2023年10月20日金曜日

番外編:ベスト盤考 pt.1(あるいは、ミュージックテープ考)

『すいか』の話が出たところで今回は番外編、ベスト盤について。

70年代後半〜80年代における、いわゆるアナログレコード以外の重要な音楽メディアといえば、カセットテープ(今回扱うのは当時の言葉でいうと「ミュージックテープ(Pre-recorded Tape)」、生テープではない、録音済で売っているもの)である。80年代前半、CDが急速に普及する直前はカセットの売上がアナログレコードに肉薄し、80年代後半はCD・アナログレコード・カセットがほぼ同売上となるタイミングもあった(図1 日本の音楽ソフトは1998年をピークに急速に減少したが…(音楽ソフトの種類別生産金額推移1952〜2020年) レコード購買が拡大、ネット世代の若者はアナログ好き=ジェイ・コウガミ https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220118/se1/00m/020/057000c

レコードとは販売会社が異なったり(配信しかり、原盤権の貸与・譲渡先をメディアごとに変えて契約することが可能であるため)、レコードに比べるとサブ的な立ち位置だったことでベスト盤や企画盤などが比較的自由にリリースできていた…というのもカセットの大きな特徴だろう。サザンもご多分にもれず、レコードでのベスト盤は2023年の今日でもリリースされたことがない一方で、カセットでは多くのベスト盤がリリースされていた。83年までは年1〜2作というかなりのハイペースで、それぞれそれなりに好調な売れ行きを記録していたのだった(「オリコン・アルバム・チャートブック<完全版>1970〜2005」(オリコン・エンタテインメント、2007)によると、カセットのみのベスト盤では、『メタル・スーパーベスト』を除き一番売上数の少ない『Kick Off!』でも85,740本を記録しており、『熱い胸さわぎ』LPの71,520枚より多い)。今回掲載したカセットのベスト盤はほとんど90年代に入ってもカタログ・店頭に残り続け、12曲入りは93年頃、20曲入りはカセットのレギュラーリリース自体が終了する96年を過ぎたあたりで廃盤になったようだ。

90年代半ばに設立されたサザンの旧公式サイト(http://www.jvcmusic.co.jp/sas/)はビクターのドメインで、ディスコグラフィもレコード会社管理ということでか、こういった廃盤ベストもその存在を消し去らない程度にはきちんと掲載されていた。現在のアミューズが管理する公式サイトでは、『すいか』『Happy!』を除きこうした廃盤作品は載っていない(ビデオも80年代の2作が載っていないようだ)。

また、近年では、レコード会社や原盤制作会社主体の、ミュージシャン本人がリリースに積極的ではない・関わっていないベスト盤は「非公式」などと称され否定的に扱われることも多い(そうなると実は『すいか』も桑田本人は渋々了承したベスト盤、ということになる)。他方、リスナー視点からすると「非公式」ベスト盤でそのミュージシャンと出会うこともあるなど、十人十色の思い入れがあるのも事実だろう。何より、正式なルートで正規にリリースされた作品たちである。ミュージシャンの思いとは別で、一度世に出たものは背景はどうあれディスコグラフィーにおいては平等に扱うべきではなかろうか、という気もする(とはいいつつ、サブスクリプションサービスの普及で個人が簡単にプレイリストを編纂・公開・共有できる今となっては、ベスト盤の公式・非公式というカテゴライズももはや過去のものかもしれないが…)。

ということで、今回は番外編、歴史の記録として『すいか』に至るまでのベスト盤をすべて、こちらにまとめておきたい。

なお、今回はベスト盤以外の企画もの(サザン関連はベスト盤のことまで「企画アルバム」と称するので混乱してしまうのだが、ここではオリジナル・カラオケ集やメガミックス「江ノ島」、加えてレーベルコンピレーションやファミリークラブものなど)は除かせていただく。いつか機会があればということで…。


***


■SOLD OUT!! ベスト・オブ・サザンオールスターズ
1979.11.25. invitation(ビクター音楽産業) VCF-1558
SIDE 1 
1. C調言葉に御用心 
2. 当って砕けろ 
3. 別れ話は最後に 
4. 恋はお熱く 
5. 女呼んでブギ 
6. 勝手にシンドバッド 

SIDE 2 
1. お願いD. J. 
2. 奥歯を食いしばれ 
3. 思い過ごしも恋のうち 
4. 気分しだいで責めないで 
5. いとしのエリー 
6. I AM A PANTY(Yes, I am) 

シングル「C調言葉に御用心」リリース直後に編まれた、サザン初のベスト・アルバム。どうもこの後のものを眺めても、基本的にはシングルのリリース直後、かつ直近でオリジナルアルバムのリリース予定がない場合にカセットのみでベスト盤を企画していたようだ。

「勝手にシンドバッド」「気分しだいで責めないで」「いとしのエリー」「思い過ごしも恋のうち」と、デビュー以降のシングル・ヒットを全て網羅した内容である。ヒット曲が並び「いとしのエリー」で締まる…かと思いきや「I Am A Panty」で急速乾燥しそのまま終わる展開が味わい深い。なお、サザンのベスト盤は基本的にアルバムのマスターを使っているようで、これ以降もシングルとアルバムでミックス・バージョンが違うのものはほぼすべてアルバムのものが採用されている。

2023年現在も『10ナンバーズ・からっと』歌詞カードに記号しか書かれていない「奥歯を食いしばれ」、こちらの歌詞カードでは実際の歌詞が掲載されているのも美味しいポイントといえる(これは数ヶ月前にリリースされたオリジナルカラオケ集『オリジナル・カラオケ ベスト・12』の流れか)。

他方、先行シングルで歌詞が何も書かれていなかった「I Am A Panty」は記号で埋められている。


■KICK OFF!
1980.7.5. invitation(ビクター音楽産業) VCF-10008 
SIDE 1 
1. いなせなロコモーション 
2. 勝手にシンドバッド 
3. 私はピアノ 
4. 恋するマンスリーデイ 
5. 涙のアベニュー 
6. Hey! Ryudo!

SIDE 2 
1. ジャズマン 
2. 二人だけのパーティ~タイニイ・バブルス
3. To You 
4. C調言葉に御用心 
5. 青い空の心
6. いとしのエリー 

シングル「ジャズ・マン」リリース後に発売。タイミング的には“ファイブ・ロック・ショー”が完結し、5枚のシングルすべてを含んだベスト盤…にしたかったものの、途中でスケジュールがひと月ずれてしまったためそちらの完結を待たずに出してしまった、という状況か。おかげで「わすれじのレイド・バック」はリリース前で、未収録である。

シングルとアルバムでミックスの違う「Hey! Ryudo!」は、珍しくシングルのミックスで収録されている。

リリース後に高田みずえの「私はピアノ」カバーがヒットしたため、そののち『タイニイ・バブルス』LP帯同様同曲を大きくフィーチャーしたジャケットに変更されたようだ。



■アーリー・サザンオールスターズ
1980.12.5. invitation(ビクター音楽産業) VCF-30001 
SIDE 1 
1. 勝手にシンドバッド 
2. 別れ話は最後に 
3. 恋はお熱く 
4. 思い過ごしも恋のうち 
5. Let It Boogie 
6. いとしのエリー 
7. 私はピアノ 
8. 涙のアベニュー 
9. 恋するマンスリー・デイ 
10. C調言葉に御用心  

SIDE 2 
1. ごめんねチャーリー 
2. I AM A PANTY(Yes, I AM)
3. 青い空の心~No me? More no! 
4. JAZZMAN 
5. ひょうたんからこま 
6. いなせなロコモーション 
7. LOVE SICK CHICKEN 
8. わすれじのレイド・バック 
9. FIVE ROCK SHOW 
10. シャ・ラ・ラ 

シングル「シャ・ラ・ラ/ごめんねチャーリー」リリース後のベスト盤。LP2枚組に相当する、20曲約90分収録・定価3,800円の長時間ベスト盤である。デビューから“ファイブ・ロック・ショー”、そして最新シングルまでも「アーリー」として括るという、ある意味かなり前向きなタイトルがつけられている。実はデビュー3年を迎えたのち、ちょうど『ステレオ太陽族』より原盤制作会社が変わる…というまさに区切りのタイミングではあるのだが、さすがにそこまでの意味合いまでは含んでいないか。



■BEST ONE ’82
1981.10.21. invitation(ビクター音楽産業) VCF-30002
■BEST
1983? invitation(ビクター音楽産業) VCF-30002
SIDE 1 
1. 勝手にシンドバッド 
2. 恋はお熱く
3. 女呼んでブギ 
4. 思い過ごしも恋のうち 
5. いとしのエリー 
6. 私はピアノ 
7. C調言葉に御用心 
8. 涙のアベニュー 
9. 恋するマンスリー・デイ 
10. JAZZMAN 

SIDE 2 
1. いなせなロコモーション 
2. わすれじのレイド・バック 
3. ごめんねチャーリー 
4. シャ・ラ・ラ 
5. My Foreplay Music 
6. 恋の女のストーリー 
7. 我らパープー仲間 
8. ラッパとおじさん(Dear M.Y's Boogie) 
9. Big Star Blues 
10. 栞(しおり)のテーマ 

レコード会社のシリーズものとなるベスト盤。ビクターでは『Best One』というシリーズが先行して存在していたが、81年暮れに『Best One ’82』のタイトルで全189タイトルがリリース。国内ミュージシャンのみならずビクターが配給している洋楽、果てはビクターが当時販売を委託されていた外部原盤(アルファレコードであればYMO、荒井由実、Quincy Jonesなど…)のベスト盤が緑色の共通ジャケットでリリースされている。この中にサザンもラインアップされており、中身はというとデビューから最新作『ステレオ太陽族』「栞のテーマ」まで20曲を年代順に収録した、優等生的な偏りのない内容である。

各『Best One ’82』は82年が終わる=発売から1年を迎えると廃盤になっていったが、サザンのこのタイトルはそれなりに売れていたのか、のち(ジャケット裏の注意書きが82〜84年のスタイル、またジャケットのアルファベットのバンド名が『綺麗』「Emanon」期風のフォントなので、83年後半あたりか)にタイトル・ジャケットを一新、シリーズから独立。『Best』のタイトルで同じ内容・同じ規格番号のまま、20曲入りカセットが廃盤となる90年代半ばまでカタログや店頭に残り続けた。

『Best One ’82』の“One ’82”を消しただけ、という安易な変更が素晴らしい。



■メタル・スーパーベスト
1981.12.20. invitation(ビクター音楽産業) MVH-1001

SIDE 1 
1. いとしのエリー 
2. 私はピアノ 
3. C調言葉に御用心 
4. 涙のアベニュー 
5. 恋するマンスリー・デイ 
6. JAZZMAN 
7. いなせなロコモーション 
8. わすれじのレイド・バック  

SIDE 2 
1. ごめんねチャーリー 
2. シャ・ラ・ラ 
3. My Foreplay Music 
4. 恋の女のストーリー 
5. 我らパープー仲間 
6. ラッパとおじさん(Dear M.Y's Boogie)
7. BIG STAR BLUES 
8. 栞(しおり)のテーマ  

カセットの磁気テープには複数のポジション(Type)が存在し、ノーマル(Type I)・クローム/ハイポジション(Type II)、フェリクローム(Type III)が70年代半ばまでに出揃っていた。70年代末にさらなる高音質を謳うメタル・ポジション(Type IV)が登場。この当時レコード会社がリリースしていたミュージックテープはおおかたノーマルであったが、80年代に入ると、並行してメタル・ポジションのミュージックテープもリリースされるようになる。といっても、高音質が売りであるため、価格も若干高めに設定されており、大きな売上につながらなかったのかさほどリリース数は多くなかった。

この『メタル・スーパーベスト』は、メタルポジションのテープを使用したベスト盤で、『Best One ’82』同様、ビクターのシリーズものの一環である。ということでか2ヶ月前リリースの『Best One ’82』冒頭4曲を削っただけという、安易過ぎる選曲となっている。12曲でも20曲でもなく、16曲入りだがこれはたまたまのちのCDサイズの収録内容だ。当時の価格は¥3,300。なお、サザンのメタルテープはこのベスト盤と『ステレオ太陽族』(1981.8.5. invitation MVH-3)の2作のみのリリースであった。

他のタイトルと異なりカセットチャートには入ることなく、ビクターの年鑑を見てもかなり早く、84年ごろには廃盤となったようだ。

これはレアすぎて所有していないので、広告の画像でご勘弁を….



■Shout!
1982.5.1. invitation(ビクター音楽産業) VCF-10097
SIDE 1 
1. チャコの海岸物語 
2. 翔(Show)~鼓動のプレゼント 
3. 栞(しおり)のテーマ 
4. 朝方ムーンライト 
5. ムクが泣く 
6. 素顔で踊らせて 

SIDE 2 
1. タバコ・ロードにセクシーばあちゃん 
2. 働けロック・バンド(Workin’ for T.V.) 
3. 奥歯を食いしばれ 
4. シャ・ラ・ラ 
5. いなせなロコモーション 
6. いとしのエリー 

シングル「チャコの海岸物語」大ヒット中に急遽?発売。ジャケットもシングルのものをそのまま流用するというわかりやすさで、「チャコ〜」のヒットに伴いこちらのアルバムもヒットを記録したようだ。「オリコン・アルバム・チャートブック<完全版>1970〜2005」によるとオリコンカセットチャート最高位1位、売上数207,120本とのこと。

『カセット・ライフ 1982年6月号』(シンコーミュージック、1982)のカセット・レビューによると、桑田本人の選曲ということである。確かにジャケットとは打って変わって何らかの意思を感じる選曲で、特にA面終盤〜B面中盤の渋い流れに選曲者のこだわりを見ることができよう。後年の『Happy!』に通じるものがある。

本作から録音時にドルビーNR方式でエンコードされるようになる。これはカセットのレギュラーリリースが終了となる96年まで続く。



■SUPER BEST バラッド ’77〜’82
1982.12.5. invitation(ビクター音楽産業) VCF-30004
■バラッド ’77〜’82
1985.4.21. invitation(ビクター音楽産業) VDR-9001~2(CD)
SIDE 1 
1. 朝方ムーンライト 
2. ラチエン通りのシスター 
3. 私はピアノ 
4. Just a Little Bit 
5. シャ・ラ・ラ 
6. 涙のアベニュー 
7. 松田の子守唄 
8. 夏をあきらめて 
9. 別れ話は最後に 
10. いとしのエリー 

SIDE 2 
1. 恋の女のストーリー 
2. ひょうたんからこま 
3. 恋はお熱く 
4. わすれじのレイド・バック 
5. Oh! クラウディア 
6. 働けロック・バンド (Workin’ for T.V.) 
7. Ya Ya あの時代を忘れない 
8. 流れる雲を追いかけて 
9. 思い出のスター・ダスト 
10. 素顔で踊らせて 

シングル「Ya Ya あの時代を忘れない」リリース後に発売。ビクターの20曲入り『Super Best』シリーズ(全10タイトル)の一環ではあるが、他タイトルはほとんどが特色のないベストものなのに対し、サザンのこれのみ、既存作品と変化をつけるためかバラードに特化したベスト盤となっている。

年代順でもない凝った曲順・選曲だが、発売当時の広告によると「デビュー以来、最新ヒットの「YaYa」までサザン自身の選曲、構成によるきわめつけのバラード20曲!!」とあるので、『Shout!』に続き、メンバーの意向が反映された内容になっているようだ。

リリース後早々にオリコンカセットチャートでは1位を記録。その後4ヶ月ほど20位以上をキープし続けたところで、83年5月に「いとしのエリー」をはじめ劇中にサザンの旧譜が流れるTBS系連続ドラマ「ふぞろいの林檎たち」が放送。この効果もあってかドラマ終了後の10月まで20位以上に食い込み続け、年末にようやくベスト100圏外へ。翌84年は夏から秋にかけて圏外から再登場。85年3月には「ふぞろいの林檎たちII」が放送開始。4月に再び圏外から復活、夏には20位以上まで上昇し、年末まで100位以上に登場し続けている。そして翌年以降も、毎年夏に圏外からチャート・インを繰り返すという、超ロングセラー・アルバムとなるのだった。88年6月時点で、オリコンカセットチャート史上最高の128週チャートイン記録を達成したという『ウィークリー・コンフィデンス 1988年6月20日号』オリジナル・コンフィデンス、1988)。チャート統合前の、カセットのみの売上数は546,430本「オリコン・アルバム・チャートブック<完全版>1970〜2005」)

「ふぞろいの林檎たちII」のオンエアに合わせたのか85年4月にはサザン、そしてビクター音楽産業の国内ポップスもので初の2枚組CDとしてCD化。

CD用のマスターを改めて用意したようで、「Oh! クラウディア」の冒頭のフェイドインが緩やかになっている。また、“Super Best”がタイトルから外れシリーズから独立。ブックレットにはライブの写真が追加されている。といっても松田はシモンズ・関口はスタインバーガー、原もJupitor-6を使っていそうで、さらには矢口博康と思しき人物も写っている。おそらく当アルバム内容の時期からは外れた、84〜85年のライブのものとみられる。
このあたり、なんともおおらかな時代である。そもそも、デビューが78年であるにもかかわらずタイトルを「’77~’82」としてしまっているのも相当おおらかである。



■原由子 with サザンオールスターズ
1983.12.16. TAISHITA(ビクター音楽産業) VCF-10174
SIDE 1 
1. そんなヒロシに騙されて 
2. かしの樹の下で 
3. ボディ・スペシャルⅠ 
4. ボディ・スペシャルⅡ 
5. 南たいへいよ音頭 
6. 私はピアノ  

SIDE 2 
1. 東京シャッフル 
2. 流れる雲を追いかけて 
3. EMANON 
4. シャッポ 
5. Ya Ya(あの時代を忘れない) 
6. NEVER FALL IN LOVE AGAIN 

シングル「東京シャッフル」リリースに伴うベスト盤。「東京シャッフル」の収録と同時に、原由子ヴォーカル曲を大きくフィーチャーしようという若干強引な内容だ。原由子ソロ第2作『Miss Yokohamadult』リリースのタイミングに乗じた企画ともいえる。といっても当時のサザン名義で原のヴォーカル曲はそこまで多くなく、『綺麗』収録曲や直近のシングルなどで彩りを添えている。

時代の流れが変わったのかこの作品を最後に、ベスト盤のリリースは一段落する。



■BALLADE 2 ’83〜’86
1987.6.21. TAISHITA(ビクター音楽産業) VCF-30007(CT)、VDR-9049〜50(CD)
SIDE/DISC 1 
1. かしの樹の下で
2. 愛する女性とのすれ違い
3. あっという間の夢のTonight
4. Bye Bye My Love(U are the one)
5. Never Fall In Love Again
6. 鎌倉物語
7. 海
8. Please!
9. サラ・ジェーン
10. 夕日に別れを告げて〜メリーゴーランド

SIDE/DISC 2 
1. シャボン
2. Japaneggae(ジャパネゲエ)
3. Melody(メロディ)
4. 女のカッパ
5. Long-haired Lady
6. EMANON
7. 星空のビリー・ホリディ
8. 悲しみはメリー・ゴーランド
9. 旅姿六人衆
10. Dear John

87年の夏、サザン/桑田作品を出すことができない・というか出すものがなかったタイミングでリリースされたと思しき、『バラッド』の第二弾。そういう意味ではすでに『すいか』の前哨戦的な存在ともいえよう。タイトルは85年までの選曲にもかかわらず「’83~’86」と、またしても1年多い、第一弾と同じおおらかなミスを犯している。

Kuwata Band『Rock Concert』然り、この頃になるとこの手の作品もアナログレコードは出なくともCDが同時発売されるようになる(87年にCDがレコード・カセットの売上金額を凌駕、翌88年には生産数も凌駕することになる)。ベスト盤もカセット・オンリーというサブ的なメディアの世界から、LPの代替品としてのCD、つまりメインメディアの世界に侵食していくのだった。そういったこともあってか本作から、ベスト盤でもようやくプロデューサーほかスタッフのクレジットが登場。「Produced by Southern All Stars」「Co-produced by Takeshi Takagaki」の記載がある。

CD帯やライナーには「Digital New Mastering」のロゴと説明が入っている。エンジニアのクレジットは無いが、いよいよポップス旧譜でもCD用のリマスタリングがひとつの付加価値として提示される時代に入っていく。

ちなみに本作の「女のカッパ」、現行盤CDやそのマスターを使用している配信・ストリーミングの『人気者で行こう』収録バージョンより冒頭のSEが数秒長く収録されている。実は本作の編集がオリジナルで、『人気者で行こう』LP・カセットに収録されていたもの。2週間遅れで出た『人気者で行こう』CD用のマスタリング時、SE部分をそのまま無音の曲間扱いにしてしまった(ノイズと判断して消してしまった?)ようだ。そして現行の2008年リマスターCD『人気者で行こう』でも、過去のCDに準じた編集となっている。そのため、オリジナル・エディットはこちらでしか聴けないというねじれ現象が現在も発生したままである。



■すいか SOUTHERN ALL STARS SPECIAL 61 SONGS 
1989.7.21. TAISHITA(ビクター音楽産業) VDR-10001〜4(CD)、VCF-8001〜4(CT)


Vol.1 1978〜1980
1. 勝手にシンドバッド
2. 別れ話は最後に
3. 当って砕けろ
4. 恋はお熱く
5. 瞳の中にレインボウ
6. 女呼んでブギ
7. お願いD. J.
8. 思い過ごしも恋のうち
9. LET IT BOOGIE
10. いとしのエリー
11. タバコ・ロードにセクシーばあちゃん
12. 私はピアノ
13. 涙のアベニュー
14. TO YOU
15. 恋するマンスリーデイ

Vol.2 1980〜1982
1. C調言葉に御用心
2. I AM A PANTY(YES, I AM)
3. 青い空の心(NO ME? MORE NO!)
4. いなせなロコモーション
5. ジャズマン(JAZZ MAN)
6. ひょうたんからこま
7. わすれじのレイド・バック
8. シャ・ラ・ラ
9. ごめんねチャーリー
10. MY FOREPLAY MUSIC
11. 朝方ムーンライト
12. BIG STAR BLUES(ビッグスターの悲劇)
13. 栞(しおり)のテーマ
14. チャコの海岸物語
15. 翔(SHOW)〜鼓動のプレゼント 

Vol.3 1982〜1983
1. 夏をあきらめて
2. 流れる雲を追いかけて
3. 匂艶THE NIGHT CLUB
4. 逢いたさ見たさ病めるMY MIND
5. 女流詩人の哀歌
6. Ya Ya(あの時代を忘れない)
7. シャッポ
8. ボディスペシャルII
9. マチルダBABY
10. かしの樹の下で
11. そんなヒロシに騙されて
12. NEVER FALL IN LOVE AGAIN
13. EMANON
14. 東京シャッフル
15. STILL I LOVE YOU

Vol.4 1984〜1988
1. JAPANEGGAE(ジャパネゲエ)
2. ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
3. あっという間の夢のTONIGHT
4. シャボン
5. 海
6. 愛する女性とのすれ違い
7. 死体置場でロマンスを
8. HAPPY BIRTHDAY
9. MELODY(メロディ)
10. 吉田拓郎の唄
11. 鎌倉物語
12. BYE BYE MY LOVE(U are the one)
13. 星空のビリー・ホリディ
14. 怪物君の空
15. おいしいね〜傑作物語
16. みんなのうた

前回記事のとおり、89年の夏に新譜が出せないということで会社側からの要望を受けた桑田が、本意ではないものの「一緒に働いたものとしてはやっぱりね、ボーナスも欲しいだろう、これだけ言ってくるからにはやっぱり、よしわかった最後には信頼しなくちゃいけない(『ロッキング・オン・ジャパン 1990年3月号』ロッキング・オン、1990)ということでリリースされたベスト盤。すでにアナログレコードの売上を凌ぎメインメディアとしての堂々たる地位を確立していたCD、そしていつものカセットの2形態でリリースされている。内容はデビューから88年のシングルまで10年分61曲を年代順に収録した、良くも悪くもあまり偏りのない選曲。ディスコグラフィと最新写真を掲載したブックレット・トランクス&パンティがすいか柄の缶に収められたボックス・セット…という豪華仕様であった。

『Ballade 2』に続き「Produced by Southern All Stars」の記載、さらにこちらも帯に「Digital New Mastering」「全曲デジタルマスタリングにてクリアーなサウンドで再編集」とある。マスタリングエンジニアが4名(今井邦彦、川崎洋、平沼浩司、武田憲二)もクレジットされていることから、1枚につき1名でそれぞれマスタリングしたのだろうか。

前回のとおり、予定プレス数に対し予約が上回ってしまった(予定プレス数や実際の売上数は当時の雑誌記事・オリコン売上数、時を隔てて現在の公式サイト・公式データブックなどでかなり違っているため、あまり気にするものでもなさそうだ)ようで、その影響かUSプレスのディスクが存在する。1セットの中に日本プレス・USプレスのディスクが混在しているものや、そうでないものなど多数の組み合わせが存在するようだ。
USプレスには「Manufactured In USA And Distributed By Victor Musical Industries Inc., Tokyo, Japan」の記載がある。

リリースの半年後に「スイカじゃないけど置いときゃ腐るもんでしかないでしょ?もうあれは腐ってしまってますよ」とまで桑田は語ったが、ここでしか聴けないレア音源なども入っていないにもかかわらず、30年以上経った今でも中古市場では定価割れしていない状況だ。ただし、CDにはアルミ蒸着部分が腐食してしまう、80年代の旧スポンジ緩衝材がデフォルトで入っているため、特にDISC2・4の状態は要注意(これはCD『バラッド』『kamakura』『Ballade 2』の黒ケース=80年代プレスも同様。スポンジは直ちに破棄したほうが良い)。桑田の予言どおり、ディスクが腐ってしまっている可能性がある。

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