『Encore』以後、Delegationは90年代末にかけてイタリア録音で12インチを2作リリースしています。97年の「Bad Luck」、98年の「Searching」といずれも作家・プロデューサーとしてKen Goldが関わっています。
この2曲はいずれもGoldとMauro Farina、Fabio Serraの共作で、プロデュースはGoldとFarinaがクレジットされています。FarinaはイタリアのFactory Sound StudioとレーベルSAIFAMの創設者のひとりで、イタリアでのハイエナジーの第一人者です。ハイエナジーものでは日本をターゲットとしたAsia Recordsを88年に設立、アルファやキャニオン、そしてエイベックス配給の「ユーロビート」コンピに多くの楽曲を送り込みました。「Bad Luck」「Searching」はいずれも93年「I Wanna Be The Winner」以降の歌ものハウス路線ですので、90年代のDelegationはユーロ・ハウスとニュージャックスウィングで奮闘していたのです。
「Searching」はなぜかグループ名にBaileyの単独名がくっつき、「Delegation feat. Ricky Bailey」とクレジットされていますが、Delegationがひとりユニットになって既に10年ですので若干今更感がありますね。
2つのシングルともそれぞれ複数のバージョンを収録していますが、Delegationファンには「Searching(70's Radio Edit)」というバージョンが要注目です。楽曲自体はマイナー調のディスコですが、このバージョンはなんとGold単独プロデュース、キーボードとストリングスアレンジにLynton Naiff、ギターにRobert Ahwaiを迎えた、思わずニヤリとする布陣で録られています。
「Searching」は「Factory Team Mix」が2000年にSAIFAMから出たベスト盤『The Best Of Delegation』、「Bad Luck」は「Factory Team Dance Rmx」が同ベスト盤並びに2001年にドイツのA45 Musicから出たベスト盤『Delegation Remix-Hits』に収録されています。
さて、このシリーズでDelegationに触れるのは今回が最後なので、その後の動きも触れておきましょう。Ken Goldの楽曲提供・プロデュースは「Searching」が現時点では最後のようです。2000年代に入ると、「One More Step To Take」「You And I」などAriola時代の楽曲がリミックスされ、12インチが何枚かリリースされます。また並行して、同じくAriola時代の楽曲中心のリレコーディングのベスト盤もいくらかリリースされています(こちらはおそらく原盤が使えないのでリレコした、という雰囲気が濃厚なものばかりなのであまり面白い内容ではありません…)。
「Searching」以降、Delegation(Bailey)の新作のリリースは途絶えていましたが、ジャズドラマーの重鎮、Billy Cobhamの01年作『Drum'n'voice - All That Groove』ではDelegation「I Want You Back」のカバーに本家ヴォーカルとして参加、また11年、フランスはThe Superman Loversのアルバム『Between The Ages』収録の「Take A Chance」にヴォーカルで参加しています。こちらもギターカッティングが冴えた、往年のDelegationを思わせる楽曲です。
そして13年、現時点でのDelegationの最新曲として「I Surrender」が配信のみでリリースされます。制作の詳細は不明ですが、Drizaboneを起用しており久々にイギリスのミュージシャンとタッグを組んだことになります。こちらもアーバンでモダンな1曲に仕上がっています。
また、12年にAriola期のアルバム3作、17年にStateのファーストと、State〜Ariola期をまとめたベスト盤がそれぞれCDでリリースされました。ライナーはBailey(17年の方はKen Goldも)へのインタビューを絡めて構成されています。こちらもお好きな方は必携ですね。今後もDelegationの活動に期待しています。