このレコード会社も異なる(Leonettiは当時契約していた英CBS/米Columbia、Cricketsは単発で英Philips/米MGMとの契約だったようです)2組が共通して録音したのが、Christian Goldのペンによる「Wasn't It Nice In New York City」でした。
Leonetti版はシングルのA面としてリリースされ、ビルボードのアダルトコンテンポラリーチャートで38位を記録しています。Leonettiのキャリアの中でも珍しく本人のアレンジで、Goldによるメロウな楽曲をいわゆるAC、MOR調に仕上げています。なお、なぜか英盤のタイトルは当初は「(Wasn't It Nice In) New York City」、その後すぐに「New York City」に改題され再リリースされています。
CricketsのバージョンはLP『Bubblegum, Bop, Ballad And Boogies』に収録され、シングル「Hayride」のB面としてリリースされましたが、チャート・インはしなかったようです(LP自体も英Philipsのみのリリースで、米国発売はありませんでした)。こちらのプロデュースならびにフォーク調のアレンジはBuddy HollyやCricketsと馴染みの深いBob Montgomeryによるものです。
わざわざ渡英録音する米ミュージシャンにまだ無名のChristian Goldの楽曲を取り上げさせたのは出版社の采配によるものかと思いますが、アダルトコンテンポラリーチャートにランクインしたことで、Anniversaryでコケた?Goldが作家としての道を歩むのを決意したのではないかと勝手に思っています。
さて、「Wasn't It Nice In New York City」が収録されているCricketsのLP『Bubblegum, Bop, Ballad And Boogies』では3曲についてコーラスとしてSummer Wineのクレジットがあります。このSummer Wine、Tony Riversが当時和解したばかりのJohn Perry(もともとRiversがSugarbeatsからPerry等をCastawaysに引き抜いたものの、すぐ脱走され、Perry等はGrapefruitを結成するのでした…)に誘われ、プロデューサーのMike Hurst、元Spencer Davis GroupのRay Fenwickとで結成したグループで、英Philipsから72年6月におなじみ「Why Do Fools Fall In Love」のカバーでデビューしていました。シングル・ヒットが出なかったためLPはリリースされませんでしたが、レコーディングのストックには彼等自身が73年に録った「Wasn't It Nice In New York City」も入っていました。豪快にスクラッチ・ノイズが入った音源(アセテート盤が奇跡的に残ってたんでしょうか?)が、99年にemレコードからCDで初めてリリースされました。
Summer Wine版はいかにも彼等らしいモダンな、洒落たハーモニー・ポップで攻めています。最後のサビ前に付け加えられたスキャットのヴァース、これでさらに展開に締まりを与えた感じがして素晴らしいです(後年のMinnie Riperton「Loving You」等でおなじみの、コードが下降進行していくアレです)。
Tony RiversとJohn PerryのグループがChristian Goldの曲を取り上げるというのもSugarbeatsのことを考えると因縁ですが、たぶんこれがきっかけで、73年にはTony RiversとJohn PerryのコンビであるHollywood Freewayが、RiversとGoldの共作曲を録音、(また元SugarbeatsのMartin Shaerのコネクションで移籍した)英Pyeからリリースすることになるのでした。
また、オーストラリアのシンガーLinda Georgeの75年作『Step By Step』でもこの曲が取り上げられていますが、Summer Wine版で追加されたスキャット部分には「Do you remember Mr. Jones, his wife and baby, boy? They were so tender, had no money, but gave us so much drive...」の歌詞がついています。ということはこのパートもChristian Goldがのちのち順次追加していったものなのかもしれません。
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