Waves』でカバー、10月にはシングルとしてリリースし、イギリスで12位のヒットを記録します。また、同年6月にLa Toya Jacksonがファースト・ソロ『La Toya Jackson』で「Are You Ready」をカバー。9月にはイギリスで「Stay The Night」をシングル・リリース、81年3月リリースの『My Special Love』に収録されました。

81年4月、新たにリリースされたBilly Oceanのシングル「Nights (Feel Like Getting Down)」c/w「Everlasting Love」はプロデュースがNigel Martinezで、作曲もMartinez-Oceanコンビによるものです。Martinezは78年にStateからソロ・ファースト・アルバムをリリースする傍らReal Thing『Step Into Our World』でドラマーとして参加しており、81年にはDelegation『Delegation』にもドラムで参加する等、Goldとも関わりのある人物です。いわゆるアーベインでファンキーなこのシングルがOceanの作品としては久々にアメリカでリリースされると全米チャート103位・R&Bチャート7位まで上昇します。ここでGTO(の親会社のEpic)はすぐにアメリカ・マーケット向けのアルバムを出すよう要請、10日前後で急いでレコーディングされたのが『Nights(Feel Like Getting Down)』です。


A-1 Are You Ready
A-2 Don't Say Stop
A-3 Whatever Turns You On
A-4 Another Day Won't Matter
B-1 Nights(Feel Like Getting Down) [*Ocean-Martinez]
B-2 Who's Gonna Rock You
B-3 Stay The Night
B-4 Everlasting Love [*Ocean-Martinez-Linton]
B-5 Taking Chances

全曲プロデュースはNigel Martinez、ただし「Stay The Night」のみKen Goldのクレジットで、これは『City Limit』と同じテイク/ミックス(ただしフェイド・アウトが早い)を持ってきているからです(実は「Taking Chances」も『City Limit』と同じなんですがそれは…)。しかし、イギリスでの先行シングルとなった「Nights」(こちらはアルバム・エディット)・「Everlasting Love」以外は、リレコーディング3曲や再収録2曲のみならず純粋な新曲2曲もOcean-Gold作の楽曲で、結果的に作家Ken Goldの印象は強く残るアルバムとなっています。

「Are You Ready」「Whatever Turns You On」「Who's Gonna Rock You」はNigel Martinezのプロデュースで新たに録音し直され、よりシンプルでタイトな、いわゆるブラコン風スタイルに生まれ変わりました。新曲の「Don't Say Stop」「Another Day Won't Matter」などはどことなくRod TempertonミーツQuincy Jones的な雰囲気も感じられますが、全体としては『City Limit』ほど幕の内的な雰囲気ではなく、サウンドの統一感はこちらの方がとれているかと思います。『Nights』はイギリスではチャート・インしませんでしたが、アメリカでは152位、R&B27位を記録しました。「Another Day Won't Matter」はアメリカでショート・エディットでシングル・カットされ、R&B66位を記録しました。

同81年には「Whatever Turns You On」がDells(プロデュースはEugene Record)によってカバーされ、収録アルバムのタイトルも『Whatever Turns You On』としてリリースされました。さらには翌82年Ray, Goodman & Brownによって「Taking Chances」がカバーされ、アルバム『Open Up』に収録されます。このようにリアルタイムのカバー状況からも、『City Limits』『Nights』の楽曲がその手の筋にも評価されていたということがわかります。

なお、2015年に『City Limit』がFunkytowngroovesからCD化されておりますが、惜しいことになぜか本編の「Are You Ready」は『Nights』バージョンとなっており、『City Limit』バージョンはボーナストラックの中に7インチバージョンとして入ってますのでご注意を…。

(この『City Limit』はFunkytowngrooves盤のマスター使用のためM-6のバージョンが間違って収録されています)

2015年9月26日土曜日

Delegation「Heartache No.9」「Put A Little Love On Me」「One More Step To Take」and others [Ken Gold Songbook]

79年は、Delegationには節目の年になりました。「Oh Honey」の突然のアメリカでの大ヒット。そしてLen Coleyの脱退。新メンバーとして迎えられたのはアメリカ人のBruce Dunbarでした。さらにプロデューサーKen Goldは遂に自身のプロダクション、Kego Productions Limitedを立ち上げます。DelegationはStateとの契約を終了しKegoに所属。Kegoはさらに大きな成功を視野に、Delegationのリリース契約をイギリスはAriora・アメリカはMercuryと結びます。新レーベルからの第一弾として制作されたのが『Eau de Vie』(米題『Delegation』)でした。

A-1 Heartache No.9
A-2 Sho' Nuff Sold On You
A-3 One More Step To Take
A-4 Blue Girl
B-1 Darlin' (I Think About You) [Gold-Denne-Naiff]
B-2 You And I
B-3 Stand Up(Reach For The Sky) [*Bailey-Patterson]
B-4 Welcome To My World [*Bailey-Patterson-Dunbar]
B-5 Put A Little Love On Me

もちろんほとんどの楽曲はGold-Denneコンビのペンによるものですが、とにかくGoldの気合いが入りまくっており、プロデューサー・Ken Goldの手がけたアルバムの中でも最高水準のクオリティで、『The Promise Of Love』と並んで甲乙付け難い出来です。アルバムを通して象徴的なのがリズム・ギターやストリングス、コーラス等に見られるChic風サウンドで、「Heartache No.9」「Darlin'」(これのみLynton Naiffが作者としてもクレジット)「You And I」と、同じパターンの曲が何曲も入っています。また「Sho' Nuff Sold On You」はリズム・ボックスから始まるQuincy Jones風のサウンドにRick Jamesっぽいヴォーカルの組み合わせ、「One More Step To Take」はGoldおなじみのパターンというかReal Thingへの提供曲の流れで、一連のシリーズではこれがある意味完成形とも言えるでしょう。「Blue Girl」は「Oh Honey」の続編とでもいうような雰囲気のスウィートなスロー、「Put A Little Love On Me」はイギリスでは本アルバムからの第一弾シングルとしてリリースされ、本国ではヒットを逃しましたものの、欧州各国でチャートの上位に顔を出したアッパーなナンバーです。

また、メンバー作の2曲はGold-Denneコンビの作品に並んでもあまり違和感が無く、シンプルながらもメロウかつアッパーな「Stand Up」、シカゴの香りが濃厚なスロー「Welcome To My World」(珍しくリード・ヴォーカルはBruce Dunbarが担当)いずれも良作です。

サウンドを支えたミュージシャンも『The Promise Of Love』から一新され、特にこれ以降Delegationのサウンドを数年に渡って支えるのがギターのRobert AhwaiとキーボードのLynton Naiffです。AhwaiはReal Thingのファーストアルバムにも参加しており、その後HummingbirdやWham!/George Michael等の作品にも参加していきます。Real Thingのファーストの録音時すでにGoldとは面識があったのか、Ritz『Puttin' On The Ritz』でもNile Rodgersばりのカッティングを披露していましたが、このカッティング、まさにDelegationサウンドのトレードマークと言ってもいいでしょう。またLynton NaiffはGold作品では既におなじみの存在ですが、意外とDelegation関連でプレイヤーとしてクレジットされるのは本作が初めてとなります。



本アルバム並びにシングルとして切られた「Put A Little Love On Me c/w Welcome To My World」「You And I c/w Stand Up」「Heartache No.9 c/w  Stand Up」(「Welcome To My World」以外7インチ収録バージョンはショート・エディット、12インチ用には「You And I」を除くA面曲のみロング・ミックスが作られました)はいずれも残念ながら本国ではチャート・インしませんでした。アメリカではアルバムがR&Bチャート69位、「Welcome To My World」がR&B50位、「Heartache No.9」がR&B57位を記録しており、欧州各国でもヒットを記録。後の87年にはドイツで「You And I」、90年にイギリスで「Darlin'」が、さらにその後も本作の収録曲が幾度となくリミックスされシングル・リリースされています。またCD化やベスト盤への収録、90年代後半以降何度もDelegation自身により再録(これはいわゆる移籍先での全曲集に必要になったので、というアレなパターンですが、State時代の楽曲はほぼ全く再録されませんでした)される等、「Oh Honey」とはまた別に、Delegationにとって記念碑的な作品になっていると言ってよいでしょう。



2015年9月13日日曜日

Ritz「Dance Until You Drop」and others [Ken Gold Songbook]

Ritzは、女性1人・男性2人のトリオからなるヴォーカル・グループです。調べるとフランス出身のようで、78年にMidnightというグループ名でシングルを1枚リリース。79年にRitzに改名した後にも1枚シングルをリリース、その後英Epic/Park Laneと契約し、経緯は不明ですがKen Goldプロデュースで作られたアルバムが同じ79年リリースの『Puttin' On The Ritz』です。

A-1 Dance Until You Drop [Gold-Denne]
A-2 Wake Up Nights [Gold-Denne-Naiff]
A-3 Started Out Dancing, Ended Up Making Love [*O'Day]
A-4 Anyone Who Had A Heart [*Bacharach-David]
A-5 Soul Tripping [Gold-Denne]
B-1 Locomotion [*Goffin-King]
B-2 Ain't No Doubt About It [*Reilley-MacKillop]
B-3 Love Vibrations [Gold-Denne]
B-4 Lazy Love [*Child]

アルバムは全編Goldプロデュースですが、Goldが作曲にかかわった曲は9曲中4曲と少なく(うち2曲は既発曲ですし)、それ以外の曲も比較的バラエティに富んでいるというか、バラバラです。

カバーは不思議な選曲で、A-3は日本でも一部の方にはおなじみAlan O'dayのセカンド・アルバムからのカバーだったり、A-4のBacharach-David作品、そしてアルバムの先行シングルがB-1、なんとあのGoffin-King作「Locomotion」のディスコ・アレンジでした。ポップス界のクラシックとはいえアップ・トゥ・デイトな作りになっており、これが英米ではヒットに至りませんでしたが、オーストラリアやニュージーランド、フランスなどでは大ヒットとなります。また、B-2はスウェーデンからCado BelleのMaggie Reilly・Stuart MacKillopコンビ作、B-5はあのDesmond Child作で、彼の作品としてはかなり初期の作品でしょうか。

さてGoldのペンによる作品ですが、おそらくアルバムリリース前後に2枚目のシングルとしてカットされたのがA-1「Dance Until You Drop」です。これはもう、同時期のレコーディングと思われますDelegationのセカンド・アルバムでも顕著に影響が出ていますが、Chicのサウンド・メイキングを参考にしたファンキーな1曲に仕上がっています。

シングル・カットの際はパーカッション等が追加の上ミックスし直され、7インチと12インチでもそれぞれミックスが異なります。A-2は作者としてLynton Naiffもクレジットされていますが、Gold作品にしては珍しく欧風というかマイナー調の哀愁ディスコものです。A-5はDelegation、B-3はRealisticsのカバーです。

結局「Dance Until You Drop」もヒットせず、Ritzのその後の詳細もよくわかりませんでしたが、79年当時のGoldの志向が垣間見える1枚かと思います。



2015年9月5日土曜日

Delegation「Oh Honey」[Ken Gold Songbook]

ファースト・アルバム『The Promise Of Love』リリースの翌年78年、DelegationはGoldプロデュースで「Honey I'm Rich」c/w「Let Me Take You The Sun」をリリースします。A面はRaydioのファースト『Raydio』収録曲のカバーで、B面はDelegationのRay Pattersonのペンによるものです。残念ながらチャート・インはしませんでした。

その後、7月にシングル「Oh Honey」c/w「Love Is Like A Fire」がリリースされます。両面Goldプロデュース、A面はGold-Denne作、B面はDelegationのRicky BaileyとGrenville Hardingという方の共作です。「Oh Honey」は、まさに“浮遊”感溢れるといった言葉がしっくりくるスロー・ナンバーで、思わずキザな語りまで聞こえてきそうなスウィートな雰囲気満載です。ショート・エディットの7インチだけでなく、Delegation初めての12インチが限定で作られ、フル・バージョンはこちらに収録されました。しかし、これまたUKチャートに顔を出すことはありませんでした。

さて、Delegationは英国では77年にいくつかのヒットを記録していたものの、米国では「The Promise Of Love」のシングルが76年にMCAからリリースされたきりで、その後は特にリリースされていませんでした。ところがどこでどうなったのか、78年末にShady Brookというレーベルからシングルが2枚、「Someone Oughta Write A Song」/「Mr. Heartbreak」と「Oh Honey」c/w「Let Me Take You The Sun」がリリースされます(「Someone Oughta Write A Song」はショート・エディット、「Oh Honey」もUK7インチとは少し違うショート・エディットでした)。するとなんと「Oh Honey」がチャートを駆け上り、全米45位・R&B6位まで上昇する大ヒットになりました。

これを受けて米国でもアルバム『The Promise Of Love』がリリースされることになります。しかし、内容は英国盤とは異なり、もちろん大ヒットの「Oh Honey」を収録し、他にも数曲はGold-Denneコンビ作ではない、シングルB面曲等の新曲に差し替わっています。

A-1 The Promise Of Love
A-2 You've Been Doing Me Wrong
A-3 Mr.Heartbreak [*Harding]
A-4 Let Me Take You The Sun [*Patterson]
A-5 Back Door Love
B-1 Where Is The Love (We Used To Know)
B-2 Soul Trippin'
B-3 Oh Honey
B-4 Someone Oughta Write A Song (About You Baby)
B-5 Love Is Like A Fire [*Bailey-Harding]

アルバムは全米84位、R&B8位を記録するヒットとなりました。いよいよGoldも全米チャートにヒットを持つ作家・プロデューサーとなったのです。