2016年2月27日土曜日

西 慎嗣アンド・ ロード・ロード・ローディ・ミス・クローディ・グループ「すてきなトランスポーテイション」「シュールなる渚1963」[桑田佳祐 Songbook]

桑田佳祐さんがめでたく還暦を迎えられたそうですので、そんなタイミングで新しいシリーズを始めてみたいと思います。作曲家・桑田佳祐さんに焦点を当て、桑田さんが他者に提供しレコード化された楽曲で、サザンのメンバーのソロ作品を除くものを年代順にご紹介するという、ニッチで需要もなさそうなテーマでお送りしようかと…(なにしろあんまり数が無いので、すぐ終わってしまいそうですが…)。

第一回目は桑田さんが初めて他者へ提供した楽曲2曲となります(ちょうど、サザンで「私はピアノ」「松田の子守唄」と、ご自身以外のヴォーカル曲を作曲・リリースした直後になります)。これらは桑田さんの初プロデュース作品(“桑田佳祐の初プロデュース!”と帯に記載されています)でもある、スペクトラムのギタリスト、西慎嗣さんの1980年8月リリースのソロ・アルバム『NISHI』に収められています(ちなみに、同年3月リリースのスペクトラム『OPTICAL SUNRISE』収録の「MOTION」は、作詞家・桑田佳祐初の提供作品となります)。

おそらく桑田さんが西さんのアルバムをプロデュースすることになったのは、同じ事務所、さらには同じレコード会社所属だったからというのは言うまでもありませんが、やはり桑田さんと西さんの趣味の一致(Eric Claptonやスワンプ方面)があったのかと思います。結果、スペクトラムのサウンドから大きく離れ、当時のサザン(まさに『タイニイ・バブルス』〜『ステレオ太陽族』の間といった感じです)の雰囲気を持ったアルバムに仕上がっております。原由子さん(メインのキーボードは奥慶一さんですが)や松田ヒロシ(シングル「勝手にシンドバッド」以来のカナ表記でした)さんの参加もそういった雰囲気への影響が大きいですね。

「すてきなトランスポーテイション」は70年代後半あたりのClaptonの雰囲気が出た、いかにもこの頃の桑田さんらしい、すてきな一曲に仕上がっています。クラリオンのCMタイアップが付き、80年12月に斎藤誠さん作「Don't Worry Mama」(こちらもClapton風レゲエものでした)と両A面でシングル・カットされますが、この曲はシングル用のミックスが新たに作られました。シングル・ミックスの方はヴォーカルがよりこなれた感じで、ダブルで録り直されています。

「シュールなる渚1963」はタモリ作詞・桑田さん作曲という異色の組み合わせのサーフ系三連コーラスもので、ドゥーワップっぽくないですがコーラスはシャネルズの皆さんが担当しています。正直西さんのキーからするとかなり低めの設定ですが、これはこれで妙な魅力があります。個人的にはソリーナもポイントが高いです。

『NISHI』はこの2曲に関わらず、当時の桑田さん・サザンの影響が大きく(西さんのヴォーカルも桑田さん風ですし)、またその後の桑田さん・サザンにも影響を与えている、サザン史上も重要な位置にある作品です。是非気になる方はチェックしてみてください。